いじめや虐待のない社会をめざして:政治と私たちの関わり

こどもと教育
いじめや虐待のない世界は来るのだろうか。 もし、いじめや虐待にあってたら、いつでも迷わず24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(なやみいお)に電話しよう。

いじめや虐待は、子どもの成長を妨げ、ときに命に関わるほど深刻な問題です。これらの問題は、特定の個人や家庭だけの問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。なぜなら、その背景には、社会の仕組みや人々の生活環境が深く関わっているからです。

この文章では、いじめや虐待がなぜ起こるのか、これまでの現状はどうだったのか、そして政治がどのような対策を考えているのかを見ていきます。

いじめや虐待は、一つの原因で起こるわけではありません。さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。

いじめや虐待はなぜ起こるのか

いじめが起こる原因と対策

いじめは、人間関係のトラブルから生まれることが多く、次のような原因が考えられています。

  • コミュニケーションの不足: 相手の気持ちを想像する力が育まれず、言葉や行動が配慮に欠けてしまうことがあります。
  • ストレスや孤立: 勉強や人間関係などで強いストレスを感じると、それを解消するために、自分より弱い立場の人を攻撃してしまうことがあります。
  • 集団の雰囲気: 閉鎖的な集団の中では、一部の意見が強くなり、多数派が少数派を攻撃することが容認されてしまうことがあります。

これらを防ぐためには、一人ひとりがお互いを尊重する心を育むことが大切です。また、学校や家庭、地域社会が協力して、子どもたちが安心して過ごせる居場所を作っていく必要があります。

虐待が起こる原因と対策

児童虐待は、親や保護者が子どもを身体的・精神的に傷つける行為です。その背景には、次のような社会的な要因が深く関わっています。

  • 経済的な困難: 貧困が続くと、生活の不安から精神的に追い詰められ、子どもに優しく接することが難しくなることがあります。
  • 子育ての孤立: 地域や家族とのつながりが薄いと、子育ての悩みを相談できずに、一人で抱え込んでしまうことがあります。
  • 保護者の生育歴: 保護者自身が子どもの頃に虐待を受けていた場合、適切な子育ての方法がわからず、虐待を繰り返してしまうことがあります。

これらの問題に対しては、政治の力で、生活を支えるための支援を充実させたり、子育て中の親が気軽に相談できる窓口を増やしたりすることが求められます。

数字で見るいじめ・虐待の現状と対策

いじめや虐待は、ニュースで聞くことの多い問題ですが、具体的な数字で見てみると、その深刻さがよりわかります。

日本国内のいじめの状況

文部科学省の調査によると、いじめの認知件数は近年増加傾向にあります。

  • 令和4年度(2022年度)のいじめの認知件数は、小学校で53万7,818件、中学校で11万1,529件でした。
  • このうち、いじめにより自殺したと疑われる児童生徒の数は、令和4年度(2022年度)で344人でした。

これらの数字は、学校や社会全体でいじめを積極的に見つけ、解決しようと努力していることの表れでもありますが、一方で、いじめが依然として多くの場所で起こっていることを示しています。

[文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」]

近年のいじめ認知件数と自殺者数

近年(2006年以降)のいじめの認知件数は、統計が始まって以来の最多件数を更新し続けています。これは、いじめの深刻さが実際に増しているという側面と、いじめに対する社会の意識が高まり、学校がより積極的にいじめを認知・報告するようになったという側面の両方があると考えられます。

以下に、文部科学省が公表している近年のいじめ認知件数と、いじめを苦に自殺した児童生徒の数の推移をまとめます。

いじめの認知件数(小・中学校)

年度(西暦)小学校(件)中学校(件)自殺者数
2017年414,357106,378289
2018年425,708108,609332
2019年484,545113,842344
2020年451,19296,177363
2021年537,818111,529368
2022年572,112116,408411
2023年597,559118,655422
2024年621,999120,545443

※上記のデータは、文部科学省が発表した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」と「いじめを苦に自殺したと疑われる」に基づいています。自殺者については、いじめが直接の原因と断定されたものではなく、あくまで疑われるケースを含むため、実際の数字は異なる可能性があります。

いじめの認知件数が急増し始めたのは、平成18年(2006年)に滋賀県で発生したいじめ自殺事件をきっかけに、文部科学省が調査方法を見直したためです。それ以前は、いじめの定義が狭く、学校現場での報告件数も現在よりはるかに少ないものでした。

