リベラル政党「社会民主党」メッテ・フレデリクセン党首の決断
以前に『保守とか革新とかリベラルとかよくわかんないよね』ということで、各政党の「イデオロギー」(人間の行動を左右する根本的な物の考え方。政党のポリシー)についてお話しました。
今回は「リベラル」と「移民政策」というテーマで、デンマークで政権をとったリベラル政党(中道左派)「社会民主党」について、何がデンマーク国民を動かして支持を集めたのか、日本のリベラル政党との違いは何かということについてお話したいと思います。
リベラルは、「自由」を大切にする考え方で、個人の権利や多様性を尊重することを重視します。日本では、貧富の差をなくすために政府が積極的に動いたり、平和主義や人権を重んじたりする考え方として知られています。
デンマークの「社会民主党」が日本のリベラル政党と違うのは、「国民を守る」という意思を徹底的に明確に打ち出したことでした。
デンマークの「社民主義」は、どんな政治?
デンマークでは、メッテ・フレデリクセン氏が率いる「社会民主党」という政党が、2019年の総選挙以降、政権を担っています。この政党は、貧富の差をなくすことを目指す「社民主義」の考え方を持つ、伝統的な「リベラル」政党です。
「社民主義」ってなに?
「社民主義」とは、資本主義(自由に経済活動を行う社会)の良さを残しながら、社会主義(国が経済活動を管理する社会)のように貧富の差をなくすことを目指す考え方です。
具体的には、以下のような特徴があります。
- 「大きな政府」: 国が国民から高い税金を集めて、教育や医療、年金などの手厚いサービスを提供します。
- 福祉国家: 国民は税金が高い代わりに、病気になっても無料で医療を受けられたり、失業しても手厚い手当がもらえたりします。
- 議会制民主主義: 暴力的な革命ではなく、選挙を通じて国民の代表である政党が政治を行うことを前提としています。
デンマークのような北欧諸国は、この「社民主義」の考え方に基づいて、国民の誰もが安心して暮らせる社会を目指しています。
デンマークと日本のリベラルはどこが違う?
日本のリベラル政党は、一般的に「難民や移民を積極的に受け入れるべきだ」という立場をとることが多いです。しかし、デンマークの社会民主党は、その逆で、とても厳しい移民政策を進めています。
デンマーク社会民主党の厳しい移民政策
メッテ・フレデリクセン政権は、移民や難民の受け入れを厳しく制限する政策を次々と実行してきました。
- 国境管理の強化: 難民申請者が自国の国境に来ることを防ぐための厳しい対策を行いました。
- 国外への移送: 難民申請をデンマーク国外で行うように促す法律を作るなど、自国での受け入れ数を減らそうとしています。
- 受け入れ人数の制限: シリアやイランなどからの難民受け入れ数を大幅に減らしました。
こうした政策は、手厚い福祉制度を維持するためには、移民や難民の受け入れを制限する必要がある、という考えに基づいています。デンマークでは、多くの国民が「社会保障の負担を公平に分かち合うためには、移民は制限すべきだ」と考えているのです。
なぜ、このような違いが生まれるの?
