人身売買確定!? ベビーライフ事件って知ってる?

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なぜこんな事件が起きてしまったのか

「ベビーライフ事件」というのを聞いたことがありますか。これは、NPO法人という、利益を目的としない団体が起こした事件の名前です。この団体は、さまざまな事情で親と暮らせない子どもたちを、新しい親のもとへつなぐ「特別養子縁組」という活動をしていました。

しかし、2019年にベビーライフは突然の解散を発表しました。そのとき、多くの人たちが驚いたのは、事業を停止するまでの間に、約250人もの子どもたちを斡旋(あっせん)したまま、その子たちの情報や養親(新しい親)との関係がどうなっているか、行政にきちんと報告していなかったんです。

特に問題となったのは、ベビーライフが解散するまでに海外で養子縁組した174名の子どもたちの安否がわからず、2025年現在もいまだに行方不明のままになっていることです。この事態は、子どもたちが人身売買の被害に遭ったのではないかという深刻な疑惑を呼び、めちゃくちゃヤバい事態になってしまっています。

なぜこんなことになってしまったのでしょうか。この事件が明らかになったことで、日本では養子縁組の制度や、それをサポートする団体の監視が十分ではないことがわかったのです。

ベビーライフの活動実態とは

一見すると子どもたちを救うためのものに見えた「ベビーライフ」の活動実態には、多くの問題が隠されていました。

閉鎖的な運営と高額な費用

NPO法人は、社会貢献を目的とする団体なので、通常は利益を目的としていません。しかし、ベビーライフは養親(子どもを育てる親)から高額なあっせん費用を徴収していたことがわかっています。

元スタッフの証言によると、その費用は他の団体と比べても非常に高かったそうです。報道によると、ベビーライフは養親から1000万円以上を請求していたとされています。これは、他の多くの養子縁組あっせん団体が請求する費用(100万円から300万円程度)と比べても、はるかに高額なものでした。

2021年の読売新聞の報道で「ベビーライフが海外の養親から計2億円を受領した」と報じられましたが、こども家庭庁は法規制前のこととして金額の妥当性についてコメントを避けています。

行政からの指導を無視し続けた

ベビーライフの運営には、早い段階から問題があるとして、東京都が何度も指導を行っていました。特に、お金の管理や、子どもたちの情報がきちんと記録されていない点が繰り返し指摘されていたのです。

しかし、ベビーライフはこれらの指導を真剣に受け止めず、改善しようとしませんでした。そして、2020年7月に事業の許可を更新する手続きを一方的にやめて、突然解散してしまいました。

このとき、行政はベビーライフの代表者と連絡がとれなくなり、子どもたちの情報がどこにあるのか、どう管理されているのか、すべてがわからなくなってしまいました。2022年2月には元代表から東京都に資料引き継ぎの連絡がありましたが、現在連絡が取れるかは不明です。

国や自治体の情報共有の壁

この事件で特に深刻だったのは、日本国内だけでなく海外での養子縁組が行われていたことです。ベビーライフが過去に斡旋した約400人のうち、半数以上が外国籍の養親でした。

国会での山田太郎議員の調査によると、海外にいる子どもたちの情報を、国(法務省や外務省など)も自治体(東京都など)も把握できていないという事実が判明しました。これは、それぞれの行政機関がバラバラに動いており、子どもたちを守るための情報が共有されていなかったためです。

例えば、海外にいる174人の子どもが日本国籍を離脱しているかどうかも、東京都もこども家庭庁も把握していません。そのため、日本国籍を持ったまま海外にいる可能性も否定できませんが、東京都もこども家庭庁もこれまで個別の安否確認は行っていないのです。

空港の入国審査や出入国管理(イミグレーション)でも、誘拐などの疑わしい状況があっても、現行制度では止めることができません。法改正で日本人を対象とした「出国確認の留保」(空港などの出国審査で、特定の人物の出国を一時的に止めることができる制度。犯罪者や容疑者が対象でしたが、日本人も対象に加えられました。)という制度はできましたが、過去に禁固以上の刑に処されている人が対象で、ベビーライフのようなケースには対応できません。

また、子どもが15歳未満の場合、親が申請すれば、たとえ子どもが拒否しても国籍法により日本国籍を失う場合があります。このような場合、日本政府はもはやその子を日本人として保護する義務がなくなってしまいます。

このようなずさんな管理体制が、現在も行方不明となっている174名の子どもたちの悲しい現状につながっています。

事件が明らかになった背景

この事件が世間に広く知られるきっかけをつくった一人が、当時参議院議員だった山田太郎さんです。彼は、Twitter(現在のX)などのSNSを通じて、ベビーライフの問題を積極的に発信しました。

なぜなら、この事件がただの団体の不祥事ではなく、日本の子どもたちの命と人権に関わる重大な問題だと考えたからです。山田議員は、国会で何度もこの問題を取り上げ、厚生労働省や東京都に対し、子どもたちの安否確認や情報管理の徹底を求めました。彼の地道な調査と発信が、多くの人々の関心を集め、事件を風化させない力となったのです。

なぜテレビや新聞で大きく報道されなかったの?

