「授業料タダ」教育無償化はいいことだらけ?

こどもと教育

学費がゼロになるって本当?私たちの教育はどう変わるの?

近年、「教育無償化(むしょうか)」という言葉をニュースなどでよく耳にしますね。これは、子どもたちが学校で学ぶためのお金を国が支援する、という政策のことです。2025年4月からは全国の公立高校、2026年には私立高校の授業料も無償化される法案が通り、私たちの教育環境は大きく変わろうとしています。

「教育無償化」と聞くと、誰もが「やった!お金の心配なく学べる!」と嬉しく思うかもしれません。しかし、実はこの「無償化」には、いくつかのギモンや、政治の中で活発に議論されている点があるのです。今回は、この教育無償化について、その中身や、私たちが考えるべき大切なポイントを一緒に見ていきましょう。


教育無償化って、そもそもどんな話?

教育無償化は、すべての子どもたちが、家庭の経済状況に関わらず、平等に学ぶ機会を得られるようにすることを目指しています。日本では、憲法で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と定められています。この権利を保障するために、特に義務教育(小学校・中学校)は、元々授業料が無償です。

近年では、少子化が進む中で、子育て世代の負担を減らし、安心して子どもを産み育てられる社会にするため、さらに無償化の対象が広がってきました。例えば、幼児教育・保育の無償化や、高校授業料の実質無償化、大学などの高等教育の修学支援制度(しゅうがくしえんせいど)などがそれにあたります。

「無償化」と言っても、実際にお金はかかるの?

「無償化」という言葉から、すべてのお金がかからなくなるように聞こえますが、実際にはそうではない部分もあります。特に私立の学校では、授業料が免除されても、それ以外の費用がかかることが多いのです。

例えば、

  • 施設設備費: 学校の建物や設備の維持管理にかかるお金です。
  • 修学旅行費: 修学旅行に行くためのお金です。
  • 教材費: 教科書以外の参考書や問題集、実験道具などのお金です。
  • PTA会費や部活動費: 保護者会や部活動にかかるお金です。
  • 制服代や通学費: 制服や交通費など、学校に通うために必要なお金です。

これらのお金は、学校によって大きく異なりますが、特に私立学校ではかなり高額になることも珍しくありません。そのため、「授業料は無償になったけれど、結局その他の費用で家計の負担が大きい」と感じる家庭も少なくないのです。


最近議論されている論点:本当にこれでいいの?

教育無償化は、子育て世代を支援する大切な政策ですが、その進め方や効果については、様々な意見や議論が交わされています。

公立高校が定員割れ?無償化のせい?

全国に先駆けて私立高校を含めて無償化を実施している大阪や東京では、公立高校で定員(ていいん)割れ、つまり、募集した人数に対して入学希望者が少ない学校が増えています。これは、少子化が進んでいる影響が一番大きいと考えられいてますが、「教育無償化」によって私立高校の授業料負担が減ったことで、これまで経済的な理由で私立高校を諦めていた生徒が、私立を選択しやすくなった、という見方もあります。

これにより、公立高校の魅力が相対的に低下し、生徒数が減少しているのではないか、という議論も生まれています。もしそうだとしたら、公立高校の存続(そんぞく)や地域教育のあり方にも影響が出てくるかもしれません。

無償化は少子化対策にはならない?

教育無償化は、子育ての経済的負担を減らすことで、少子化(しょうしか)を食い止める効果も期待されています。しかし、「無償化だけでは、少子化対策にはつながらない」という意見もあります。子どもを産み育てるかどうかは、経済的な理由だけでなく、働き方、保育園の入りやすさ、地域の子育て環境、将来への不安など、様々な要素が複雑に絡み合っているからです。

そのため、「無償化だけにお金をかけるのではなく、もっと多角的な少子化対策が必要だ」と指摘する声も多く聞かれます。

教育の環境に投資すべきでは?

教育の質(しつ)を高めるために、お金をもっと別のことに使うべきだ、という意見も強くあります。例えば、教師の負担を減らして、子どもたちと向き合う時間を増やしたり、より質の高い授業を提供できるようにしたりする、といった考え方です。

具体的には、次のような提案があります。

  • 用務員(ようむいん)の配置:
    • 学校の清掃や設備の管理などを専門に行う人を増やし、先生たちが本来の授業や生徒指導に集中できる環境を整える。
  • クラブ活動の顧問(こもん)を外部に委託(いたく):
    • 部活動の指導を外部の専門家に任せることで、先生の負担を減らし、生徒はより専門的な指導を受けられるようにする。
  • 水泳の授業を外部に委託:
    • 学校にプールを持たず、地域の水泳教室や公共施設(こうきょうしせつ)のプールを利用して、水泳を教えること自体を外部の専門スタッフに任せることで、学校の維持費を減らし、先生の管理負担も軽減する。

