政治は子供たちの未来をどう支えているの? 貧困の原因と対策を見てみましょう
子どもの貧困は少なくなっている?
子どもの貧困ってなに? 「相対的貧困」の考え方
「貧困」と聞くと、食べるものもなく、住む家もないという、生活が完全に破綻している状況を想像する人がいるかもしれません。しかし、日本の「子どもの貧困」は、国際的な基準でも使われている「相対的貧困」という考え方で定義されています。
相対的貧困とは、その国の社会全体が持つ平均的な収入の半分よりも少ない収入で暮らしている状態を指します 。具体的には、世帯の年間収入から税金や社会保険料などを引いた「手取り収入」を、世帯の人数に合わせて調整した等価可処分所得が、その社会の中央値の半分に満たない場合を貧困と見なします 。この定義は、一見しただけでは貧困であると認識されにくく、問題が表面化しにくいという側面も指摘されています 。
日本の「子どもの貧困率」はどのように変化してきたか
最新のデータを見てみましょう。厚生労働省が2022年(令和4年)に公表した「国民生活基礎調査」(調査は3年ごとなので2021年が最新。現在は増えている印象がありますね。)によると、2021年(令和3年)の子どもの相対的貧困率は11.5%でした 。これは、日本の約9人に1人の子どもが貧困の状態にあることを示しています 。
この数値は、前回調査の2018年(平成30年)の14.0%から2.5ポイント改善しており、最も高かった2012年(平成24年)の16.3%からは約5ポイントも低下しています 。この改善の背景には、共働き世帯の増加や人手不足による所得の上昇があると考えられています 。
貧困は「ひとり親家庭」だけの問題じゃない。
全体の子どもの貧困率は改善傾向にありますが、その中身を詳しく見ると、まだ深刻な問題が残っています。特に、ひとり親世帯の貧困率は依然として非常に高く、2021年(令和3年)の調査では44.5%という高い割合になっています 。これは、ひとり親世帯の約半数が貧困の状態にあることを意味します。この割合は、親の就業の有無に関わらず約60%が貧困に陥るという他国と比べても異なる傾向にあると指摘されています 。
しかし、貧困に苦しむ子どもの数自体は、実はひとり親家庭よりも、親が二人いる「ふたり親世帯」の方がはるかに多いのです 。ふたり親世帯の貧困率は8%とひとり親世帯より低いものの、世帯数が圧倒的に多いため、貧困に陥っている子どもの総数としてはふたり親世帯の方が多くなります 。この事実は、子どもの貧困対策が、特定の家庭だけでなく、中間層と見なされてきたふたり親家庭にも焦点を当てる必要があることを示唆しています 。
全体の子どもの貧困率が下がっているというデータはポジティブなニュースですが、ひとり親世帯の貧困率が約5割で停滞している点や、絶対数としてはふたり親世帯の貧困児童がより多い点を踏まえると、統計の数字だけでは見えない問題の深刻さが明らかになります。これは、「問題は解決に向かっている」という安易な結論に飛びつくのではなく、「私たちの身近にも貧困は存在し、その性質は多様化している」という気づきを促します。さらに、ふたり親世帯には政策的な支援がほとんどないのが実情であり、既存の貧困対策の限界と今後の政治が取り組むべき課題を提示していると言えるでしょう 。
子どもの貧困について、最近どんなことが話し合われている?
