「外国人だから」で線引きしていいの?差別と区別のむずかしい話

外国人の問題

日本で暮らす外国人の暮らしをどう支える?

日本には、仕事や留学、結婚などでたくさんの外国人が暮らしています。彼らの大半は、日本人と同じように税金や社会保険料を納め、地域の一員として長く暮らしている方々です。

しかし、外国人が病気になったり、困ったりした時に、公的な支援をどこまで認めるかという問題は、社会の中でたびたび議論になります。

この議論の中心にあるのが、「差別」と「区別」という言葉です。一体、何が「差別」で、何が「区別」なのでしょうか。そして、外国人への支援を巡る政策は、どうあるべきなのでしょうか。


差別と区別、外国人政策をめぐる考え方

「区別」だと主張する意見:

日本に長く住み、税金や保険料をきちんと納めてきた外国人が、病気になったり、怪我をして働けなくなったりした場合、国民健康保険(こくみんけんこうほけん)での治療や生活保護(せいかつほご)などの支援を受けることは、社会の一員として当然だと考える意見があります。これは、彼らが日本の社会に貢献してきたからです。

一方で、次のような外国人には、国民健康保険での治療や生活保護を認めるべきではない、という意見もあります。

  • 病気の治療だけを目的に日本に来て、すぐに保険証(ほけんしょう)を取得して高額な治療を受けようとする外国人。
  • 日本に来てから間もなく、経済的な困窮を理由に生活保護を申請(しんせい)する外国人。

このようなケースに対して支援を認めないのは、差別ではなく区別だ、と主張する人がいます。彼らの主張は、「日本の社会保障制度は、日本に永住する意思があり、社会に貢献する意思がある人々のためにあるべきだ」という考えに基づいています。短期間の滞在で制度を悪用しようとするのは、不公平であり、制度の持続可能性を脅かすという考え方です。

さらに、この考え方には「相互主義(そうごしゅぎ)」という視点が含まれることがあります。相互主義とは、「相手の国が自国民に何をしてくれるかによって、こちらも相手の国民に同じことをする」という考え方です。例えば、中国では、外国人が生活保護を申請することは基本的にできません。また、アメリカでは、外国人が公的な医療保険制度(例えばメディケアなど)を利用するには厳しい条件があり、多くの場合、民間の医療保険に加入しなければなりません。

このように、相手の国が日本人に対して特定の社会保障を提供していない場合、日本もその国の国民に対して、同じように限定的な対応をとるか別制度を作るべきだ、という意見があります。これは、公平な関係を築く上で必要だという考え方です。

「差別」につながると反対する意見

上記のような考え方に対し、それは結局「差別」につながるのではないか、と反対する意見もあります。

彼らは、「困っている人に手を差し伸べることは、国籍に関わらず、人道上(じんどうじょう)当然のことだ」と主張します。また、「来日して間もない外国人にも、何らかの支援は必要だ」と考えます。なぜなら、予期せぬ事故や病気で困ることは誰にでも起こり得るからです。

また、「長く住んでいるかどうか」や「税金を納めてきたかどうか」だけで線引きすると、線引きの基準が曖昧(あいまい)になったり、制度からこぼれ落ちてしまう人々が出てくる可能性を指摘します。場合によっては、そうした線引きが新たな差別を生み出し、外国人が日本で孤立(こりつ)する原因になるのではないか、という懸念も示します。

さらに、健康保険の不正利用については、制度の運用やチェック体制を厳しくすることで対応すべきであり、外国人全体を排除するべきではない、という意見もあります。相互主義を導入した場合、国際的な信頼関係にひびが入ったり、日本に住む多くの外国人、特に真面目に暮らす人々の不安を招いたりする可能性も指摘されます。


制度の「穴」や「抜け道」がヤバい

外国人政策、特に社会保障の利用を巡っては、実際にいくつかの問題が指摘され、議論されています。

医療ツーリズムの問題

近年、海外から日本の高い医療技術を目当てに来日し、短期滞在中に国民健康保険に加入して、本来の保険制度の趣旨(しゅし)とは異なる形で高額な医療を受けるケースが問題視されることがあります。

これは、日本の国民健康保険制度が、居住者(きょじゅうしゃ)であれば国籍を問わず加入できるという特性を持っているためです。さらに保険料や医療費を支払わずに帰国してしまうケースまであると報じられています。この状況に対し、制度の見直しや、短期滞在者への制限を求める声があります。

生活保護申請の増加と背景

日本に暮らす外国人の数が増える中で、生活保護を申請する外国人の数も増える傾向にあります。これには、経済不況や、技能実習生制度における問題など、様々な背景があると指摘されています。

生活保護の利用は、個人の生活を支える最後の砦(とりで)ですが、その費用は税金で賄われています。このため、制度の公平性や持続可能性を巡る議論が生まれています。

特定技能制度などによる外国人労働者の増加

現在の日本は、少子高齢化(しょうしこうれいか)で人手不足が進み、外国人労働者なしには経済が回らない分野が増えています。「特定技能(とくていぎのう)」などの在留資格を設け、外国からの労働者を受け入れています。彼らが安心して日本で働き、生活できるための社会保障制度をどうしていくべきか、より深い議論が求められています。


各政党の外国人政策に対する考え方

外国人政策、特に差別と区別、社会保障の利用を巡る問題は、各政党でさまざまな考え方があります。

自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)

