ガソリン減税が実現しそう。選挙で政治が動くよい見本になればいいですね。
2024年12月に、自民党、公明党、国民民主党の三党の幹事長が、ガソリン暫定税率の廃止と103万円の壁を178万円まで引き上げることで合意しました。ただし、暫定税率の廃止については「いつから」が明記されず、議論は先送りになりました。
2025年の通常国会では、野党7党が2025年7月からの廃止を求める法案を出して、衆議院では可決されましたが、参議院では(与党が過半数だったので)採決もされずに廃案となりました。
2025年7月30日、野党9党(立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、参政党、共産党、日本保守党、社民党)が共同で、今年11月から暫定税率を廃止するための法案を衆議院に提出しました。
今回は衆議院も参議院も与党が過半数をとっていないので、法案が通る確率が高くなってきました。選挙によって政治が動くこと、選挙によってしか政治が動かないことを実感できる機会ですので、みなさまその瞬間をお見逃しなく。
ということで、今回は、「ガソリン減税」や「暫定税率の廃止」といった言葉を通して、ガソリンの値段にまつわる政治の議論を、皆さんにわかりやすくお伝えしていきます。
概要やなりたち
車に乗るご家庭では、ガソリンスタンドで「ガソリンが高いな…」と感じることがよくありますよね。ガソリンの値段は、私たちの生活に深く関わっています。実はこのガソリンの値段、私たちが払う「税金」が大きく影響しているんです。
ガソリンには、私たちが物を買ったりサービスを受けたりするときにかかる「消費税」のほかに、特別にかけられている「ガソリン税」という税金があります。
このガソリン税は、大きく分けて2つの部分から成り立っています。
- 本則税率(ほんそくぜいりつ):ガソリン1リットルあたり28.7円です。これは、法律で定められた基本的な税金です。
- 暫定税率(ざんていぜいりつ):ガソリン1リットルあたり25.1円です。これは、特定の目的のために一時的に追加でかけられている税金のことです。
つまり、私たちが今ガソリンスタンドで支払っているガソリン税は、この「本則税率28.7円」と「暫定税率25.1円」を合わせた、合計53.8円(1リットルあたり)になります。
この「暫定税率」が導入されたのは、今からずいぶん前の1974年(昭和49年)のことです。当時の日本は、急速に経済が発展する中で、道路や橋などの社会の基盤(これを「社会資本」と呼びます)がまだ十分に整っていませんでした。
そこで、道路などを整備するための特別な財源として、ガソリンに一時的に高い税金をかけることが決められたのです。
なぜ「一時的」な税金が50年も続くのか? 暫定税率の複雑な背景
この暫定税率が「一時的」な措置とされながら、なぜ今日まで50年近くも続いてきたのでしょうか。「これってずるくない?」と感じる人も多いかもしれませんね。そこには、いくつかの理由があります。
- 道路整備の必要性が続いたから
- 暫定税率が導入された当初は、日本の道路はまだ未整備な部分が多く、全国に高速道路網を広げるなど、大規模な建設が急務でした。暫定税率によって安定した財源が確保され、多くの道路が作られていきました。
- しかし、道路の整備が進んだ後も、老朽化した道路や橋の補修、耐震化(地震に強くすること)など、メンテナンスや改良のための費用が継続的に必要になりました。また、都市部での交通渋滞対策や、災害に強い道路づくりといった新たな課題も生まれ、道路整備の「終わり」が見えにくくなっていったのです。
- 財源が「道路特定財源」から「一般財源」になったから
- 以前は、ガソリン税などの自動車に関する税金は「道路特定財源」と呼ばれ、その使い道が道路整備に限定されていました。
- しかし、2009年(平成21年)にこの制度が変わり、道路特定財源は「一般財源」となりました。 一般財源になったことで、ガソリン税を含む税金は、道路整備だけでなく、教育、医療、福祉など、国のさまざまな政策に使えるようになりました。
- これにより、ガソリン税が道路整備のためだけでなく、国の厳しい財政事情を支えるための重要な税収として位置づけられるようになったのです。つまり、たとえ道路整備の必要性が減ったとしても、税収全体が減ることは避けたい、という考えが働くようになりました。(出典:国土交通省「道路特定財源の一般財源化について」)
- 脱炭素社会への流れとの関係
- 近年、地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす「脱炭素社会(だつたんそしゃかい)」への動きが世界的に加速しています。ガソリン車の利用を減らし、電気自動車(EV)への切り替えを促す政策が重視されています。
- もしガソリン税を大幅に減税すれば、ガソリンの消費量が増え、二酸化炭素の排出が増える可能性があります。そのため、環境問題への配慮から、暫定税率を維持すべきだという意見もあります。 また、電気自動車の普及が進むと、ガソリン税の税収が減ってしまうため、将来の税収のあり方全体を考えたときに、暫定税率を安易に廃止できないという意見もあります
暫定税率の廃止を阻止しようとしているのは誰か?