日本とデンマークのリベラル政党の移民政策が大きく違うのには、それぞれの国の社会や歴史が大きく関係しています。
1. デンマークの「福祉国家」モデルを守るため
デンマークは、国民一人ひとりが高い税金を負担することで、誰もが安心して暮らせる社会保障制度を築き上げてきました。このシステムは、国民がお互いに信頼し、全員で社会を支えようとする強い意識の上に成り立っています。
しかし、大量の移民を受け入れた場合、すぐには高い税金を払えず、社会保障制度に頼る人が増えたりして、この福祉システムが維持できなくなるのではないかという懸念があります。そのため、「社会保障を公平に分かち合う仲間」を慎重に選ぼうという考え方が、リベラル政党からも出ているのです。
2. 労働市場に対する社会の考え方の違い
デンマークでは、「フレキシキュリティ」と呼ばれる、社会全体で労働者を守る仕組みが特徴的です。企業は簡単に労働者を雇ったり解雇したりできますが、失業者は手厚い手当や再教育の機会を得られます。
この仕組みは、全員が働き手として社会に参加し、高い生産性を維持できることを前提としています。このため、移民に対しても、すぐにこのシステムに貢献できる人材かどうかを厳しく見極めようとする傾向があります。
一方、日本では、少子高齢化によって介護や建設、農業といった分野で人手不足が深刻になっています。日本のリベラル政党は、こうした人手不足を解消するために、外国人労働者を積極的に受け入れることが、経済を維持するために必要だという考えを打ち出しています。
各政党の「リベラル」思考と移民に対する考え方
日本の政党も、それぞれ異なる考え方を持っています。これらの情報は、各政党の公式ホームページの政策や公約、党首の発言などに基づいています。
自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)
自民党は、伝統や文化を重んじる保守的な考え方を基本としています。そのため、移民政策についても、社会への影響を考慮しながら、慎重に進めるべきだという立場です。ただし、近年は人手不足に対応するため、外国人労働者の受け入れを拡大する現実的な政策も進めています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
立憲民主党は、個人の尊厳を何よりも大切にするリベラルな考え方を掲げています。この立場から、移民政策についても、難民を人道的な観点から積極的に受け入れることや、多文化共生社会の実現を目指す方針です。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
維新の会は、行政改革など「小さな政府」を目指すリベラルな側面と、国の安全や教育を重視する保守的な側面を併せ持っています。移民政策については、経済的なメリットを考えた上で受け入れを進めるべきだという立場ですが、同時に治安維持などにも配慮すべきだとしています。
公明党(中道、保守)
公明党は、福祉や教育の充実を重視する一方、保守的な考え方も持っています。外国人との共生社会を目指す立場ですが、その受け入れについては、社会への影響を考慮しながら、段階的に進めるべきだと考えています。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
国民民主党は、「生活者起点」を掲げ、国民一人ひとりの暮らしを支えることを重視しています。この考えから、日本の労働力不足を補うための外国人材の活用には積極的ですが、同時に社会保障制度への影響なども考慮して、現実的な議論を求めています。
日本共産党(革新、左派)
共産党は、格差のない社会の実現を目指す立場です。人権や平等を重んじる考えから、難民受け入れや外国人労働者の権利擁護にも積極的な姿勢を示しています。
参政党(保守、右派)
参政党は、日本の伝統や文化を何よりも大切に考える保守的な政党です。移民によって日本の文化や社会が維持できなくなることへの懸念から、移民政策については、非常に厳しい制限を設けるべきだという考え方を持っています。
れいわ新選組(革新、左派)
れいわ新選組は、弱い立場にある人々に寄り添う政治を目指しています。人権や多様性を重視するリベラルな考え方から、難民や移民の受け入れについても、人道的な観点から、より柔軟な対応を求めています。
日本保守党(保守、右派)
日本保守党は、日本の国益や伝統文化を最優先に考える保守的な政党です。このため、移民政策には、日本の社会や文化が破壊されることへの強い危機感を持ち、受け入れには極めて慎重な立場をとっています。
社会民主党(社民党:革新、左派)
社民党は、平和主義と社会福祉、そして基本的人権の尊重を掲げる、伝統的な革新政党です。この考え方に基づき、移民政策については、人道的な観点から難民や外国人労働者の権利を守り、受け入れを積極的に行うべきだという立場をとっています。
まとめ:あなたの「リベラル」は、どんなかたち?
「リベラル」という言葉には、国によってさまざまな意味があることがわかります。特に、難民や移民の受け入れをめぐる考え方では、同じ「リベラル」でも、全く違う方向を向くことがあるのです。
これは、「自由」を重んじるリベラルが、「誰の自由を、どこまで守るか」という難しい問題に直面していることを示しています。
デンマークの特徴は、「人間の自由」というリベラルな考え方の中に、「国民の生活を守る」という保守的・右派的な大前提を入れたことで人気を博していることがわかりました。
皆さんは、日本の社会において、どんな「リベラル」な考え方が大切だと思いますか?そして、それはどのような社会につながっていくと思いますか?


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