貧困は経済的な問題だけではない
子どもの貧困は、お金がないことだけでなく、それによって生まれる「見えない貧困」も大きな問題となっています。経済的な理由から、子どもたちの成長に欠かせない様々な機会が失われています。
例えば、「体験の格差」は、お金が原因で遊園地や習い事、塾に通うことが難しくなり、同世代の子どもたちと比べて体験の機会が失われる問題です 。また、地域社会のつながりが薄れ、三世代同居も減る中で、親以外の大人と接する機会がない子どもが増える「人間関係の貧困」も深刻化しています 。さらに、親の代わりに幼い弟や妹の世話をしたり、病気や障がいを持つ家族の介護をしたりする「ヤングケアラー」も、貧困が背景にあるケースが指摘されています 。給食費の滞納を親の怠慢だと考えてしまう社会の意識や、「ヤングケアラー」という言葉が生まれて初めて社会が問題を認識したという事実は、子どもの貧困が「不可視性(見えにくい、見つけにくい)」を物語っています 。
経済的な貧困は、子どもたちの健康にも悪影響を及ぼします。親が朝から晩まで仕事をしている場合、子どもは栄養バランスが偏ったインスタント食品やコンビニ、スーパーのお惣菜などに頼ることが多くなりがちです 。夏休みなどの長期休暇の後には痩せてしまう子どももいると指摘されており、子どもの健康的な成長には温かい食事が不可欠です 。こうした問題を解決するため、「こども食堂」のような地域での取り組みが全国に広がっています 。
貧しさは「世代を超えて連鎖」する。貧乏人の子は貧乏。。?
子どもの頃の貧困は、将来の選択肢を狭め、大人になっても貧困に陥ってしまうという「貧困の連鎖」につながることが分かっています 。この連鎖は、主に教育の機会を通じて引き起こされます。
経済的に厳しい家庭では、学習塾や習い事に通うことが難しいため、学力に差が生まれることがあります 。内閣府が2018年(平成30年)に公表した調査によると、生活保護世帯の子どもの大学等進学率は35.3%でした 。これは、全世帯の大学等進学率73.2%の半分以下です 。
最終学歴によって生涯にわたる収入に大きな差が生まれるという調査結果もあります 。ある調査では、貧困が原因で大学等への進学が叶わなかった場合、生涯年収の差が8,000万円以上になる可能性も指摘されています 。このことから、子どもの貧困を放置することは、将来の社会の活力を損なうことにつながります。
貧困の世代間連鎖は、少子化問題とも深く関連しています 。若年男性の貧困化や格差の広がりが、未婚化や夫婦がもうける子どもの数の減少に直結しているという指摘もあります 。子育てにかかる費用は子ども一人につき家一軒分に相当するとも言われており、経済的な不安が子育てを諦める理由の一つになっていると考えられます 。この連鎖は、子どもの貧困が単なる社会問題ではなく、将来の経済活動や社会の存続そのものに影響を与える「国家的な危機」であることを示しています。貧困の連鎖を断ち切ることは、未来の労働力や納税者を育むことであり、少子化という大きな課題に立ち向かうための根本的な解決策とも言えるのです。
各政党は子どもの貧困についてどう考えている?
各党の考え方や主張は最新の各政党ホームページの政策や公約、党首の発言、ニュース記事などを参考にしています。各政党の考え方を見て、自分の考え方に合う政党はどこかを選んでみましょう。
| 政党名 | 児童手当/給付金 | 高校授業料無償化 | 教育・子育て支援 | ひとり親家庭への支援 |
| 自由民主党 | 抜本的拡充 | 賛成(所得制限撤廃) | こども家庭庁創設、「加速化プラン」 | ― |
| 立憲民主党 | 18歳まで月1万5千円に増額、所得制限撤廃 | 賛成(所得制限撤廃) | 公立小中学校給食無償化、保育士処遇改善 | 養育費の立替・取立制度の検討 |
| 日本維新の会 | ― | 賛成(所得制限のない完全無償化) | 教育の全課程の無償化を目指す | ― |
| 公明党 | 拡充を推進 | 賛成(所得制限撤廃) | 超党派で法律を成立させる、アウトリーチの法定化 | ― |
| 国民民主党 | 18歳まで月1万5千円に拡充、所得制限撤廃 | 賛成(完全無償化) | 小中学校給食無料、18歳まで医療費無料 | 児童扶養手当の所得制限撤廃、養育費確保 |