暫定税率の廃止を阻止しようとしているのは、特定の団体や個人というよりも、主に以下の立場や考え方を持つ人々、組織、そして政府全体の方針が関係しています。
- 政府・与党(特に財務省、国土交通省など)
- 政府や与党の多くは、暫定税率による税収が、国の財政(特に道路整備)にとって不可欠だと考えています。
- 仮に暫定税率を廃止すれば、年間約1兆円もの税収が減り、その穴埋めをどうするのかという問題が生じます。 財源が不足すれば、必要な公共事業や社会保障サービスなど、他の重要な政策に影響が出ることを懸念しています。
- そのため、安易な廃止には慎重な姿勢を取り、現在はガソリン価格高騰への対策として、石油元売り会社への補助金(「激変緩和措置」)を講じることで、国民の負担を軽減しようとしています。
- 地方自治体
- 暫定税率を含むガソリン税の一部は、地方の道路整備や生活道路の維持管理にも使われています。もし暫定税率が廃止されれば、地方自治体に入る税収も減少し、地域住民の生活に必要なインフラ整備や行政サービスに支障が出ることを懸念しています。
- 全国知事会などの地方団体からも、「代替財源なき廃止は断固反対」という声が上がっています。(出典:khb東日本放送 2025年7月25日報道)
- 道路建設・維持管理に関わる業界団体
- 道路の建設や維持管理に関わる建設業界などは、暫定税率による安定的な財源が、事業の継続や雇用の維持に不可欠だと考えています。廃止されれば、事業量の減少や雇用への影響を懸念するため、暫定税率の維持を求める傾向にあります。
- 道路の建設や維持管理に関わる建設業界などは、暫定税率による安定的な財源が、事業の継続や雇用の維持に不可欠だと考えています。廃止されれば、事業量の減少や雇用への影響を懸念するため、暫定税率の維持を求める傾向にあります。
- 一部の環境保護団体
- ガソリン価格が下がるとガソリン消費が増え、二酸化炭素排出量が増加する可能性があるため、脱炭素社会の実現を重視する一部の環境保護団体は、暫定税率の廃止に反対、またはガソリン税を環境税に転換することなどを主張しています。(出典:気候ネットワークなどNGO共同声明 2009年8月5日)
これらの理由から、一時的な措置として始まった暫定税率は、財政の安定や、道路整備の継続、さらには環境問題への配慮といった、様々な視点からその必要性が議論され、結果として廃止することができなくなってしまたのです。
最近議論されている論点
- 物価高対策としての効果
- 近年、ガソリン価格は高止まり傾向にあり、電気代や食料品など、さまざまなものの値段が上がっています(「物価高(ぶっかだか)」)。
- ガソリンは、車での移動だけでなく、物流(トラックでの商品の運搬など)にも欠かせないため、ガソリンが値上がりすると、最終的に商品の値段にも影響してしまいます。 そこで、暫定税率を廃止してガソリン税を下げれば、ガソリン価格が下がり、私たちの家計の負担が軽くなるだけでなく、物価全体が落ち着く効果も期待できる、という意見があります。
- もし暫定税率が廃止されれば、ガソリン1リットルあたり25.1円、つまり1回満タンに入れるごとに数百円〜千円以上の節約になる可能性があります。
- 「トリガー条項」の議論
- ガソリン価格が一定の基準を超えて高くなった場合に、暫定税率の徴収を停止する仕組みを「トリガー条項」と呼びます。この条項は、2010年に導入されましたが、東日本大震災の復興財源確保のために「凍結」されています。
- 現在のガソリン高騰を受け、このトリガー条項の「凍結解除」を求める声も上がっています。しかし、解除すれば税収が減ることや、ガソリン価格が再び下がったときに、税率を元に戻す手続きが複雑になるという問題も指摘されています。
このように、ガソリン減税や暫定税率の廃止は、私たちの家計、国の財政、そして環境問題と、さまざまな側面から議論されています。
各政党が考える「ガソリン減税・暫定税率の廃止」への政策:未来の日本をどうするのでしょうか?
