壁?壁?壁?壁?働き方って難しい

税金と社会保障

わたしたちの暮らしを縛る「税制の壁」を考えます

働き方を悩ませる「税制の壁」とは

パートやアルバイトで働く人が、「これ以上給料を稼ぐと、かえって手取りが減ってしまう」と感じる境目のことを「壁」といいます。この「壁」のせいで、働く時間をわざと減らしたり、仕事をセーブしたりする人がたくさんいます。特に世帯主の扶養家族になっている主婦や大学生などが扶養からはずれてしまうと世帯主の手取りも減ってしまうため、一家の深刻な問題になってしまいます。

働く意欲があるにもかかわらず、給料を増やすことをためらってしまう。この問題が、人手不足に悩む日本の社会をさらに難しくしています。

日本が直面している「税制の壁」

1. 所得税の壁

これまで「103万円の壁」と呼ばれてきた、所得税がかかり始める境目は、自民党、公明党、国民民主党の幹事長合意によって、年収178万円までなら所得税がかからないようにする方針が決まりました。

しかし、与党が最終的に出してきた対策は、当初の現役世代の手取りを増やすという趣旨からは大きくはずれたものとなりました。

具体的には、年収200万円以下の給与所得者については、所得税がかからない上限が実質的に160万円まで引き上げられます。一方、年収200万円から850万円までの給与所得者(現役世代はほぼここ)には、2年間限定で基礎控除(きそこうじょ)が上乗せされるという、一時的な減税措置がとられることになりました。

また、大学生年代(19歳以上23歳未満)の子供を扶養している場合、世帯主は特定扶養控除として、63万円の控除を受けることができますが、その大学生の子が103万円以上稼いでしまうとこの控除がなくなるため、「もうひとつの103万の壁」と言われていました。今回の改正で大学生も150万円までは扶養からはずれないようになっています。

2. 社会保険の壁(扶養から外れる壁)

社会保険には、給料の金額で扶養から外れる境目がありました。そうなると、自分で社会保険料を払うことになり、手取りが減ってしまうため、働くのをためらう人が多くいました。

そもそもこの壁には、主に2つの種類がありました。

  • 106万円の壁: 従業員が51人以上の会社で働く人が、年収が106万円以上になると、会社の社会保険に加入しなければいけないというルールです。2026年10月にこの年収の境目は撤廃される方針です。年収に関係なく、これまでの条件(週20時間以上の労働時間など)を満たせば、社会保険に加入できるようになります。
  • 130万円の壁: 会社の規模に関係なく、年収が130万円以上になると、配偶者の扶養から外れてしまうというルールです。しかし、一時的に年収が130万円を超えても、扶養からはずれないようにする特別な対策が始まっています。
社会保険の「扶養」ってなに?

社会保険とは、主に健康保険厚生年金のことを指します。これらは別の制度ですが、会社で働く人はセットで加入することが一般的です。

社会保険の「扶養」とは、家族の誰かが会社で入っている健康保険と厚生年金に、自分で保険料を払わずに一緒に入ることができる仕組みです。給料が増えて「壁」を超えると、この扶養から外れて、自分で保険料を払うことになります。

社会保険への加入が年金受給額を増やす?

年金制度には、日本に住む20歳以上の人がみんな入る国民年金と、会社で働く人が入る厚生年金の2種類があります。

これまでの制度では、扶養に入っていた人は自分で厚生年金の保険料を払っていませんでした。そのため、将来もらえる年金は国民年金のみで、金額が少ないのが現状です。

「106万円の壁」が撤廃されると、これまで扶養に入っていた人も、厚生年金に加入して保険料を納めるようになると、将来もらえる年金は国民年金に加えて、この厚生年金分が上乗せされます。これが、「より多くの人が将来の年金受給額を増やせる」ということにつながるのです。

3. 150万円の壁

これは、配偶者控除(はいぐうしゃこうじょ)が受けられる境目です。配偶者の年収が150万円を超えると、控除の金額が段階的に減っていき、最終的には控除がゼロになります。この仕組みは現在も続いています。

各政党が考える「税制の壁」の乗り越え方

日本の働き方を縛る「壁」をどうするか、各政党でいろいろな考え方があります。ここでは、各政党の公式ホームページや発言をもとに、それぞれの立場をわかりやすく紹介します。

自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向) 「壁」を気にせず働けるように、国として対策を進めるべきだと考えています。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル) 「壁」そのものをなくすために、社会保険のルールを根本から変える必要があると主張しています。

日本維新の会(保守、右派、リベラル) 税金や社会保障の制度全体を見直すことで、国民の負担を減らし、働きやすい社会をつくることを目指しています。特に社会保険料の引き下げを訴えています。

公明党(中道、保守) 働く時間が短い人への支援を強化することで、「壁」を超えても手取りが減らないようにする対策を積極的に進めています。

国民民主党(中道、保守、リベラル) 「壁」をなくすための税制改革を主張し、与党との話し合いで「103万円の壁」の引き上げを主導しました。まだ幹事長同意は果たされていないとして、引き続き178万円への引き上げを訴えています。

日本共産党(革新、左派) 「壁」をなくすために、会社がもっと社会保険料を負担するべきだと考えています。

参政党(保守、右派) 国民の働く意欲をなくす「壁」は、根本的な税制改革でなくすべきだと主張しています。

れいわ新選組(革新、左派) 最低賃金を大きく上げて、「壁」を気にせず働けるようにするべきだと考えています。

日本保守党(保守、右派) 「税制の壁」は国民を苦しめるものだとして、消費税をなくすなど、抜本的な改革を主張しています。

読者への問いかけ

もし「税制の壁」がなくなれば、わたしたちは収入を気にせず自由に働けるようになるかもしれません。しかし、その一方で、社会全体で支え合うための保険料の負担は、今よりも増えることになります。

働くことを選ぶ自由と、みんなで支え合う仕組み。この二つのバランスをどう取っていくべきか、皆さんもぜひ考えてみてください。

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