| 日本共産党 | 所得制限撤廃を一貫して要求 | ― | 学校給食無償化 | ― |
| 参政党 | 0~15歳へ月10万円の給付金 | ― | 食育推進、教育国債発行 | ― |
| れいわ新選組 | 高校卒業まで月3万円に増額、所得制限なし | 賛成(5つの無償化) | 「5つの無償化」、奨学金徳政令 | ― |
| 日本保守党 | 0~15歳へ月10万円の給付金 | ― | 教育制度見直し、職業教育拡充 | ― |
自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)
自由民主党は、2023年(令和5年)にこども政策の司令塔として「こども家庭庁」を創設し、「全ての子供・若者が健やかに成長でき、将来にわたって幸せに生活できる『こどもまんなか社会』」の実現を強力に推進しています 。
2023年(令和5年)12月には、3.6兆円という前例のない規模で「こども・子育て支援加速化プラン」をまとめ、児童手当の抜本的拡充、大学等の高等教育費の負担軽減の拡充、男性の育児休業取得率引き上げなどに取り組むとしています 。
高校授業料無償化については、賛成の立場です。高校生等の授業料以外の教育費支援を拡充し、安定財源を確保した無償化の拡大を進める方針を示しています 。2025年(令和7年)2月25日には、公明党と日本維新の会との間で、2025年度(令和7年度)から公立高校への支援について所得制限を撤廃するなどの合意がなされました 。
自民党はかつて、野党時代の民主党政権が所得制限を設けない「子ども手当」を創設したことを批判し、政権奪還後に所得制限を復活させた経緯があります 。しかし、最近では児童手当の所得制限撤廃を検討する動きを見せ、高校授業料無償化でも所得制限の撤廃に合意しました 。これは、他の政党の主張や世論が与党の政策を動かすという、政治のダイナミズムを示しています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
立憲民主党は、親から子に引き継がれる貧困の連鎖を断ち切るため、就学前教育や高等教育に対する負担軽減策を実行すると掲げています 。
児童手当については、賛成の立場です。児童手当を18歳まで月額1万5,000円に増額し、所得制限を撤廃することを主張しています 。また、貧困が子どもの栄養状態や健康に悪影響を及ぼす悪循環を断つため、公立小中学校の給食費を無償化することを掲げています 。教育費の負担軽減策として、高校・大学授業料の無償化に取り組み、出産費用も無償化すると主張しています 。
さらに、保育士の処遇を根本的に改善し、保育所や幼稚園などで働く全ての職員の賃金を1人あたり月額5万円引き上げることを目指しています 。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
日本維新の会は、高校の授業料無償化について、賛成の立場です。所得制限のない「完全無償化」を実現し、将来的には教育の全課程の無償化を目指すとしています 。
この方針に基づき、2025年(令和7年)2月25日には、自民党と公明党との間で高校授業料無償化に向けた所得制限撤廃の3党合意がなされ、今後の実現に向けて議論を進めています 。
公明党(中道、保守)
公明党は、2013年(平成25年)に成立した「子どもの貧困対策推進法」や2019年(令和元年)の改正を、超党派の議員立法として主導してきました 。また、2024年(令和6年)4月に成立した「改正生活困窮者自立支援法」には、子育て世帯に対するアウトリーチ(訪問支援)の法定化などが盛り込まれており、家庭が抱え込んでいた問題を社会で支える仕組みづくりを推進しています 。
高校授業料無償化については、賛成の立場です。高校授業料の所得制限を撤廃し、国公私立を問わず実質無償化を目指すとしています 。児童手当の拡充や高等教育の無償化など、妊娠から出産、子育て期までを通じた切れ目のない支援の強化を掲げています 。
公明党は、超党派での議員立法を主導したり、自民党や日本維新の会との政策合意を形成したりするなど、与党内での調整役や実務的な政策実現に強みを持つことが示唆されます 。これは、政治が単なる理念の対立だけでなく、各党の連携や協調によって具体的な成果を生み出すプロセスがあることを示しています。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
