スーパーの食品や毎日使うものが、海外との話し合いで変わるかもしれません
ニュースで「関税交渉」という言葉を聞いたことはありますか? なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はこれは、私たちが毎日使うものや、将来の日本の経済に大きく関係する、とても大切な政治の話題なんです。
このページでは、関税交渉がどんなものなのか、今どんなことが話し合われているのか、そして日本の各政党がどう考えているのかを、皆さんに分かりやすくお伝えしていきます。
概要やなりたち
「関税」とは、海外からモノを輸入する時に、その国の政府がかける税金のことです。例えば、外国で作られた自動車や、海外から輸入されるお肉や小麦粉などに、この関税がかかっています。
この関税がかかると、外国のモノは国内で作られたモノよりも高くなりますよね。そうすることで、国内の産業(工場や農業など)を守る役割があります。もし関税がなければ、外国の安いモノがたくさん入ってきて、国内の産業が競争に負けてしまう可能性があるからです。
「関税交渉」とは、国と国との間で、この関税をどうするかについて話し合うことです。
- 関税を下げる、またはなくす交渉:お互いの国で作られたモノを、もっと安く気軽に売ったり買ったりできるように、関税を減らしたりなくしたりしようと話し合います。これは「自由貿易協定(FTA)」や「経済連携協定(EPA)」と呼ばれる、より大きな協定の一部として行われることが多いです。
- FTA(Free Trade Agreement):特定の国や地域の間で、モノの関税やサービス貿易の制限などをなくすことを目的とした協定です。
- EPA(Economic Partnership Agreement):FTAの内容に加えて、投資、知的財産、競争政策など、より幅広い分野での連携を目指す協定です。
- 関税を上げる、または維持する交渉:自国の特定の産業を守るために、関税を高く保ちたい、または新たにかけたいと主張することもあります。
なぜ交渉が必要なのでしょうか?
それは、関税が、経済だけでなく、その国の産業や雇用、そして私たち消費者の生活に直接影響を与えるからです。例えば、ある国の関税が下がれば、その国の安いモノがたくさん手に入りやすくなり、私たちの生活は豊かになるかもしれません。しかし、その一方で、国内の同じ産業は打撃を受け、失業者が増える可能性も出てきます。だからこそ、国々は自国の利益を最大限に守るために、慎重に話し合いを進めるのです。
最近議論されている論点
最近の関税交渉で特に注目されているのは、大きく分けて次の2つのポイントです。
- 世界的な貿易のルール作り(多国間交渉)
- 世界中の国々が集まって、貿易のルールを決める「世界貿易機関(WTO)」での交渉は、なかなか意見がまとまりにくい状況が続いています。特に、農業品の関税や、政府が企業に与える補助金(補助金が多いと、その国の企業が有利になりすぎてしまうため)などが話し合いの焦点です。
- 例えば、漁業における補助金を減らすことや、途上国の食料安全保障に関わる問題など、複雑な議論が続いています。(参考:WTO公式ウェブサイト)
- 国同士の約束(二国間・地域間交渉)
- WTOでの話し合いが進まない中で、多くの国が、特定の国や地域と協力して、関税を下げたりなくしたりする約束を結ぶ動きが活発になっています。これが「自由貿易協定(FTA)」や「経済連携協定(EPA)」と呼ばれるものです。
- 日本も、この数年で多くの国や地域と協定を結んできました。
- 2018年12月30日には、TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が発効しました。これは、日本、カナダ、オーストラリアなど11カ国が参加し、モノやサービスの貿易における関税を大幅に引き下げるものです。
- 2020年2月1日には、日英包括的経済連携協定も発効しました。
- 2022年1月1日には、RCEP協定(地域的な包括的経済連携協定)が発効しました。これは、日本、中国、韓国、ASEAN諸国(東南アジア諸国連合)など15カ国が参加する、世界で最も大きな自由貿易圏を作る協定です。
- これらの協定によって、私たちの食卓に並ぶ外国産の食品が安くなったり、日本の企業が海外でビジネスをしやすくなったりする可能性があります。しかしその一方で、国内の農家や中小企業にとっては、外国との競争が激しくなるという課題も生まれます。
アメリカとの関税交渉の経緯と結果(2025年7月時点の最新情報)
アメリカのトランプ大統領(第一期)は、TPPという大きな枠組みでの貿易協定から離脱し、各国と「二国間」での貿易交渉を進める方針を示しました。これを受けて、日本とアメリカは、2019年9月25日に「日米貿易協定」と「日米デジタル貿易に関する協定」に署名し、2020年1月1日に発効しました。(出典:外務省「日米貿易協定・日米デジタル貿易に関する協定」)
この2020年発効の協定では、アメリカの農産品(牛肉や豚肉など)の関税は引き下げられましたが、日本の自動車にかかるアメリカの関税(当時2.5%)は維持されました。
しかし、2025年7月22日(日本時間23日)には、トランプ米大統領(第二期)が日本との新たな関税交渉で合意に達したと発表しました。この合意では、これまで25%が上乗せされていた自動車および自動車部品への関税が15%に引き下げられることになりました。この25%の追加関税は、1962年通商拡大法232条に基づき、2025年4月3日以降、自動車に、5月3日以降、自動車部品に課されていたものです。(出典:ホワイトハウス 2025年7月23日)
この新たな合意と同時に、日本企業がアメリカ経済に貢献するため、約80兆円規模の投資を今後数年間で行う計画も発表されました。これは、アメリカ国内での製造業の雇用を増やし、経済を活性化させることを目的としています。この大規模な投資計画は、アメリカ側が関税を引き下げる上での重要な要素になったと考えられています。(出典:NHKニュース 2025年7月23日)
この交渉では、日本としては国内の自動車産業の競争力強化を目指し、アメリカとしては日本市場へのアクセス改善に加え、自国への大規模な投資と雇用創出を両立させる、複雑な交渉となりました。
各政党が考える「関税交渉」への政策:未来の日本をどうするのでしょうか?
