みんなで考えよう!「オーバーツーリズム」対策

外国人の問題
外国人観光客ですし詰め状態の京都清水坂

観光客の増加がもたらす光と影

観光客がたくさん来てくれるのは嬉しいことですが、「人が多すぎて困る」という声を聞くことがあります。これは「オーバーツーリズム」と呼ばれ、観光客の増加によって、住民の生活や自然環境、文化が守れなくなってしまうことです。

この問題は世界中で起きていて、例えばイタリアのベネチアでは観光客が多すぎて街の生活が成り立たなくなったり、日本でも富士山では登山道にゴミが増えたり、京都や鎌倉、沖縄など、観光客が押し寄せる地域で深刻な課題になっています。

オーバーツーリズムでどんなことが起こるの?

観光客が増えることで、街は様々な問題に直面します。

  • 交通機関がパンクする
    • バスや電車が観光客でいっぱいになり、通勤や通学で利用する住民が乗れなくなってしまうことがあります。特に通勤・通学ラッシュの時間帯と観光客の移動時間帯が重なると、大きなストレスになります。
  • ごみが増える
    • 観光地のごみ箱がすぐにいっぱいになったり、路上にごみが捨てられたりすることで、街の美観が損なわれるだけでなく、清掃する人たちの負担が増えます。特に分別されずに捨てられたごみは、環境への悪影響も心配されます。
  • 騒音トラブル
    • 夜遅くまで騒いだり、早朝から大声で話したりする観光客によって、静かに暮らしたい住民の生活が妨げられることがあります。
  • 宿泊施設の不足や高騰
    • 民泊が増えすぎたり、ホテルや旅館の料金が高くなりすぎたりすることで、地元の人々が住居を見つけにくくなったり、家賃が上がったりする問題も起きています。
  • 文化や自然への影響
    • 観光客が無許可で私有地に入ったり、写真撮影のために立ち入り禁止区域に入ったりすることで、地域の歴史的な建物や文化財、貴重な自然が傷つけられることもあります。

これらの問題は、観光客にとっては楽しい思い出作りでも、そこで暮らす人々にとってはストレスや不満の種になってしまうのです。


日本と海外のオーバーツーリズム対策

各地の自治体や国も、オーバーツーリズムの問題を解決するために様々な工夫を始めています。

日本の自治体の対策事例

  • 富士山: 山梨県側の吉田ルートでは、開山期間中に登山者数を1日4,000人に制限し、登山道を通行する際に1人4,000円の通行料を徴収しています。また、「弾丸登山」を防ぐため、午後2時から翌日午前3時までは登山道を閉鎖する対策をとっています。
  • 鎌倉市: 混雑する江ノ電での公共交通機関の利用マナー啓発を行っています。また、観光客を市内各地に分散させるための穴場スポットを紹介するキャンペーンも行っています。
  • 京都市: 人気観光地での混雑を緩和するため、特定の時間帯に運行する「観光客向け臨時バス」を導入しています。これにより、住民が利用するバスと観光客のバスを分けることで、両者の利便性を高めようとしています。

海外の対策事例

  • ベネチア(イタリア): 日帰り観光客から1人5ユーロ(約850円)の「入域料」を徴収するようになりました。これは観光客の数を制限し、街の維持管理に充てるためです。また、巨大なクルーズ船の運河への乗り入れを禁止する規制も導入されました。
  • アムステルダム(オランダ): 市は観光客の「量」を減らし、「質」を高めるために、新規のホテルの建設を制限したり、クルーズ船の乗り入れを禁止したりするなど、強力な規制を導入しています。
  • バルセロナ(スペイン): 民泊の増加による家賃高騰が深刻な問題となっています。市は対策として、2028年までに短期賃貸を全面禁止する方針を打ち出しています。
  • ドゥブロヴニク(クロアチア): クルーズ船で一度に大量の観光客が押し寄せるのを防ぐため、旧市街に入る観光客の数を一度に6,000人までに制限するなどの対策をとっています。
  • マチュピチュ(ペルー): 遺跡の保護と観光客の分散化を図るため、入場者数に上限を設定し、事前予約を義務付けるなど、厳しい入場制限を設けています。
  • ハワイ(アメリカ):ハワイでは、人気観光地の自然保護と混雑緩和を目的とした事前予約制を導入しています。オアフ島のダイヤモンドヘッドでは、2022年から非居住者に対して事前予約を義務付け、入場者数を制限しました。これにより、登山客の分散に成功し、登山中のケガや熱中症といった救急要請件数が減少する傾向が見られています。
  • ポルトフィーノ(イタリア):イタリア北部の美しい漁村、ポルトフィーノでは、観光客が絶景ポイントで長時間立ち止まり、写真を撮ることで通路が塞がれる問題が発生しました。このため、市は特定のエリアでの写真撮影のための立ち止まりを禁止し、違反者には最大275ユーロ(約4万5千円)の罰金を科すというユニークな対策を導入しました。
  • ケアンズ(オーストラリア):グレートバリアリーフの玄関口であるケアンズでは、国立公園や自然保護区での入場制限と環境保護プログラムを組み合わせています。観光客がサンゴ礁を保護するためのプログラムに参加したり、CO2排出量削減に貢献したりする取り組みを進めることで、観光の持続可能性を高めようとしています。
  • アクロポリス(ギリシャ):ギリシャの首都アテネにある世界遺産のアクロポリスでは、過剰な観光客による遺跡の劣化を防ぐため、1日の入場者数を2万人に制限しています。時間帯別の予約システムを導入することで、観光客の集中を避ける工夫も行われています。