日本のそれぞれの政党は、自分たちの政治に対する考え方(保守・革新など)に基づいて、ガソリン減税や暫定税率の廃止について、どう向き合うかを提案しています。
自由民主党(自民党:保守、中道右派)
- 考え方:ガソリン税の暫定税率は、道路整備などの重要な社会資本整備のために必要だと考えています。国民生活や経済活動への影響も考慮しつつ、安易な廃止には慎重な立場を取ることが多いです。物価高対策としては、ガソリン補助金(石油元売り会社への補助金)などの形で、価格上昇を抑える対応を優先しています。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止には反対、または慎重な姿勢です。
- ガソリン価格の激変緩和措置として、石油元売りへの補助金を延長・拡充する形で、ガソリン価格の上昇を抑制してきました。
- トリガー条項の凍結解除についても、財源の問題や、ガソリン価格が下がった際の影響などを考慮し、慎重な議論が必要との立場です。代替財源の確保や、安定的な社会資本整備の重要性を訴えています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
- 考え方:国民生活の負担軽減を重視し、高騰するガソリン価格の対策として、ガソリン税の暫定税率廃止やトリガー条項の凍結解除を積極的に主張しています。税金の使い道の透明化も求めています。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成です。
- 物価高騰対策として、ガソリン税の暫定税率を直ちに廃止することを強く求めています。
- トリガー条項の凍結解除も訴え、ガソリン価格高騰時に自動的に減税が発動される仕組みの再開を主張しています。
- 暫定税率分の財源については、他の税収の再配分や、無駄な公共事業の見直しなどで対応できると考えています。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
- 考え方:国民の負担を軽減するため、税金の無駄をなくし、効率的な財政運営を目指しています。ガソリン税の暫定税率についても、その必要性を厳しく検証し、廃止の方向で議論を進めるべきだと考えています。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成です。
- ガソリン税の暫定税率について、その必要性や使途を徹底的に見直し、廃止に向けた議論を提唱しています。
- トリガー条項の凍結解除にも前向きな姿勢で、国民負担の軽減策として活用すべきだと主張します。
- 道路整備などの財源は、既存事業の歳出削減や、民間活力の活用などにより確保すべきだという立場です。
公明党(中道、保守)
- 考え方:国民生活への配慮と、必要な社会資本整備の維持という両方の視点から、ガソリン税の問題に取り組んでいます。物価高対策として政府の補助金制度を支持しつつ、暫定税率の扱いは慎重に議論すべきだと考えます。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止には慎重な姿勢です。
- ガソリン価格高騰に対する石油元売り会社への補助金による激変緩和措置の継続・拡充を推進してきました。
- 暫定税率の廃止やトリガー条項の凍結解除については、国の財政状況や国民への影響を総合的に判断し、適切な対応を検討する立場です。必要な社会資本整備への影響を懸念する声もあります。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
- 考え方:国民の生活を守る「正直な政治」を掲げ、ガソリン価格高騰による家計への打撃を重視しています。ガソリン税の暫定税率廃止やトリガー条項の凍結解除を通じて、負担軽減を図ることを主張しています。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成です。
- トリガー条項の凍結解除を強く求め、ガソリン価格が国民生活に与える影響を軽減すべきだと主張しています。
- 暫定税率の廃止も視野に入れつつ、減税による税収減を補うための具体的な財源論も提示していく方針です。
- 一時的な補助金ではなく、恒久的な税制改革による国民負担軽減を目指しています。
日本共産党(革新、左派)
- 考え方:大企業の利益よりも国民の生活と福祉を優先すべきだと主張し、ガソリン価格の高騰は、国民を苦しめるものとして、ガソリン税の減税を強く求めています。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成です。
- ガソリン税の暫定税率を直ちに廃止し、家計の負担を大幅に軽減すべきだと訴えています。
- トリガー条項の凍結解除も強く求め、国民が安心して暮らせる社会の実現を目指します。