日本のそれぞれの政党は、自分たちの政治に対する考え方(保守・革新など)に基づいて、「関税交渉」にどう向き合うかを提案しています。
自由民主党(自民党:保守、中道右派)
- 考え方:日本の経済を成長させるためには、海外との貿易を活発にすることが重要だと考えています。そのため、関税の引き下げや撤廃を含む自由貿易協定(FTA・EPA)を積極的に推進し、日本企業の海外展開を支援しています。一方で、農業など国内の弱い産業に対しては、必要に応じて保護策も検討します。
- 政策:
- TPP11やRCEP協定、そして日米貿易協定など、大規模な経済連携協定を主導し、発効に向けて中心的な役割を果たしてきました。
- 2025年7月の日米間の自動車関税引き下げ合意も、日本の主要産業の競争力強化につながるとの認識から、政府として推進してきたものと考えられます。80兆円規模の対米投資計画についても、日米経済関係の強化に資するものとして、積極的に後押しする立場です。
- デジタル貿易のルール作りや、サプライチェーン(製品が作られて消費者に届くまでの流れ)の強靭化など、新しい貿易の課題にも積極的に取り組んでいます。
- 国内の農業など、自由化の影響を受ける可能性のある産業に対しては、補助金や経営改善の支援策を講じることで、競争力を高めることを目指しています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
- 考え方:自由貿易は必要だと考えつつも、それによって国内の農業や中小企業、地方経済が大きな打撃を受けないように、慎重に進めるべきだと考えています。国民の暮らしや雇用を守ることを重視し、透明性のある交渉プロセスを求めます。
- 政策:
- 貿易協定の交渉にあたっては、国民への情報公開を徹底し、国会での十分な議論を求める姿勢です。
- 関税引き下げによって影響を受ける国内産業、特に農業や中小企業に対するきめ細やかな支援策や補償制度の充実を主張します。
- 食料自給率の向上や、地域経済の活性化を重視し、安易な輸入自由化には反対する立場を取ることがあります。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
- 考え方:自由な経済活動を推進することで、日本の成長力を高めることを重視しています。大胆な規制緩和や構造改革とセットで、関税交渉も積極的に進めるべきだと考えています。
- 政策:
- 政府が主導するFTA・EPA交渉を支持し、日本が国際競争力を高めるための手段として活用すべきだと主張します。
- 国内産業の保護については、一時的な措置にとどめ、根本的な構造改革によって競争力を高めるべきだと訴えます。
- 「身を切る改革」の視点から、関税交渉によって発生する国内調整費なども含め、国費の無駄遣いをなくすことを目指します。
公明党(中道、保守)
- 考え方:自由貿易の推進は日本の成長に不可欠であると認識しつつ、国内の農林水産業や中小企業への影響を最小限に抑えることを重視しています。人間の安全保障の視点から、食料安全保障の確保も重要な課題と位置づけます。
- 政策:
- 貿易協定の交渉では、日本の国益をしっかり守りながら、国内のデリケートな分野への配慮を求めます。
- 交渉によって影響を受ける国内の農林水産業や中小企業に対して、きめ細やかな支援策や、新しい技術導入への補助金などを通じて、競争力強化を支援することを主張しています。
- 食料自給率の向上や、持続可能な農業の発展を重視し、国際的な食料危機にも対応できる体制づくりを訴えます。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
- 考え方:開かれた貿易体制は日本の経済成長に必要不可欠であるとしつつも、国内産業の保護と国民生活の安定を両立させる「賢い自由貿易」を目指しています。交渉においては、国益を最大化する戦略的なアプローチを重視します。
- 政策:
- 貿易協定の交渉状況について、国民への情報提供を徹底し、透明性を確保することを求めます。
- 関税交渉によって国内産業が受ける影響を丁寧に検証し、影響が予測される分野に対しては、転換支援や新たな成長戦略を提示すべきだと主張します。
