知らないうちに私たちの「一票」に影響を与えるSNSの働き
インターネットが当たり前になった今、選挙も大きく変わってきています。特に、Xやインスタグラム、YoutubeといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、政治家が自分の考えを伝えたり、私たちが選挙について意見を交わしたりする上で、なくてはならない存在になりました。
でも、このSNSが私たちの選挙にどう影響しているのか、考えたことはありますか?過去の選挙を振り返ると、その影響力が少しずつ大きくなっているのがわかります。
SNSが大きな役割を果たした選挙の数々
これまで、いくつかの選挙ではSNSが結果を左右するほどの働きをしました。
2024年に行われた東京都知事選挙では、既存の政党に属さない石丸伸二(前安芸高田市長)候補がSNSを駆使して若者層の支持を集め、蓮舫候補を上回る得票を得て大きな注目を集めました。SNS投稿が「バズった」ことや、YouTubeでの動画が100万回以上再生されるなど、SNSが選挙戦に与える影響力の大きさが示されました。この出来事は、今後の選挙が「ネット地盤」で戦われる可能性を示唆しており、ネット選挙元年とも言われています。
また、2024年11月17日に投開票された兵庫県知事選挙でも、告発文書問題で失職した斎藤元彦前知事が劇的な逆転で再選を果たすなど、SNSが選挙戦に大きな影響を与えていることが改めて確認されました。
2025年6月22日に投開票された東京都議会選挙では、国民民主党や参政党など、今まで議席を持たない政党も多くの議席を獲得しました。また石丸伸二氏が立ち上げた政治団体「再生の道」など既存の政党ではない団体もSNSでの発信を中心に活動して話題となりました。
2025年の参議院選挙でも、SNSで若者を中心に支持を集めた参政党が大躍進するなど、SNSの働きや影響力は年々強まっています。
このように、今やSNSは選挙戦を大きく変える力を持っているのです。
規制強化の動きと「情報流通プラットフォーム対処法」
SNSが選挙に大きな影響力を持つようになったことで、「このままで大丈夫なのかな?」という疑問の声も上がっています。
特に、SNSを通じてウソの情報(フェイクニュース)や、特定の候補者や政党を不当におとしめるような情報が広まることが問題視されるようになりました。
こうした問題を解決するため、日本では「情報流通プラットフォーム対処法」という法律の改正が進められています。これは、SNSの運営会社に対し、フェイクニュースなどの不適切な情報が拡散されるのを防ぐよう求める法律です。
もし、この法律が成立すれば、選挙期間中のSNSの使い方が大きく変わるかもしれません。
「情報流通プラットフォーム対処法」ってなに?
「情報流通プラットフォーム対処法」は、インターネット上の情報について、その責任のあり方を定めた法律です。とくに、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のような、たくさんの人が情報をやりとりする場所(プラットフォーム)が、偽の情報や不適切な投稿が広まるのをどう防ぐべきかを定めています。
この法律は、まだ成立していませんが、政府や政党の間で議論が進められています。目的は、国民の言論の自由を守りながら、選挙を妨害するような悪質な情報や、特定の個人を傷つける情報などから社会を守ることです。
この法律が作られる背景には何があるの?
この法律が議論されるようになった背景には、主に以下の二つの問題があります。
1. SNSでのフェイクニュースや誹謗中傷の拡散
近年、SNS上では事実とは違う情報(フェイクニュース)や、特定の人物を不当におとしめるような情報(誹謗中傷)が、あっという間に広まることが増えました。特に選挙の時期には、こうした情報が有権者の判断に影響を与えてしまう危険性も指摘されています。
2. 海外からの影響や情報操作
海外の政府や組織が、SNSを使って日本の世論を特定の方向に誘導しようとする動きも懸念されています。このような情報操作を防ぐために、政府がSNS運営会社に協力を求める必要性も、議論の一つの焦点になっています。
この法律で何が変わるの?
「情報流通プラットフォーム対処法」は、SNSの運営会社にいくつかの対応を求める内容が検討されています。
- 不適切な情報の監視と削除: SNSの運営会社は、フェイクニュースや誹謗中傷などの不適切な情報を監視し、見つけた場合は削除する責任が求められるかもしれません。
- 情報開示の義務: 裁判所の命令などに基づき、不適切な情報を投稿した人の情報を開示することが義務づけられる可能性があります。
ただし、この法律には慎重な意見もあります。SNS運営会社が不適切な投稿を厳しくチェックすることで、私たち一人ひとりの「言論の自由」が不当に制限されてしまうのではないか、という懸念があるからです。
選挙期間中のSNSの規制に変化はある?