政府はどんな対策をすればよいか

オーバーツーリズムを根本的に解決するには、国が一体となって政策を進める必要があります。政府は観光立国推進基本計画に基づき、以下のような対策を推進しています。

1. 持続可能な観光地づくり

政府は、地域住民の生活や自然環境を守りながら観光を発展させる「持続可能な観光」を推進しています。具体的には、観光客の集中を避けるため、人気観光地から地方へ観光客を誘導する「観光地の分散化」を掲げています。地方のまだ知られていない魅力的なスポットを積極的にPRし、インフラ整備を支援することが重要です。これにより、一か所に人が集まりすぎることを防ぎます。

2. 観光客の受け入れ体制を整備

多言語対応の案内板や交通システムの整備、キャッシュレス決済の導入など、外国人観光客がより快適に過ごせる環境を整える必要があります。これにより、観光客の満足度を高めながら、地域住民との摩擦を減らすことができます。観光客一人ひとりの消費額を増やすこと(高付加価値化)も目標の一つです。

3. 法整備と財政支援

オーバーツーリズム対策には多額の費用がかかるため、地方自治体が対策を円滑に進められるよう、財政的な支援や補助金(観光公害対策交付金など)を増やすことが求められます。また、政府が定める「観光立国推進基本計画」では、観光客の迷惑行為(ポイ捨て、騒音など)に対する罰則の検討や、民泊施設の届け出を厳格化し、住民の生活環境を守るためのルール作りも重視されています。

これらの対策は、観光客に優しく、そして住民にも優しい観光地づくりにつながります。政府は、観光客の「量」だけでなく「質」を重視することで、持続可能な観光の実現を目指しています。

観光立国推進基本計画については、以下の観光庁のウェブサイトで詳しく確認できます。
観光庁「観光立国推進基本計画」


各政党の政策

以下は、各政党がオーバーツーリズム問題に対してどのような考えを持っているかをまとめたものです。

自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)

自民党は、観光客の集中を避けるため、人気観光地から地方へ観光客を誘導する「観光地の分散化」を掲げています。また、2024年3月29日に策定された「観光立国推進基本計画」において、観光客の受け入れ環境を整えるための具体的な目標や施策を示し、持続可能な観光地づくりを強く推し進める姿勢です。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

立憲民主党は、オーバーツーリズムの問題を単なる観光の問題ではなく、地方創生と関連付けて捉えています。観光客が集中する地域だけでなく、全国各地で地域の特色を活かした観光を推進することで、経済を活性化し、住民の生活の質も向上させることを目指しています。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

日本維新の会は、観光地の混雑緩和策として、市場経済の原理を重視する考えです。例えば、ピーク時の観光地に価格変動制を導入したり、観光客が特定の時間帯に集中しないような仕組みを検討するなど、経済的なアプローチで問題解決を図る姿勢です。

公明党(中道、保守)

公明党は、オーバーツーリズムによる住民生活への影響を重視し、観光客と住民が共存できる「共生型観光」を推進しています。具体的には、公共交通機関の混雑対策やごみ処理の強化など、地域の課題に寄り添ったきめ細やかな対策を提案しています。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

国民民主党は、地域の自主性を尊重しながら、国がその取り組みを支援するべきだという考えです。観光客が集中しないように地方の魅力を発信したり、観光地のインフラ整備を国がバックアップしたりすることで、地域主体の観光振興を目指しています。

日本共産党(革新、左派)

日本共産党は、オーバーツーリズムの原因の一つとして、政府の外国人観光客誘致政策を批判しています。観光客の数だけを追い求めるのではなく、住民生活や環境を守ることを最優先にすべきだと主張し、観光客の数をコントロールすることや、質の高い観光に転換することを求めています。

参政党(保守、右派)

参政党は、日本の伝統文化や自然を守ることを重視しています。観光客の増加によって、日本の文化や自然が商業主義に飲み込まれたり、海外資本に乗っ取られたりすることを懸念しており、日本の独自性を守りながら観光を振興していくことを訴えています。

れいわ新選組(革新、左派)

れいわ新選組は、観光客の増加が一部の大手企業や資本家だけを潤し、地域の住民や中小企業にはその恩恵が届きにくい構造を問題視しています。観光による利益を広く地域に還元し、住民の生活が向上するような政策を求めています。

日本保守党(保守、右派)

日本保守党は、観光客の増加が日本の安全保障治安に与える影響を懸念しています。不法滞在や犯罪が増加するリスクを指摘し、観光客の受け入れに際しては、厳格な入国管理や法規制を強化するべきだと主張しています。


観光客と住民が共存できる未来のために

観光客がたくさん来てくれることは、地域経済を活性化させてくれる大きなチャンスです。でも、その一方で、オーバーツーリズムという問題も起こっています。観光客が増えすぎると、住民の生活や地域の環境、文化が守れなくなってしまうかもしれません。

観光客の立場からすれば、好きな場所に行って写真を撮ったり、買い物をしたりすることは楽しい思い出です。でも、その行動が地元に住む人々の生活を脅かしているとしたら、どうでしょうか?

オーバーツーリズムの問題を解決するには、国や自治体、そして私たち一人ひとりが観光についてもう一度考え直すことが必要です。観光客を迎える側も、観光客として訪れる側も、お互いを尊重し、持続可能な社会を作っていくために、どんなことができるのか、ちょっと立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。

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