10月18日追記 森林法違反で工事を中断している日本エコロジーは、17日に新たに土壌汚染対策法に基づく届け出をせず工事を進め、道の行政指導を受けて約7カ月遅れで届け出を行っていたことが判明。盛り土工事でも盛土規制法上の届け出に遅延があったことがわかりました。
日本エコロジーの松井社長は今後について「太陽光発電事業の進め方、自治体との間に生じた認識の齟齬(そご)をどのように解消し、地域と調和を図っていくか」と話し、市や市民の理解の上で工事を再開したいとしています。
| 時期 | 出来事 | 内容 |
|---|---|---|
| 2024年8月 | 釧路市議が伐採届の提出遅れを指摘 | 森林法に基づく伐採届出が事後提出された疑いが浮上。 |
| 2024年9月 | 釧路市が事業者へ通知 | 市のガイドライン違反の可能性について、市が事業者に通告。 |
| 2025年2月 | 事業者による住民説明会 | 事業者(日本エコロジー)が、建設予定地にオジロワシの巣はないと説明。 |
| 2025年3月 | 希少生物の生息が発覚 | 毎日新聞の報道で、複数のオジロワシの巣があることが判明。 文化庁が、国の特別天然記念物タンチョウへの影響があれば罰則の可能性があると警告。 |
| 2025年5月 | 希少生物の追加発見と市民の声 | 建設予定地から希少なキタサンショウウオの幼生が発見される。 建設中止を求める6.7万筆以上の署名が市に提出される。 |
| 2025年5月30日 | 「ノーモアメガソーラー宣言」 | 釧路市長が、自然環境と調和しない太陽光発電施設の設置を望まないことを宣言。 |
| 2025年9月2日 | 北海道による工事中止勧告 | 民意が政治を動かした?! 事業者が森林法に基づき知事への許可なく工事を進めたとして、北海道が一部工事の中止を勧告。 |
| 2025年9月9日 | 日本エコロジー 釧路湿原のメガソーラー中止しない旨発言 | |
| 2025年9月10日 | 書類の虚偽報告が発覚 | 森林法に基づく伐採届出を4か月間提出しておらず、提出日を偽装していたことが判明。 |
| 2025年9月12日 | 事業者による工事一時中断の発表 | 相次ぐ法令違反や環境問題を受け、日本エコロジーが工事の一時中断を発表。 |
| 2025年10月4日 | 釧路市の新条例施行 | 釧路市が、10kW以上の太陽光発電設備を対象とした事業許可制を導入する条例を制定。 |
| 2025年10月15日 | 事業者と市が協議 | 日本エコロジーが釧路市役所を訪れ、一時中断中の工事再開について協議。 |
| 2025年10月17日 | 土壌汚染対策法違反が発覚 | 日本エコロジーが土壌汚染対策法に基づく届出を怠っていたことが明らかになる。 |
| 2025年10月27日 | 盛土規制法違反の疑い | 参政党の木村はやと議員が、衛生写真によって、着工日と届出された3/17には着工の形跡が見られず、4/1日以降(盛土規制法以降)である可能性が高いと言及。 その場合、知事の許可や住民への説明が必要で無許可(規制違反)となる。 |
大切な自然と生きものたちが太陽光パネルで壊されようとしている
日本の政治や社会の出来事は、遠い場所で起きているように見えても、実は私たちの暮らしと深いつながりがあります。「太陽光発電は本当にエコ? 知られざる落とし穴」でも触れましたが、北海道の釧路湿原で起きている大きな問題は、私たちの社会がこれからどうしていくかを考える、とても大切なきっかけになります。そして私たちひとりひとりの考えや訴えが政治を動かすことができるのかを一緒に考えていきます。
2025年9月2日追記 北海道はメガソーラー業者(日本エコロジー社)に森林法違反があるとして一部工事中止を勧告しました。多くの国民の声が行政を動かしたと言えるできごとです。(後述)
釧路湿原ってどんな場所?
釧路湿原は、北海道の東にある、日本でいちばん広い湿原です。その広さはなんと2万6,000ヘクタールもあります 。
この場所は、たくさんの貴重な生きものたちが暮らす、自然の宝物です。昭和55年(1980年)には、日本で初めて「ラムサール条約」という、大切な湿地を守るための国際的な約束に登録されました 。
ここには、国の特別天然記念物であるタンチョウが暮らしています。釧路湿原は、世界でもっとも多くのタンチョウがヒナを育てる場所として知られています。他にも、国の天然記念物のオジロワシや、釧路市の天然記念物であるキタサンショウウオなど、絶滅しそうな生きものたちがたくさんいます 。
なぜ今、釧路湿原で太陽光パネルの建設が進んでいるの?