日本ではこれまで、選挙期間中も自由にSNSで応援メッセージなどを投稿することができました。
しかし、もし「情報流通プラットフォーム対処法」が改正されれば、SNS運営会社が不適切な投稿を厳しくチェックするようになります。これにより、私たちのSNSへの投稿が削除されたり、アカウントが停止されたりする可能性も出てきます。
「言論の自由」と「正しい選挙」のバランスをどう取るべきか、難しい問題が議論されているところです。
商業メディアとSNS、情報発信の信頼性を考える
SNSは、誰もが自由に情報を発信できる場です。そのため、一部では収益を目的とした過激な発信や、事実確認(ファクトチェック)が不十分なままの情報が拡散されることに懸念が示されています。
しかし、この問題はSNSだけのものではありません。テレビや新聞などの「オールドメディア」も、報道によってスポンサー企業から利益を得ています。そのため、スポンサーの意向に忖度して特定の視点に偏った報道(偏向報道)を行ったり、都合の悪い情報をあえて報道しない「報道しない自由」といった問題も指摘されています。
SNSだけを一方的に批判する風潮には、注意が必要です。情報が真実かどうか、そしてなぜその情報が発信されているのか、私たちは常に両方のメディアを比較し、多角的に見極める必要があります。
各政党はSNS規制についてどんな立場をとっているのか
ここでは、各政党がこの問題についてどのように考えているかを見ていきましょう。 ※各政党の方針については、各政党ホームページや党首の発言などを元にしています。
- 自由民主党(自民党:保守、中道右派、左傾傾向)
- 自民党は、情報流通プラットフォーム対処法に関して、フェイクニュース対策を強化する賛成の立場です。選挙の公正さを守るため、SNS運営会社に適切な対応を求める必要があると考えています。ただし、表現の自由を不当に制限しないよう、慎重な議論が必要だとも主張しています。
- 立憲民主党(立憲民主党:革新、中道左派、リベラル)
- 立憲民主党は、情報流通プラットフォーム対処法について、SNSの自主的な取り組みを促すことは評価しつつも、政府による検閲につながる可能性を懸念しており、現時点では慎重な姿勢です。フェイクニュース対策は必要としつつも、安易な規制は言論の自由を侵害する可能性があると主張しています。
- 日本維新の会(日本維新の会:保守、右派、リベラル)
- 日本維新の会は、情報流通プラットフォーム対処法について、賛成の立場です。特に海外からの不適切な情報拡散を防ぐためにも、法整備は必要不可欠だと考えています。ただし、個人の表現の自由を最大限尊重するべきだとしており、そのための明確なガイドラインを設けるべきだとも主張しています。
- 公明党(公明党:中道、保守)
- 公明党は、情報流通プラットフォーム対処法について、賛成の立場です。民主主義の根幹である選挙を守るため、フェイクニュース対策は急務であるとしています。SNS運営会社が責任を持って対応するよう促すことで、健全な情報空間を築くことを目指しています。
- 国民民主党(国民民主党:中道、保守、リベラル)
- 国民民主党は、情報流通プラットフォーム対処法について、賛成の立場です。AIによる情報操作や不正確な情報拡散を防ぐため、規制は必要だと考えています。しかし、規制の内容が曖昧だと、言論の自由が損なわれる可能性があるため、その点について慎重な議論を求めています。
- 日本共産党(日本共産党:革新、左派)
- 日本共産党は、情報流通プラットフォーム対処法について、反対の立場です。この法律は、政府に都合の悪い情報をSNSから削除させるための「言論統制」につながる危険性があると考えています。フェイクニュース対策はSNS運営会社や市民が主体的に行うべきであり、国が介入すべきではないと主張しています。
- 参政党(参政党:保守、右派)
- 参政党は、情報流通プラットフォーム対処法について、政府による監視や検閲を招く危険性があるとして反対の立場です。情報の真偽は国民一人ひとりが判断すべきであり、国家権力が情報を統制することは、自由な民主主義に反すると主張しています。
- れいわ新選組(れいわ新選組:革新、左派)
- れいわ新選組は、情報流通プラットフォーム対処法について、反対の立場です。大手メディアが報じない情報をSNSで拡散する機会を奪うことにつながりかねないとして、表現の自由を重視しています。フェイクニュース対策は、より多くの情報を国民が自由に得られる環境を整えることで解決すべきだと主張しています。
- 日本保守党(日本保守党:保守、右派)
- 日本保守党は、情報流通プラットフォーム対処法について、情報統制によって国民の自由な言論が抑圧されることを懸念し、反対の立場です。真偽を判断する力を国民が養うことが最も重要であり、政府が一方的に規制すべきではないと主張しています。
まとめ:選挙におけるSNS規制は私たちの未来をどう変えるのか?
選挙とSNSの関係は、これからますます重要になっていきます。
SNSが選挙を盛り上げ、私たちが政治を身近に感じるきっかけになる一方で、ウソの情報が広まったり、特定の政党に有利な情報ばかりが表示されたりする危険性もはらんでいます。
これから、選挙におけるSNSの使い方は、法律によって大きく変わるかもしれません。
政治家や政党がSNSをどう使うか、そして法律がSNSをどう規制するかは、私たちの未来に直接影響します。
「言論の自由」は大切だけど、ウソの情報にだまされるのはイヤだ。
SNSの規制が強まれば、正しい情報だけが流れるようになるかもしれないけれど、本当に伝えたい意見まで消されてしまう可能性もある。
あなたは、どちらの未来を望みますか。


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