これほど大きな事件にもかかわらず、テレビや新聞では、残念ながらあまり大きく報じられることはありませんでした。その理由はいくつか考えられます。まず、特別養子縁組というテーマが、非常にデリケートな問題だからです。子どもたちのプライバシーや養親の個人情報に関わるため、メディアは報道に慎重にならざるを得なかったのです。

また、事件の全体像が複雑で、行政の責任や制度の不備など、さまざまな問題が絡み合っているため、短い時間でわかりやすく伝えるのが難しかったことも挙げられます。しかし、SNSなどインターネットを通じて多くの人が情報を共有し、政治家も積極的に発言したことで、この問題は「報じられていないけど知っている」という形で、静かに、でも確実に広まっていったのです。

事件をきっかけに話し合われていること

この事件をきっかけに、日本では「子どもの命を守るため、どうすればよいのか」という議論が活発に行われるようになりました。特に議論されている主な論点は以下の3つです。

  1. 民間団体の監督体制: ベビーライフのような民間団体が、勝手に事業を辞めてしまうことがないように、国や自治体がもっと厳しく監視すべきではないか。特に、海外での養子縁組では行政の監視が届きにくくなるため、より厳格なルールが必要だと議論されています。
  2. 子どもの情報管理: 子どもたちの個人情報がきちんと管理され、将来、子どもたちが自分のルーツを知りたいと思ったときに、情報をたどれるようにすべきではないか。行方不明の子どもたちがいる現状をどう解決するかが大きな課題となっています。
  3. 特別養子縁組制度の課題: なぜ親が子どもを手放さざるを得ない状況になるのか、その背景にある社会的な問題(貧困や孤立など)をどう解決していくべきか。

政治家たちはどう考えているの?

このベビーライフ事件を受けて、各政党は子どもの命と権利を守るために、様々な意見を表明し、政策を提案しています。

自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)

子どもの安全を確保するため、児童福祉法などの法改正を通じて、特別養子縁組のあっせん事業を厳格に管理する体制を整備すべきだと考えています。民間事業者の監督強化や、不正が起きた場合の罰則を重くすることなどを検討しています。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

この事件は、行政の監督責任が果たされていなかった結果だと指摘しています。国会で事件の真相究明を求めるとともに、子どもの権利を最優先に考えた、より公的な機関が中心となる養子縁組制度の構築を主張しています。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

民間事業の活力を活かしつつも、子どもの命に関わる事業については厳格な監督が必要だという立場です。行政の無駄をなくし、効率的で実効性のある監督体制を築くことを求めています。

公明党(中道、保守)

児童福祉の専門家として、子どもたちの権利を守るためのきめ細やかな支援体制を重視しています。養子縁組後の家庭への支援や、子どもたちが将来、ルーツを知ることができるような情報管理の透明性を高めるべきだと主張しています。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

国や自治体の責任を明確にし、民間事業者への監督を強化すべきだと主張しています。また、子どもたちが安心して生活できるような社会全体での支援の仕組みづくりも重要だと考えています。

日本共産党(革新、左派)

この事件は、営利目的の民間事業者にあっせんを任せたことの危険性を示していると批判しています。子どもたちの命と人権を守るためには、公的機関が中心となって養子縁組を進めるべきだと訴えています。

参政党(保守、右派)

行政の縦割りや責任感の欠如が、この悲劇を招いた原因だとして、根本的な行政改革を主張しています。子どもたちを大切に育む社会づくりのために、国がもっと強いリーダーシップを発揮すべきだと考えています。

れいわ新選組(革新、左派)

弱い立場にある子どもたちの命と人権を守ることを最優先に掲げています。特別養子縁組あっせん事業の抜本的な見直しや、公的機関によるあっせんを基本とすべきだという考えです。

日本保守党(保守、右派)

日本の伝統的な家族制度を重視しつつ、子どもの健やかな成長を妨げる行為は許されないという立場です。行政の監督不行き届きを厳しく批判し、子どもの安全を確保するための強い規制を求めています。

まとめ

ベビーライフ事件は、あまり知られていないかもしれません。でも、この事件は、私たちの社会が抱えている大きな問題を私たちに教えてくれました。

それは、「子どもの命と人権を、私たちは本当に守れているだろうか?」という問いです。

政治家たちがこの問題にどう向き合い、どんな制度をつくっていくか、これからも注目していくことが大切です。

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