釧路湿原の周りでたくさんの太陽光パネルが作られるようになったのには、いくつかの理由があります。一番大きなきっかけは、東日本大震災の後の平成24年(2012年)に始まった、「固定価格買取制度(FIT)」という国の制度です 。
この制度は、再生可能エネルギー(太陽の光や風の力など、自然の力から作るエネルギー)で作られた電気を、電力会社が国が決めた高い値段で買い取ってくれるというものです。この制度のおかげで、太陽光発電はとても儲かるビジネスになり、たくさんの会社が参加しました 。
釧路地域は、北海道の中でも雪が少なく、日差しが強いので、太陽光発電にぴったりの場所でした 。さらに、建設が進められている土地の多くは、もともと建物が建てられにくい場所でしたが、平らで、電気を送るための電線もすでにあったので、事業者にとってはとても都合がよかったのです 。
国が「地球に優しいエネルギーを増やそう」という良い目的で始めた制度が、思わぬ形で、釧路の豊かな自然に影響を与え始めているという問題が起きています。これは、国の大きなルールが、それぞれの地域の自然に与える影響を十分に考えられていなかったために起きたことかもしれません。
貴重な生きものたちの声を聞いてみよう
釧路湿原で進むメガソーラー事業は、そこで暮らす生きものたちに、大きな問題を起こすのではないかと心配されています。
特別なタンチョウやオジロワシへの影響は?
釧路湿原の近くでは、大阪にある「株式会社日本エコロジー」という会社が、およそ6,600枚の太陽光パネルを設置する計画を進めています 。しかし、この計画について、釧路市教育委員会は、「生きものたちの調査が十分ではない」と指摘しています 。
釧路市立博物館の秋葉薫(あきばかおる)館長は、具体的な問題点を次のように挙げています。
- 国の特別天然記念物であるタンチョウの調査は、実際に現地を調べるのではなく、専門家から話を聞くだけで済まされていました 。
- 国の天然記念物であるオジロワシの調査も、ヒナを育てる時期に十分な回数行われていませんでした 。
- 絶滅しそうなタカの仲間(チュウヒ)の調査は、全く行われていませんでした 。
このため、釧路市教育委員会は、国の文化庁に「このままでは貴重な生きものたちに悪い影響が出るかもしれない」という意見書を送りました 。これに対して文化庁は、「もし、工事が天然記念物に悪い影響を与えるなら、元の状態に戻すように命令するかもしれない」と答え、釧路市の方針を応援してくれました 。
市の天然記念物キタサンショウウオは?
タンチョウやオジロワシだけでなく、釧路市の天然記念物であるキタサンショウウオも危ない状況にあります。あるジャーナリストの報告によると、キタサンショウウオが暮らしている場所と、太陽光パネルを設置する計画地がおよそ1,000万平方メートルも重なっていることがわかっています 。このままでは、キタサンショウウオが絶滅してしまうかもしれないと、専門家たちは警告しています 。
この問題を受けて、釧路市は令和7年(2025年)10月1日から、市の中で事業用の太陽光発電施設を作る場合に、市の許可が必要になるようにする条例を提出しました 。しかし、この条例が始まる前に、すでに工事が進んでいる場所もあります。ルールを新しく作るスピードよりも、工事の進むスピードの方が速いことが、問題の解決を難しくしています。
なぜこんなことに?
小泉進次郎さんの「規制緩和」が原因?
一部では、小泉進次郎さんが環境大臣だった時代に「規制をゆるめたこと」が、開発を加速させたという話もあります 。
令和2年(2020年)10月に、小泉さんは、国立公園の中で再生可能エネルギーの発電所を作りやすくするための規制緩和をすると言いました 。彼の考えは、「自然を守るだけ」ではなく、「自然を守りながら、上手に活用すること」も大事だというものでした 。
しかし、今回問題になっている釧路の事業地は、国立公園の外にあるため、小泉さんの発言がこの事業に直接関係したわけではありません 。
それでも、政治家の発言には、法律よりも大きな影響を与えることがあります。環境大臣という国のトップが、「開発も進めていい」という考えを示したことで、太陽光発電の事業者や地方の役所の人たちは、「積極的に開発を進めても良いんだな」と感じた可能性があります 。これを「シグナル効果」と言います。政治家が発した言葉が、人々の行動に影響を与える、という一つの例なのです。
太陽光事業の会社と外国の会社は関係ある?