自民党は、公式には「移民政策はとらない」という立場を明確にしていますが、実質的には外国人の長期滞在や労働者の受け入れを拡大する政策を進めています。

少子高齢化による人手不足を補うため、特定技能制度の拡充(かくじゅう)や技能実習制度の見直し(育成就労制度への移行)を推進しています。これにより、永住に近い形での外国人の定着も可能となるため、社会保障制度の持続可能性を保ちながら、外国人材をどう受け入れていくかが課題となります。制度の悪用を防ぐための厳格な運用や見直しも議論されており、相互主義の導入も選択肢の一つと考える場合があります。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

賛成・推進の立場です。立憲民主党は、国籍に関わらず基本的人権を尊重し、困窮者には必要な支援を行うべきというリベラルな立場です。外国人差別には明確に反対しており、外国人に対する人道的な支援の必要性を訴えます。医療や生活保護の不正利用に対しては、制度の運用改善や取り締まりの強化で対応し、一律に制限することには慎重な姿勢です。相互主義の導入には、人道的な観点から慎重な見方をするでしょう。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

慎重な立場です。日本維新の会は、国家の利益や制度の持続可能性を重視する傾向があります。外国人への社会保障適用については、制度の公平性や悪用防止の観点から、厳格な条件設定や運用を求める立場です。

相互主義的な視点を取り入れ、日本の国民が他国で受ける待遇とのバランスを考慮すべきと主張しています。ただし、日本の労働力不足解消のための外国人材受け入れには積極的な側面も持ち合わせています。

公明党(中道、保守)

中道的な立場です。公明党は、人権の尊重と多様性の共生を重視し、外国人住民の生活支援にも理解を示します。しかし、社会保障制度の持続可能性も考慮に入れるため、制度の悪用防止や、公平な運用についても言及します。相互主義的な考え方については、国際関係や人道的な側面とのバランスを見て判断するでしょう。長期的な視点での共生社会の実現を目指します。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

中道的な立場です。国民民主党は、社会保障制度の持続可能性と、国民の負担という視点を重視します。外国人への社会保障適用については、一定の条件や線引きの必要性を認める傾向にあります。

相互主義的な考え方や、国際的な公平性を求める傾向で、特に、外国人による土地や建物の取得を規制すべきだ、と強く主張しています。これは、日本の安全保障を守るための重要な政策と位置づけています。

日本共産党(革新、左派)

賛成・推進の立場です。日本共産党は、国籍に関わらず、すべての人々の生存権や人権を保障すべきという立場です。外国人への社会保障適用についても、差別なく必要な支援を行うべきだと強く主張します。不正利用の問題は制度の運用で解決すべきであり、外国人全体への制限には断固として反対します。相互主義の導入は、国際的な差別を助長するとして反対するでしょう。

参政党(保守、右派)

慎重な立場です。参政党は、日本の国益や国民の負担を最優先に考える保守・右派の立場です。外国人への社会保障適用には、日本の財政や社会保障制度の持続可能性への影響を懸念し、非常に慎重な姿勢を示しています。

相互主義の考え方を重視し、日本の国民が他国で受けられないサービスを、外国人に無制限に提供すべきではないと主張しています。特に、短期滞在者や、貢献度が低い外国人、日本がきらいなのに日本の社会保障をうけるために長期滞在や帰化を目論む外国人への社会保障の適用には否定的な見方を示しています。

れいわ新選組(革新、左派)

賛成・推進の立場です。れいわ新選組は、すべての人々の命と暮らしを守ることを最優先に掲げる革新・左派の立場です。国籍に関わらず、困窮している人々には社会保障制度による支援を積極的に行うべきだと主張します。外国人に対する差別や排除には断固として反対し、人道的な支援の強化を求めます。相互主義的な考え方は、人道的な支援の妨げになるとして否定的な見方をしています。

日本保守党(保守、右派)

慎重な立場です。日本保守党は、日本の文化や国民の利益を最優先する保守・右派の立場です。外国人への社会保障適用に関しては、日本の国民が納めた税金や保険料が使われることに対し、厳格な条件や制限を求める立場です。

相互主義的な考え方を強く支持し、日本の国民が他国で受けられないサービスを、日本で外国人に安易に提供すべきではないと主張しています。特に、日本の社会に貢献していない外国人への安易な社会保障の適用には否定的な見方を示します。


まとめ:みんなが安心して暮らせる社会のために

外国人への社会保障を巡る議論は、「差別」と「区別」、そして「相互主義」という、とてもデリケートな問題を含んでいます。長く日本に住み、社会に貢献している外国人をどう支えるか、そして、社会保障制度の公平性や持続可能性をどう保つか、という二つの大切な視点があります。

病気を治すために来日してすぐに保険を使う人や、日本に来てすぐ生活保護を申請する人をどう考えるか。これらを「区別」と捉え、制限すべきだという意見もあれば、それは「差別」につながりかねない、と警鐘を鳴らす意見もあります。さらに、外国の制度と日本の制度の公平性を求める「相互主義」という考え方もあります。

一番大きな問題は、こういう日本の社会保障を受ける目的で来日して長期滞在や永住をしようとする人がほんの一部でも現実に存在していて問題として取り上げられることが、日本人の不満を生んでいます。日本が好きで日本に住んで日本に貢献してくれている大半の外国人の方々にもそういう不満の目が向けられるということが、正直悲しく、ならば制度やルールをきっちりと整備したほうがよいと思うのですが、どうでしょうか。

この問題に、簡単な答えはありません。私たち一人ひとりが、日本の社会で外国人がどのように暮らし、どのような支援が必要なのかを考え、制度がどうあるべきか、議論を深めていく必要があります。

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