- 食料安全保障の観点から、農業分野における慎重な関税交渉を求めるとともに、国内生産基盤の強化を訴えます。
日本共産党(革新、左派)
- 考え方:大規模な自由貿易協定は、日本の農業や中小企業を破壊し、雇用の不安定化を招くと強く批判しています。国民の暮らしと、食料自給率など国の安全保障にかかわる分野を守ることを最優先すべきだと主張します。
- 政策:
- TPPやRCEPなどの大規模な貿易協定は、多国籍企業や一部の大企業にしか利益をもたらさないとして、これらの協定からの脱退や再交渉を求める立場です。
- 食料自給率の大幅な引き上げを政策の柱の一つとし、国内農業の保護と振興を強く訴えます。
- 関税交渉によって影響を受ける労働者の雇用を守るための政策や、中小企業への手厚い支援を主張します。
参政党(保守、右派)
- 考え方:「食料安全保障の確立」を最重要課題の一つと位置づけており、関税交渉においては、日本の農業や食料自給率を守ることを強く主張します。安易な自由貿易には慎重な立場です。
- 政策:
- 食料自給率の向上を国家戦略と位置づけ、関税によって国内農業を徹底的に保護すべきだと主張します。
- 国民の健康を守る観点から、輸入食品の安全基準を厳格化し、食の安全を確保することを重視します。
- 特定の国の思惑によって日本の国益が損なわれないよう、外交交渉において強い姿勢で臨むことを求めます。
れいわ新選組(革新、左派)
- 考え方:国民の生活と命を脅かすような自由貿易には断固として反対し、農業や医療など、私たちの暮らしに直結する分野は、国の責任でしっかり守るべきだと主張しています。
- 政策:
- TPPやRCEPのような多国間での貿易協定は、国民の生活を破壊するとして、交渉の見直しや、場合によっては協定からの離脱も視野に入れるべきだと訴えます。
- 食料自給率の向上を最重要課題とし、減反政策の廃止や、農業への大幅な財政支援を主張します。
- 輸入品の安全性を厳しくチェックし、食の安全・安心を確保することを重視します。
日本保守党(保守、右派)
- 考え方:「国益第一」を掲げ、日本の安全保障と経済的自立を最優先します。関税交渉においても、安易な自由化には反対し、国内産業と文化を守るための強力な保護政策を主張します。
- 政策:
- 海外からの安価な農産物や製品の流入から、日本の農業や中小企業を徹底的に保護するための関税政策を重視します。
- 食料自給率の大幅な向上を国家目標とし、それに見合う農業政策の転換を求めます。
- 国際社会における日本の立場を明確にし、他国からの不当な要求には毅然とした態度で臨むことを主張します。
まとめ:未来の日本をどうする? みんなで考えてみましょう!
「関税交渉」は、私たちが日々目にする商品の値段や、日本の農業、工場で働く人たちの暮らしに直接影響を与える、とても大切な政治のテーマです。
関税を下げて海外との貿易を活発にすれば、安い商品がたくさん手に入り、私たちの生活が便利になるかもしれません。一方で、国内の産業は厳しい競争にさらされ、仕事が減ってしまう可能性もあります。
それぞれの政党は、こうした良い面と大変な面を考えながら、どんな未来の日本を目指すのか、それぞれの考え方に基づいて関税交渉に臨む姿勢を示しています。
この問題を考えるとき、一番大切なのは「私たち一人ひとりが、将来どんな日本にしたいのか?」ということを、しっかり考えることです。
- 外国のものが安く手に入るようになるのは良いことだと思いますか? それとも、日本の農家や工場を守る方が大切だと思いますか?
- 私たちの食料が、海外からの輸入に頼りすぎても大丈夫だと思いますか? それとも、日本国内で十分作れるようにするべきだと思いますか?
- 国同士の約束(貿易協定)を結ぶときに、どんなことを一番大切にしてほしいですか?
このページを読んで、「関税交渉」に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ、ご家族や友人とこのことについて話し合ってみたり、ニュースや資料を調べてみたりして、あなた自身の考えを深めてみてください。未来の日本を創っていくのは、私たちみんなの行動や選択にかかっています。


コメント