今回の事業を進めている「株式会社日本エコロジー」は、大阪にある会社です 。代表者は松井政憲(まついまさのり)さんという方です 。
同じ「日本エコロジー」という名前の会社が、新潟にもあります 。しかし、新潟の会社は、自分のホームページで「大阪の会社とは、全く関係がありません」とはっきり伝えています 。
今回の釧路の太陽光事業を進める会社と、外国のお金(外国資本)が直接つながっているという事実は、調べた情報からは見つかっていません 。
ただ、釧路地域全体を見ると、他のジャーナリストの報告では、太陽光事業には「外国の会社もたくさん含まれている」という情報があり、ドイツの会社が大きな計画を進めているという話もあります 。
各政党は釧路湿原のメガソーラー開発をどう考えているか
各党の考え方や主張は最新の各政党ホームページの政策や公約、党首の発言、ニュース記事などを参考にしています。各政党の考え方を見て、自分の考え方に合う政党はどこかを選んでみましょう。
自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)
自民党は、再生可能エネルギーを国の「主な電力」にすることを進めています。しかし、大規模な開発による問題も認識しています。北海道では、法律を守らないで森を勝手に切るような、ルールを無視する開発業者を厳しく取り締まるためのルール作りが必要だ、と訴えています 。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
立憲民主党は、自然を壊してしまうような大きな太陽光発電所には反対しています。その代わりに、建物の屋根や、駐車場の屋根、そして畑で農業をしながら太陽光発電をする「ソーラーシェアリング」など、自然と共存できる方法で太陽光発電を広げることを目指しています 。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
日本維新の会は、国のエネルギーを自分たちでまかなうことを大切にしています。そのために、安全が確認された原子力発電所を再び動かすことと、再生可能エネルギーを両方とも進めていく、という考え方です。
公明党(中道、保守)
公明党は、「地域のみんなと協力して再生可能エネルギーを広げていく」ことを大事にしています。この考えに基づき、釧路市で出された「ノーモア・メガソーラー宣言」に賛成の立場をとっています 。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
国民民主党は、日本のエネルギーを自分たちでまかなう力を高めることを一番に考えています 。そのためには、原子力発電所の再稼働なども必要だと主張しています。また、電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」というお金をなくして、国民の負担を減らすことを目指しています 。
日本共産党(革新、左派)
日本共産党は、2040年までに使う電気をすべて再生可能エネルギーにする計画を持っています 。釧路湿原の問題については、党の議員が政府に説明を求めに行きました。そして、「一度工事が進んだ後でも、もし環境に悪い影響があることがわかったら、それをやめさせられるような新しい法律が必要だ」と強く訴えています 。
参政党(保守、右派)
参政党は、高いお金がかかり、自然を壊すようなメガソーラーには反対しています 。そのため、国民の負担になっている「再エネ賦課金」をなくすことを公約としています。そして、これからは自然を壊す太陽光発電ではなく、すでにあるダムを使った水力発電など、日本が元々持っている技術を使っていくべきだと考えています 。
れいわ新選組(革新、左派)
れいわ新選組は、2050年までに自然のエネルギーだけで社会を動かすことを目指しています 。その一方で、再生可能エネルギーを作るために自然が壊されたり、地元の人たちとのトラブルが起きていることをとても問題だと考えています 。
日本保守党(保守、右派)
日本保守党は、太陽光や風力発電を「日本の山や海を壊し、電気代も高くする」ものだと強く批判しています 。そのため、「再エネ賦課金」というお金をなくすことを最も大切な政策の一つとして掲げています 。
まとめ: 釧路湿原の問題から未来を考えよう
釧路湿原のメガソーラー問題は、日本のエネルギーや環境、経済、政治のことが複雑に絡み合った、私たちみんなの問題です。
「環境に優しい」と思われている太陽光発電が、別の形で自然を壊すことにつながる可能性があることを、この話は教えてくれます。
国のルールを作るスピードと、開発が進むスピードの間にズレが起きている中で、タンチョウやキタサンショウウオといった、大切な自然は今も危機にさらされています。
この問題は、私たち一人ひとりが、これからどんな社会にしたいかを考えるための大切な宿題です。
私たちの生活に必要な電気は、どこで、どうやって作るのがいいと思いますか。 自然を守ることと、安定した電気を保つこと、両方を大切にするには、どうしたらいいでしょうか。 どの政党の考えが、あなたの考えに一番近いでしょうか。
おまけ1:釧路湿原のメガソーラー問題を時系列で考えてみよう
| 日付 | 主体 | 出来事 |