国民民主党は、親の年収に関わらず、第一子、第二子の児童手当を18歳まで一律で月額1万5,000円に拡充することを主張しています 。
ひとり親家庭への支援としては、児童扶養手当の所得制限を撤廃し、養育費の確保問題に取り組むとしています 。また、保育機能や無料学習支援を備えた「サービス付き子育て賃貸住宅」の整備を検討しています 。
教育無償化の推進も掲げており、0歳児の見守り訪問、18歳までの医療費、小中学校の給食費、保育料などを全て無料にする「教育無償化」の実現を目指しています 。また、障害児福祉に関する全ての公的給付における所得制限を撤廃するとともに、特別児童扶養手当の支給水準を引き上げることを掲げています 。
日本共産党(革新、左派)
日本共産党は、児童手当の所得制限撤廃を一貫して求めてきたと主張しています 。この主張は、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組など、他の野党との共通の主張であり、野党間の連携を可能にしている基盤の一つであることがうかがえます 。
また、学校給食の無償化も推進しています 。
参政党(保守、右派)
参政党は、0歳から15歳の子ども一人ひとりに、毎月10万円の「子育て教育給付金」を支給することを掲げています 。
この給付金の財源として、科学技術や人的資本への支援を目的とした「教育国債」の発行を提案しています 。また、食と教育を重視しており、地元産・有機食材を使った学校給食を推奨し、不必要な食品添加物を極力減らすことを掲げています 。
れいわ新選組(革新、左派)
れいわ新選組は、高校卒業までの子どもに、所得制限なしで一律月額3万円の「子ども手当」を支給することを主張しています 。
また、「子ども支援5つの無償化」として、18歳までの子どもの医療費、学校給食費、保育料、学費、小学校の放課後対策事業を無償にすることを掲げ、子どもの育ちと学びを保障するとしています 。
れいわ新選組の政策は、「親ガチャ」(生まれた家庭環境によって人生が左右されるという考え方)という言葉に代表される若者の絶望感に応えるもので、子育てを「自己責任」にせず、社会全体で支える体制づくりを強く打ち出していることがうかがえます 。
日本保守党(保守、右派)
日本保守党は、0歳から15歳の子ども一人ひとりに、月10万円の「教育給付金」を支給すると主張しています 。
また、教育制度の見直しを進め、「自虐史観」を植え付ける教科書の見直しや、職業教育の拡充、外国人学生への補助金見直しなどを掲げています 。
まとめ: 子供たちの明るい未来のために、私たちができることは
本レポートで見てきたように、日本の「子どもの貧困」は、経済的な問題だけでなく、教育、体験、人間関係といった様々な側面で子どもたちの可能性を奪う、多面的な社会課題です。この貧困は、やがて少子化にもつながり、日本社会全体の活力を低下させる要因にもなっています。
この課題に対し、各政党はそれぞれ異なるアプローチを提示しています。児童手当の所得制限撤廃のように「全ての国民を等しく支えるべきだ」という考え方(普遍主義)もあれば、財政的なバランスや効率を重視する考え方(選別主義)もあります。また、給付金の額や、教育、食育といった具体的な支援策にも違いが見られます。
子どもの貧困率の改善傾向や、児童手当の所得制限をめぐる与野党の議論の変化は、政治が社会の状況や人々の声に影響されて動いていることを示しています。これは、政治が単独で動くのではなく、複数の勢力や社会の動きの中で変化していくという、政治の重要な側面を物語っています。
あなたが考える「子供たちが夢と希望を持って成長できる社会」を実現するために、どの政党の政策が、どの考え方が最も重要だと思いますか。それぞれの政策が、どのような子どもたちの生活を支え、どのような未来につながるのかを考えてみましょう。そして、あなたのその一票が、子供たちの未来を形作る力になります。


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