このような「教育の環境」への投資は、単に学費を無償にするだけでなく、子どもたちがより良い教育を受けられるようになるために重要だ、という議論が行われています。


各政党の教育無償化に対する考え方

教育無償化や教育への投資については、各政党でさまざまな考え方があります。

自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)

自民党は、教育の機会均等と子育て支援の観点から、幼児教育から高等教育までの無償化を段階的に進めてきました。特に、幼児教育・保育の無償化や、私立高校授業料の実質無償化などは、自民党政権下で実現しました。少子化対策としても教育負担の軽減を重視していますが、同時に財源(ざいげん)の確保や、私立学校への支援のあり方についても議論を進めています。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

立憲民主党は、すべての子どもたちが家庭の経済状況に左右されず、質の高い教育を受けられるよう、教育の無償化を強く推進しています。特に、高等教育(大学など)の無償化の拡充(かくじゅう)や、給付型奨学金(きゅうふがたしょうがくきん)の充実を訴え、返済不要な支援を重視しています。また、教育費の使途(しと)を授業料だけでなく、学用品費などにも広げるべきだと主張しています。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

日本維新の会は、「教育の無償化」を重点政策の一つとして掲げています。特に、大阪府などで、高校授業料の完全無償化を先行して実施してきました。これは、私立・公立問わず、所得制限(しょとくせいげん)をなくすことを目指しています。教育への投資は、将来の成長への投資と捉え、徹底した行財政改革(ぎょうざいせいかく)によって財源を確保すべきだと主張しています。

公明党(中道、保守)

公明党は、教育の無償化を強く推進してきた政党の一つで、幼児教育・保育の無償化や、私立高校授業料の実質無償化の実現に大きく貢献しました。子育て世代の経済的負担軽減と、子どもの貧困対策(ひんこんたいさく)を重視しており、切れ目のない教育支援を目指しています。高等教育の無償化についても、対象拡大や支援拡充を求めています。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

国民民主党は、人への投資を重視し、教育費の負担軽減を政策の柱の一つとしています。教育無償化は、少子化対策としても重要だと考えています。奨学金制度の改善や、子どもを産み育てやすい環境づくりにも力を入れるべきだと主張しています。

日本共産党(革新、左派)

日本共産党は、憲法で定められた教育の権利を保障するため、真の無償教育の実現を強く主張しています。学費だけでなく、給食費や教材費なども含めた教育費の完全無償化を目指しています。高等教育についても、返済不要の給付型奨学金を拡充し、誰もが大学まで進める社会を目指すべきだと訴えています。

参政党(保守、右派)

参政党は、教育無償化には、財源の確保や教育の質への影響など、様々な課題があると考えています。教育への投資は重要であるものの、単なる「無償化」だけでなく、例えば、質の高い教育を提供する教員の育成や、日本の伝統・文化を重視した教育内容への投資を優先すべきだと主張する傾向があります。

れいわ新選組(革新、左派)

れいわ新選組は、教育費の全額無償化を強く訴えています。奨学金制度の廃止(はいし)と、返済不要の給付型奨学金への一本化などを掲げ、誰もが学べる社会を目指しています。学費や給食費だけでなく、部活動費など、教育にかかるあらゆる費用を無償化することで、子育て世代の負担をゼロにし、少子化対策にもつなげたいと考えています。

日本保守党(保守、右派)

日本保守党は、教育無償化の財源や、国民負担への影響を重視する傾向があります。教育への投資は必要と認識しつつも、単に費用を無償にするだけでなく、日本の教育の質や道徳教育(どうとくきょういく)の充実、次世代を担う人材育成に資する形で、効率的かつ効果的な予算配分(はいぶん)を行うべきだと主張するでしょう。

再生の道

再生の道は、2025年の参議院選挙で、教育への投資を最優先する「ワンイシュー」(たった一つの特定の政策テーマだけを掲げて活動すること)を掲げました。

1.教育人材の強化 教職員の待遇改善、専門員の導入など
2.教育内容の充実 オンライン授業、リテラシー教育(様々な情報を正しく理解し、それを使って考えたり、表現したりする力を育てる教育)の推進など
3.教育環境の整備 施設設備の改善、特別な支援の強化など

の3点に注力し、教育の質を高めることで、人口減少社会における国力の維持・向上を目指しています。教職員の負担軽減のため、学校事務員の増員や、部活動・用務の外部委託も提唱しています。


まとめ:教育の未来をどう創る?

教育無償化は、すべての子どもたちが平等に学べる社会を目指す、大切な政策です。しかし、「授業料が無償になっても、他の費用がかかる」という現実や、少子化対策としての効果、そして「教育の質」を高めるための投資のあり方など、様々な議論が続いています。

公立高校の定員割れや、先生たちの負担の問題など、私たちの身近なところにも教育無償化の影響や、教育全体への課題はたくさんあります。

この教育無償化をどう進めていくべきか、教育の未来をどう創っていくべきか、あなたも一緒に考えてみませんか?

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