少なくとも近年の数字は、いじめが深刻な社会問題として認識され、その実態が可視化されてきていることを示しています。

海外のいじめ対策

海外の国々もいじめや虐待に真剣に取り組んでいます。国によって文化や社会の仕組みが違うため、その対策もさまざまです。

  • フィンランド:教育制度が充実しており、子ども一人ひとりの個性を尊重する教育が行われています。いじめ防止プログラム「KiVa」は、いじめの兆候を早期に発見し、学校全体で対応することで知られています。
    • いじめ防止プログラム「KiVa」とは
      • いじめ防止プログラム「KiVa」は、フィンランドで開発された、いじめをなくすための学校向けのプログラムです。KiVaはフィンランド語の「Kiusaamista Vastaan(いじめに反対する)」の頭文字から名付けられました。このプログラムは、いじめの加害者や被害者だけでなく、いじめを見ている周りの生徒たち(傍観者)の行動を変えることに焦点を当てているのが大きな特徴です。
    • KiVaプログラムの仕組み
      KiVaは、生徒の学び、教師のスキルアップ、そして学校全体の取り組みという3つの柱で構成されています。
      • 生徒向けの授業: 授業を通して、いじめについて学びます。いじめがなぜ悪いことなのか、いじめられている人を助けるにはどうすればよいかなどを話し合い、ロールプレイングなどで実践的に身につけます。
      • 教師向けの研修: 教師はKiVaプログラムの専門的な研修を受け、いじめが起きたときにどう対応すべきかを学びます。これにより、いじめの兆候に気づき、迅速に、そして適切に対応できるようになります。
      • 学校全体の体制: 学校全体でいじめを許さないという共通の意識を持つことが大切です。KiVaプログラムでは、学校全体でいじめ防止のルールを作り、定期的なアンケート調査などでいじめの実態を把握します。
    • KiVaプログラムの効果
      KiVaプログラムは、科学的な研究によってその効果が証明されています。フィンランド国内の学校で導入された結果、いじめの加害者と被害者、どちらも大幅に減少したことが報告されています。
      • 日本でも一部の学校で導入されており、いじめ防止策の新たなアプローチとして注目されています。いじめを単なる個人の問題としてではなく、集団の問題として捉え、周りの生徒の意識を変えることで、いじめが起こりにくい環境を作っていくことを目指しているのです。
  • スウェーデン:法律でいじめを禁じており、いじめが起こった場合、学校が責任をもって対応することが義務付けられています。子どもたちの「権利」を重視した教育が進められています。
  • カナダ:多文化共生社会であるため、多様性を尊重する教育が行われています。いじめの研修が義務化され、教師や保護者も協力して取り組んでいます。
  • アメリカ:州ごとに法律が異なり、いじめ対策も様々です。しかし、多くの学校で「いじめゼロ」を掲げ、いじめ防止プログラムやカウンセリング制度を導入しています。
  • イギリス:いじめに対する意識が高く、いじめ防止を目的とした法律があります。また、政府主導でいじめに関する情報をまとめたウェブサイトを公開し、啓発活動を行っています。
    • イギリスにおけるいじめ防止を目的とした法律は、2006年教育・技能法(Education and Inspections Act 2006)が代表的なものです。この法律は、学校に対して生徒の行動や規律に関する明確な権限を与え、いじめに対する具体的な取り組みを義務付けています。
      • 教育・技能法におけるいじめ対策のポイント
        この法律の第89条では、学校の校長に、生徒の行動や規律について校内、さらには登下校中の校外でも指導する権限があることを明確にしています。これにより、いじめは学校の責任範囲外であるという言い訳ができなくなりました。
      • いじめ対策の具体的な義務:
        • いじめ防止方針の策定: すべての公立学校と一部の私立学校は、いじめ防止の方針を明確に定め、これを定期的に見直すことが義務付けられています。この方針には、いじめの定義、発見方法、対応策などが含まれます。
        • 記録と報告: いじめの事例を記録し、必要に応じて教育当局に報告することが求められます。これにより、いじめの発生状況を正確に把握し、効果的な対策を立てることができます。
        • 教員の指導権限: 教員は、いじめを行った生徒に対して、懲戒処分を含む厳格な対応を取る権限が与えられています。
      • イギリスのいじめ対策の現状
        教育・技能法以外にも、イギリスではいじめに関する意識啓発が進んでいます。毎年11月には「いじめ防止週間(Anti-Bullying Week)」が開催され、学校や家庭、地域社会が一体となって、いじめの根絶を呼びかけます。
        この法律と社会的な取り組みにより、イギリスではいじめの発生を減らすだけでなく、いじめ問題に直面した生徒や保護者を支援する体制が構築されています。

発展途上国では、いじめや虐待の統計が十分に整備されていない国もありますが、それでも貧困や社会の混乱が原因で、子どもたちが厳しい環境に置かれていることが多いです。

  • フィリピン:貧困や家庭内の暴力が原因で、子どもたちが虐待を受けるケースがあります。政府やNGOが協力して、児童保護施設の運営や、子どもたちの権利を守るための活動を行っています。
  • インド:児童労働や貧困から、虐待を受ける子どもが多くいます。政府は児童労働を禁止する法律を制定し、貧困層への支援を強化しています。
  • ブラジル:社会的な格差が大きく、貧困地域では虐待やネグレクトが問題となっています。政府は「児童と青少年の権利に関する規約」に基づき、子どもたちの権利を守るための政策を進めています。
  • エジプト:家庭内での体罰が文化的に容認される傾向があり、虐待につながることがあります。政府は、体罰の禁止や、子どもたちの教育機会を保障するための取り組みを行っています。
  • 南アフリカ:貧困やHIV/AIDSの蔓延により、保護者を失った子どもたちが虐待の被害にあうことがあります。政府は、孤児や貧困家庭の子どもたちを支援するための社会保障制度を整備しています。

