「カジノ」と「お金」と「依存症」の話

政治ニュース
IR(統合型リゾート)とは、カジノを含む複合観光施設のことです。具体的には、国際会議場や展示場、ホテル、レストラン、ショッピングモール、エンターテイメント施設などが一体となった施設を指します。

大阪にカジノ計画が進行中

最近、「カジノ」という言葉をニュースなどでよく耳にするかもしれません。日本にはもともとカジノはありませんでしたが、国は特定の場所でのみカジノをつくることを認める法律を作りました。

この施設は、カジノだけでなく、ホテルや国際会議場、テーマパークなどが一つになった「IR(統合型リゾート)」として計画されています。

IRは、多くの外国人を日本に呼び込むことで、観光客を増やし、経済を元気にすることを目的としています。2029年の開業を目指して、大阪市の人工島である「夢洲(ゆめしま)」に、日本で初めてのIRが計画されています。

カジノに反対する人たち

カジノには、大きな経済効果が期待される一方で、反対する声も少なくありません。反対派が最も理由としてあげているのは、「ギャンブル依存症」の問題です。ギャンブル依存症とは、ギャンブルをしたい気持ちが抑えられなくなり、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。

その他にも、お金をめぐる犯罪が増えたり、ヤミ金などの問題が起こったりするのではないかという治安の悪化も懸念されています。

日本のギャンブル依存症の現状

カジノができることでギャンブル依存症が発生するのではないかという議論がありますが、実は日本にはすでに多くのギャンブル依存症の人がいます。厚生労働省が行った調査によると、成人のおよそ3.6%にあたる約320万人がギャンブル依存症の疑いがあるとされています。

大谷翔平選手の元マネージャーがギャンブル依存性になって、大谷選手のお金を約25億円も盗んでギャンブルに使っていたというのは衝撃的な事件でしたが、ギャンブルがやりたいために、人からお金を盗んだり犯罪に手をそめてしまう人も出てくることから、深刻な社会問題となっています。

ただ、依存症の原因となっているギャンブルとして最も多いのは、パチンコ・パチスロです。また、現在、ギャンブル依存症の専門的な治療や相談を受けられる場所はまだ十分ではなく、多くの課題が残されています。

なぜカジノだけが、特別にギャンブル依存症の問題を引き起こすかのように語られるのか

カジノへの反対意見の多くがギャンブル依存症を理由にしている一方で、メディアなどでは、パチンコや競馬、競輪、競艇といった既存の公営ギャンブルについてはあまり言及しません。また、宝くじやロトくじなども、一種のギャンブルと考えることができます。

先に書いたように、依存症がパチンコ・パチスロによるものが最も多いのに、「なぜカジノだけが、特別にギャンブル依存症の問題を引き起こすかのように語られるのか」という疑問を持つ人もいます。

この背景には、いくつかの理由が考えられます。最も大きいと考えられるのが、政治的な背景です。

カジノは、国や維新の会が新しく進めている政策です。そのため、反対派の政党にとっては、この「新しい政策」を批判することで、政府や維新の会への対立姿勢を明確にしやすいという側面があります。

もうひとつは、カジノがこれまでの日本になかった新しい施設であるためです。パチンコや競馬は社会に長く存在しており、すでにその問題点も知られているため、新しいカジノがどんな影響をもたらすか、未知数であることへの不安が大きくなっています。また、ラスベガスやマカオのような海外の華やかなカジノのイメージが強いことも影響しているかもしれません。

マイナンバーカードで回数制限。大阪のカジノの厳しい依存症対策とは?

カジノの導入にあたっては、既存のギャンブルにはない、非常に厳しい依存症対策が法律で定められています。この背景には、カジノができることをきっかけに、日本全体のギャンブル依存症対策を見直すべきだという動きがありました。

IR実施法と同時に成立した「ギャンブル等依存症対策基本法」は、カジノだけでなく、パチンコや公営競技もふくめた、国による包括的な対策を義務づけています。

「ギャンブル等依存症対策基本法」は、一言で言うと「すべてのギャンブルの依存症を、国がしっかり治そうと決めた法律」です。

これまで、ギャンブル依存症は個人の問題とされていましたが、カジノができるのをきっかけに、国が責任を持って予防や治療の体制を整えることになりました。これは、パチンコや競馬なども含めた、日本全体のギャンブル問題への対策を本格的に進めるための法律が制定されたということです。

具体的にカジノで設けられる依存性予防や対策には、以下のようなものがあります。既存のパチンコ店や競馬場などは、いずれもこのような対策をとっていないので、どちらが依存性になりやすいかは考えるまでもないですね。

  • 入場料の徴収: 日本人や日本に住む外国人がカジノに入場する際には、1回6,000円の入場料を支払う必要があります。
  • 入場回数の制限: マイナンバーカードを使って、カジノに入れる回数を、「7日間のうち3回まで」、「28日間のうち10回まで」と厳しく制限します。マイナンバーカードのICチップをつかって回数制限をするので、持っていない人は入場もできません。
  • 家族による入場制限: ギャンブル依存症が心配な家族がいる場合、その家族の申告によって、本人の入場を制限できる仕組みも導入されます。
  • カジノ内のATM設置禁止: 施設内にATMを置くことを禁止し、お金を引き出せないようにすることで、使いすぎを防ぎます。

カジノがあれば、大阪全体が豊かになる?