- 減税によって不足する財源は、大企業や富裕層への課税強化、軍事費の削減などで確保できると考えています。
参政党(保守、右派)
- 考え方:国民の生活を守ることを最優先し、食料やエネルギーの自給率向上を重視しています。ガソリン価格の高騰も国民生活を圧迫する問題として捉え、税負担の軽減を訴えています。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止には賛成です。
- ガソリン税を含む過剰な税負担を批判し、国民の負担軽減につながる税制改革を提唱しています。
- 暫定税率の廃止やトリガー条項の凍結解除についても、国民の生活防衛の観点から前向きに検討すべきだという立場です。
- 国内のエネルギー自給率を高め、海外情勢に左右されない安定的な供給を目指すことで、根本的な価格変動リスクを減らすことも視野に入れています。
れいわ新選組(革新、左派)
- 考え方:消費税廃止など、大胆な減税策を掲げ、国民生活の苦境を救うことを最優先しています。ガソリン価格高騰も深刻な問題と捉え、税負担の軽減を強く主張します。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成です。
- ガソリン税の暫定税率の廃止はもちろん、消費税の廃止など、国民生活に直接影響する税負担の大幅な軽減を訴えています。
- トリガー条項の凍結解除についても、直ちに行うべきだと主張します。
- 減税による財源不足は、国の借金を増やすことを恐れず、大胆な財政出動(国がお金を多く使うこと)で経済を活性化させるべきだという立場です。
日本保守党(保守、右派)
- 考え方:「国益第一」を掲げ、国民の暮らしを守ることを重視しています。過度な税負担は経済活動を阻害すると考え、ガソリン税の負担軽減にも前向きな姿勢を示す可能性があります。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成の立場です。
- 国民経済の活性化を目的とした減税策の一つとして、ガソリン税の負担軽減を検討する可能性があります。
- トリガー条項の凍結解除についても、国民生活への影響を考慮し、前向きな議論を求めるでしょう。
- 減税による財源不足については、公共事業の効率化や行政改革によって補うべきだと主張することが考えられます。
社会民主党(革新、左派)
- 考え方:国民の生活と福祉を守ることを最優先し、公正な社会を目指しています。ガソリン価格の高騰は国民の生活を苦しめるものとして、その負担軽減を重視します。
- 政策:
- ガソリン税の暫定税率の廃止に賛成です。
- ガソリン税の暫定税率の廃止やトリガー条項の凍結解除を主張し、家計の負担を軽減すべきだと訴えます。
- 減税によって不足する財源は、大企業や富裕層への課税強化、軍事費の削減などによって確保できると考えています。
- 公共交通機関の利用促進や、環境に優しい車の普及支援など、ガソリン消費量そのものを減らす政策も重視します。
まとめ:未来の日本をどうする? みんなで考えてみましょう!
「ガソリン減税」や「暫定税率の廃止」は、私たちの家計に直接関わるだけでなく、国の財政や、環境問題にもつながる、とても大きなテーマです。
もしガソリンが安くなれば、日々の生活が少し楽になるかもしれません。しかし、その分、道路の整備などが遅れてしまう可能性もあります。
それぞれの政党は、こうした様々な視点から、どんな未来の日本を目指すのか、それぞれの考え方に基づいて意見を述べています。ただ、「何年間だけ」という「約束」を50年もやぶり続けるのはおかしいですよね。それをやった政治家も、そういう政治家を選挙で選んだ国民にも責任があることで、反省しなければいけないと思います。もちろん私もね。
この問題を考えるとき、一番大切なのは「私たち一人ひとりが、将来どんな日本にしたいのか?」ということを、しっかり考えることです。
- ガソリン代が安くなることと、国の道路整備がきちんと進むこと、どちらをより重視しますか?
- 物価高に苦しむ私たちの家計を助けるために、税金を減らすことが一番良い方法だと思いますか?
- 環境問題とガソリンの値段、あなたにとってどちらがより大切な課題だと感じますか?
このページを読んで、「ガソリン減税」や「暫定税率の廃止」に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ、ご家族や友人とこのことについて話し合ってみたり、ニュースや資料を調べてみたりして、あなた自身の考えを深めてみてください。未来の日本を創っていくのは、私たちみんなの行動や選択にかかっています。


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