| 平成24年(2012年) | 政府 | 再生可能エネルギーの普及を目的とした「固定価格買取制度(FIT)」が始まりました 。 |
| 令和2年(2020年)10月 | 環境省(小泉環境大臣) | 国立公園内での再生可能エネルギー発電所設置を促す「規制緩和」を表明しました 。 |
| 令和7年(2025年)6月1日 | 釧路市 | 自然環境と調和しない太陽光発電施設の設置を望まないことを表明する「ノーモア・メガソーラー宣言」を発表しました 。 |
| 令和7年(2025年)8月22日 | 釧路市教育委員会 | 太陽光発電事業によるタンチョウなど希少生物への影響を懸念し、文化財保護法に基づき文化庁に意見書を提出しました 。 |
| 令和7年(2025年)8月26日 | 文化庁・釧路市教委 | 釧路市教育委員会が提出した意見書に対し、文化庁が「タンチョウなどへの影響が軽微でない場合、原状回復を命じる可能性もある」との見解を伝えました 。 |
| 令和7年(2025年)8月28日 | 釧路市教育委員会 | 文化庁の見解を記した要請書を、事業者へ郵送しました。この日の午前に事業者に届いたと報じられています 。 |
| 令和7年(2025年)9月4日 | 釧路市 | 太陽光発電施設の設置を許可制とする条例案を市議会に提出しました 。 |
| 令和7年(2025年)10月1日 | 釧路市 | 事業用太陽光発電施設の設置を許可制とする条例が施行される予定です 。 |
おまけ2:なぜ土地の持ち主は太陽光発電業者に土地を売るのか
『原野商法』の被害者が多数存在する
釧路湿原とその周辺は、昭和の時代(昭和40年代後半から昭和50年代(1970年代から1980年代前半))に流行した「原野商法」という詐欺の代表的な舞台となりました。これは、価値のない土地を「将来開発される」と偽って、高値で売りつける手口です。
なぜ釧路湿原が狙われたのか
釧路湿原が詐欺の舞台になった主な理由は、以下の2つです。
- 広大な土地と将来性の虚偽アピール: 当時、釧路湿原は国立公園に指定されたばかりで、観光地としての将来性が期待されていました。詐欺師は、このイメージを利用し、「近くにリゾート施設ができる」「高級住宅地になる」といった嘘の情報を流し、投資家を募りました。広大で手つかずの土地が、かえって魅力的に見えたのです。
- 現地確認の難しさ: 被害者の多くは東京などの大都市圏に住んでおり、遠く離れた釧路の土地を簡単に見に行くことができませんでした。そのため、詐欺師が用意した写真や説明だけで契約してしまうケースが多発しました。
具体的な手口と被害
この詐欺の手口は、巧妙なものでした。
- 「原野」を売りつける: 詐欺師は、道路や水道も通っていないような価値のない土地を、数千万円といった高額で売りつけました。
- 二次被害: 土地を売った後も、「今度は開発費用が必要だ」「固定資産税の支払い代行をする」などと偽り、さらにお金をだまし取る二次被害が横行しました。
多くの人々が財産を失い、社会問題となりました。
騙されて買わされた土地をなんとか売りたい人が多数。そこへメガソーラー業者が相場の10倍の高値で買い付けている。
原野商法で釧路湿原周辺の土地を購入した数は数万件に上ると見られています。現在高齢または亡くなっており、所有者が不明の区画も多数、また、土地の相続を嫌がったり、わずかながら固定資産税を支払う必要もあるため、売却先を探しており、それをメガソーラー業者が高値で買い取るという構図になっています。
2025年6月11日の北海道放送の番組(下記 『釧路市が「ノーモアメガソーラー宣言」とガイドラインを発表』)では、4,000万円でほとんど価値のない(相場200万円~300万円)原野を購入した人の娘さんが、メガソーラー業者に10倍の価格で売却したなどと語り、メガソーラー事業がいかに儲かる商売であるかをうかがわせています。
※政府はソーラー施設導入にかかる費用の3分の1から最大で3分の2を補助金として支給。また、電力会社から電気の買取費用を受け取る形で再エネ賦課金がメガソーラーの発電事業者に渡り、安定した収入を得る仕組みになっています。
おまけ3:ニュース映像で見る釧路湿原のメガソーラー問題【映像】
2024年5月17日 釧路湿原に大量のメガソーラー 自然への影響を懸念
2025年4月4日 釧路湿原が危ない ソーラーパネルが急増
2025年6月11日 釧路市が「ノーモアメガソーラー宣言」とガイドラインを発表
2025年7月24日 新たなメガソーラー計画が浮上。すでに工事が始まる。
2025年8月26日 続報 工事進む。文化庁は調査不十分の場合「原状回復」させることも
釧路湿原メガソーラー問題 HTB北海道ニュース
【最新】2025年9月2日 釧路湿原周辺のメガソーラー建設 道が一部工事中止を勧告 森林法違反で 事業者は「錯誤」と説明
参考:釧路湿原メガソーラー強まる反対 冨永愛さんやつるの剛士さん…野口健さん呼びかけが反響 https://www.sankei.com/article/20250820-RRR7UJ6CRNDZTBO5GEHU3OOHRE/


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