カジノができることで、どれくらいの経済効果が見込めるのでしょうか。IRがもたらす経済効果は、大きく分けて二つの段階があります。

  • 建設段階(一時的な効果) IRの建設には、およそ1兆800億円という巨額の投資が行われる見込みです。このお金は、建設会社や関連企業への支払いとなり、建設期間中に大きな経済効果を生み出します。
  • 運営段階(継続的な効果) IRがオープンした後には、年間およそ1兆1,400億円もの経済効果が生まれると期待されています。(出典:大阪市IR推進局)この金額は、観光客がホテルやレストラン、ショッピングで使うお金、そこで働く人たちの給料、そして関連事業者の売り上げなどを含んだものです。

この継続的な経済効果のうち、大阪府や大阪市に直接入る収入(税収)は、年間でおよそ700億円と見込まれています。夢洲駅周辺のインフラ整備などで1,000億円規模の税金が使われますが、1年半ほどで回収できる見込みということですね。

この700億円という金額は、大阪府と大阪市の年間予算を合わせると、全体の収入の約2%程度で、この割合だけを見ると「それほど大きなインパクトはない」と感じるかもしれません。しかし、この税収が具体的な住民サービスに活用されるとすれば、その意味は変わってきます。たとえば、待機児童を減らすための保育士の増員、学校の施設の改修、高齢者福祉サービスの拡充、医療体制の強化などに充てられるかもしれません。

さらに、IRによって創出される約10万人の雇用は、大阪に住む多くの人にとって、新しい仕事を得るチャンスとなります。IRにはカジノ以外にもホテルやレストラン、イベント会場などさまざまな施設が含まれるため、多様な分野で仕事が生まれることも大きなメリットです。

カジノの経済的なメリットをどう評価するかが、IRを考える上での大切なポイントです。

各政党はカジノについてどう考えているの?

ここでは、各政党のIRやカジノに対する立場を紹介します。これらの情報は、各政党の公式ホームページの政策や公約、党首の発言などに基づいています。

自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)

IR推進法案の成立を主導した政党であり、基本的にはIRを観光振興や経済成長の起爆剤として推進する立場です。ただし、ギャンブル依存症対策については、厳格なルールを設けるべきだという考えです。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

立憲民主党は、IR誘致には一貫して反対する立場です。ギャンブル依存症の問題や治安の悪化といった社会的なコストが、IRによる経済効果を上回ると考えています。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

IR誘致の中心となってきた政党であり、IRを大阪経済の活性化に不可欠なものとして強く推進しています。IRの収益を財源に、大阪の成長を加速させることを目指しています。

公明党(中道、保守)

公明党は、IR推進法案の成立に賛成しましたが、カジノができることによるギャンブル依存症の問題を最も強く懸念しています。依存症対策は徹底して行うべきだという立場です。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

国民民主党は、IR誘致には賛成の立場です。日本の経済成長に貢献する可能性を評価し、IRをひとつの選択肢として容認しています。依存症対策と経済効果のバランスが重要だと考えています。

日本共産党(革新、左派)

共産党は、IR誘致には強く反対する立場です。カジノは「人の不幸の上に成り立つビジネス」であり、ギャンブル依存症によって家庭崩壊や多重債務などの問題が深刻化するとしています。

参政党(保守、右派)

参政党はIR誘致には反対する立場です。カジノは依存症の問題だけでなく、日本の伝統的な価値観や社会のあり方を損なう可能性があると考えています。

れいわ新選組(革新、左派)

れいわ新選組は、IR誘致には反対する立場です。IRは、ギャンブル依存症や貧困の問題をさらに拡大させることにつながると考え、弱い立場の人々の暮らしを守ることを優先すべきだと主張しています。

日本保守党(保守、右派)

日本保守党は、IR誘致に反対する立場です。カジノは、国民を不幸にする「博打」であるとして、日本の国益や健全な社会のあり方を守るべきだと主張しています。

最後に、あなたに考えてほしいこと

IR(統合型リゾート)は、カジノによって大きな経済効果が期待できる一方、ギャンブル依存症などの深刻な社会問題が改めて指摘されています。

ただ、カジノができることによって初めてあぶりだされてきた「ギャンブル依存症」という問題や、予防・治療などの対策が、日本全体のギャンブル依存性対策を前進させることになりはしないでしょうか。

パチンコや競輪競馬なども、カジノがやろうとしていることと同じように対策することができたなら、日本からギャンブル依存性はなくなっていくのではないでしょうか。

カジノは本当に悪いものなのでしょうか。それとも、パチンコや競馬なども含め、国がお金を賭けることを認めること自体が問題なのでしょうか。

大きな経済効果と、社会の安全。この二つのバランスをどう取っていくべきか、皆さんも考えてみてください。

コメント