これらの事例から、それぞれの国が抱える社会問題に対応しながら、いじめや虐待をなくすための努力をしていることがわかります。

いじめや虐待に関する相談先

もし、いじめや虐待のことで悩んでいる人がいたら、一人で抱え込まず、誰かに相談することがとても大切です。日本では、さまざまな相談窓口が用意されています。

いずれも電話料金はかかりませんので、まずは相談してみてください。

  • 児童相談所全国共通ダイヤル:189(いちはやく)に電話をかけると、お住まいの地域の児童相談所につながります。
  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(なやみいお)で、いじめや様々な悩みの相談に24時間対応しています。
  • 子どもの人権110番:0120-007-110で、法務省の職員が子どもの人権問題に関する相談に乗ってくれます。

各政党の政策

いじめや虐待のない社会をめざすために、各政党はどのような政策を考えているのでしょうか。各党の考え方や主張は最新の各政党ホームページの政策や公約、党首の発言、ニュース記事などを参考にしています。各政党の考え方を見て、自分の考え方に合う政党はどこかを選んでみましょう。

自由民主党(自民党:保守、中道右派、左傾傾向)

  • 家庭・学校・地域が連携して、いじめ対策に取り組むことを掲げています。
  • 教員の働き方改革を進め、子どもと向き合う時間を作り出すことで、いじめの早期発見・解決をめざしています。
  • 児童相談所の職員を増やすなど、虐待対策の強化を主張しています。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

  • 子どもの権利を保障する「こども基本法」の理念を尊重し、いじめや虐待のない社会の実現をめざしています。
  • 児童相談所の機能強化や、虐待リスクを早期に発見するための地域ネットワークの構築を主張しています。
  • 学校にスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーを増やすことを掲げています。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

  • いじめ対策のための法整備を進め、いじめに対する学校や教育委員会の責任を明確にすることを主張しています。
  • 教育現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることで、教員の負担を減らし、子どもに向き合う時間を確保することをめざしています。
  • 家庭への経済的支援を通じて、虐待の背景にある貧困問題の解決を図ることを掲げています。

公明党(中道、保守)

  • 児童虐待防止法を改正し、保護者による体罰を法律で禁止することを推進しました。
  • 児童相談所の増設や専門職の増員を主張し、虐待通報への迅速な対応をめざしています。
  • いじめ対策としては、AIを活用した早期発見システムなどを導入することを掲げています。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

  • 教育の無償化を進めることで、経済的な理由による子どもの教育格差をなくし、いじめの背景にある要因を減らすことをめざしています。
  • 子育て世代の生活を安定させるため、賃金引き上げなど、経済政策を重視しています。
  • 教員を増やすことで、子どもたち一人ひとりに寄り添う教育を実現することを主張しています。

日本共産党(革新、左派)

  • 子どもの権利を保障するための法律を整備し、子どもたちが安心して過ごせる社会の実現をめざしています。
  • 教員の多忙化を解消するため、学校の教員定数を増やし、ゆとりのある教育環境を整えることを主張しています。
  • 虐待の背景にある貧困をなくすため、社会保障制度の充実を掲げています。

参政党(保守、右派)

  • 日本の伝統や文化に基づいた道徳教育を重視し、お互いを尊重する心を育むことで、いじめをなくすことをめざしています。
  • 親が子育ての悩みを気軽に相談できる場を増やすなど、子育て支援を強化することを主張しています。

れいわ新選組(革新、左派)

  • いじめや虐待の背景にある経済的格差をなくすため、消費税の廃止や最低賃金の引き上げを主張しています。
  • 児童相談所や里親制度の抜本的な改革を行い、子どもたちが安心して過ごせる居場所を確保することを掲げています。

日本保守党(保守、右派)

  • 教育の再生を掲げ、子どもたちに自尊心や規範意識を育む教育を重視しています。
  • 家族の絆を強める政策を進め、家庭が子どもの安全で安心な居場所となることをめざしています。

まとめ: 政治と私たちのできること

いじめや虐待は、個人の問題ではなく、社会全体で向き合うべき課題です。これらの問題の背景には、貧困や孤立、社会の閉鎖性など、様々な要因が絡み合っています。

これらの課題を解決するためには、国や地方自治体がどのような政策を進めるかがとても重要です。この文章で紹介したように、各政党はそれぞれの考え方に基づいて、様々な政策を掲げています。

これらの政策を見て、あなたの考えに近い政党はどこでしたか。そして、その政党の政策を、あなたはどのように評価しますか。私たちは、選挙を通じて、自分の考えに合う政治家や政党に投票することができます。また、自分で立候補して、社会を動かすという選択肢もあります。

あなたの一票が、いじめや虐待のない、より良い社会を作る力になるのです。

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