パレスチナってどんなとこ?
パレスチナ国家の承認について考える前に、まずはパレスチナという場所がどうやってできたのか、歴史を簡単に見ていきましょう。
パレスチナは、中東にある地中海に面した地域の名前です。古くからユダヤ人とアラブ人が住んでいましたが、第一次世界大戦で、それまで支配していたオスマン帝国が敗北し、イギリスがこの地域を治めることになりました。
このとき、イギリスは三つの異なる相手に、互いに矛盾するような約束をしていました。この、いわゆる「三股(さんまた)外交」と呼ばれる約束が、のちのパレスチナ問題の複雑な始まりとなりました。
一つ目は、アラブ人に対して、オスマン帝国に反乱を起こせば独立を支援すると約束した「フセイン・マクマホン協定(1915年)」です。
二つ目は、フランスと秘密裏に、パレスチナを含む中東の土地を分け合う約束をした「サイクス・ピコ協定(1916年)」です。
そして三つ目は、ユダヤ人に対して、パレスチナにユダヤ人のための「民族的郷土(みんぞくてききょうど)」を建設することを支持すると約束した「バルフォア宣言(1917年)」です。
こうしたイギリスの複雑な思惑(おもわく)が、アラブ人とユダヤ人の間に大きな溝(みぞ)を生むことになりました。 その後、1948年にイスラエルが建国され、それまでこの地に住んでいた多くのアラブ系パレスチナ人が土地を追われ、難民(なんみん)となってしまいました。 この問題を解決するため、国連はイスラエルとパレスチナという二つの独立した国家を共存させる「二国家解決」という考え方を提唱してきました。
「二国家解決」ってどういうこと?
「二国家解決(にこっかかいけつ)」とは、イスラエルと、将来独立するパレスチナという二つの国家が、お互いを認め合い、平和に共存していくことを目指す考え方のことです。
この考え方は、古くは1947年の国連決議にまでさかのぼります。国連は、パレスチナの土地をユダヤ人国家とアラブ人国家に分けて、それぞれが独立して平和に暮らすことを提案しました。 しかし、解決には多くの難しい問題が山積みになっています。
たとえば、境界線の問題です。イスラエルがどこまでを自国の領土とし、パレスチナがどこまでを領土とするのか、両者が納得できる境界線を決めることが非常に困難です。 また、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であるエルサレムを、どちらの国の首都とするかというエルサレムの帰属(きぞく)問題も、双方にとって決して譲れない課題となっています。
さらに、イスラエルがパレスチナ人の土地に、ユダヤ人入植地をどんどん広げているため、パレスチナ国家を建てるための土地が分断され、小さくなっています。 長年の紛争で家を追われた多くのパレスチナ難民が、自分たちの故郷に戻る権利(帰還権)を主張していることも、解決を難しくしています。
これらの問題が解決しない限り、「二国家解決」の実現は難しいと言われていますが、国際社会のほとんどの国が、中東和平を実現するための最も現実的な方法だと考えています。
なぜ今、パレスチナ国家の承認が世界で議論されているの?
イスラエルとパレスチナの間では、過去に何度も紛争(ふんそう)が起きてきました。 特に、最近はガザ地区(がざちく)での軍事衝突が激化し、たくさんの人たちが命を落としたり、住む場所を失ったりしています。 この悲惨な状況を見て、国際社会では「これ以上人々の犠牲を増やすべきではない」という声が強まりました。
このため、これまでパレスチナ国家の承認に慎重だったヨーロッパの国々が、相次いで承認を決め始めました。 2025年には、スペイン、アイルランド、ノルウェーが、パレスチナ国家を正式に承認しました。 これらの国は、「二国家解決」の実現を後押しし、紛争を終わらせるための具体的な行動として、パレスチナ国家の承認が必要だと考えているのです。
国家として承認されるとどうなる?
ある国が正式に国家として承認されると、それは国際社会のメンバーとして認められることになります。具体的には、次のようなことが可能になります。
- 国際機関への参加: 国連(こくれん)の正式なメンバーとして、総会などで発言権や投票権を持つことができます。
- 外交関係の樹立: 他の国と大使館を設置したり、正式な外交官を派遣したりすることができます。
- 国際法上の権利: 自国の領土や国民を国際法で守る権利を持つことができます。
- 経済的な影響: 外国からの投資(とうし)や援助(えんじょ)を受けやすくなり、経済発展(けいざいはってん)の道が開かれます。
パレスチナにとって、国家承認はただ名前を認められるだけでなく、自分たちの国を国際社会の一員として守っていくための重要な一歩なのです。
国家として認められるには誰が承認すればいいの?
世界には、「どの国が承認すれば正式な国家と認められる」という決まったルールはありません。 しかし、一般的には、以下の条件を満たし、国際社会の多数の国、特に大きな影響力を持つ国々から承認されることが重要だと考えられています。
- 国家の三要素を持っていること:
- 国民: 独立した国家に住む人々がいること
- 領域: 誰がどこまでを国の土地とするか、決まっていること
- 実効的な政府: その土地と人々を実際に治めることができる政府があること
パレスチナは、これらの要素をすべて完璧に満たしているとは言えないため、承認をためらう国もあります。
- 国連への加盟:
- 国連総会で正式な加盟国として承認されれば、それが国際社会に広く受け入れられている証(あかし)となります。 しかし、国連に加盟するには、安全保障理事会(あんぜんほしょうりじかい)の承認が必要です。
- この理事会には、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国という五つの常任理事国があり、そのうちの一つでも反対すれば(拒否権(きょひけん)の行使)、加盟はできません。
- 現在、パレスチナは国連総会で「オブザーバー国家」という地位を得ていますが、正式な加盟国ではありません。これは、アメリカが拒否権を行使しているためです。
つまり、世界で正式な国家として広く認められるには、国連の正式な加盟国となること、そしてアメリカやG7(主要7カ国)のような影響力のある国々から承認を得ることが、非常に重要な鍵となるのです。
承認を進める国々とその理由
世界には、すでに140カ国以上がパレスチナ国家を承認しています。 これらの国は、パレスチナの人々の民族自決(みんぞくじけつ)の権利、つまり自分たちの未来を自分たちで決める権利を尊重(そんちょう)すべきだと考えています。
特に中南米やアフリカの国々、そして最近承認したヨーロッパの国々は、国際的な平和と公正(こうせい)を守るために、パレスチナを正式な国家として認めるべきだと主張しています。 彼らは、承認がイスラエルとパレスチナの対等な対話(たいわ)を促し、和平(わへい)につながると期待しています。
国家として承認されればその国に大使館を置いたり大使を派遣したりすることが可能になります。パレスチナは、すでに140カ国以上から国家承認を受けているため、多くの国に「大使館」やそれに準ずる「代表部」などを設置し、外交活動を行っています。
承認に慎重な国々とその理由
一方で、承認に慎重な国もたくさんあります。 イスラエルは、自国の安全保障(あんぜんほしょう)が脅かされるとして、パレスチナ国家の承認に強く反対しています。
アメリカも承認には慎重で、イスラエルとパレスチナが直接交渉(こうしょう)して、お互いが納得できる形で和平合意(わへいごうい)を結ぶことが重要だと考えています。 アメリカは、承認が和平交渉を妨(さまた)げ、かえって紛争を悪化させる可能性があると主張しています。
日本はどうする?承認したらどうなる?
日本政府はこれまで、パレスチナの人々への支援を続けつつも、国家承認については「二国家解決を支持するが、承認の時期は慎重に判断する」という立場をとってきました。 では、日本がパレスチナを国家として承認した場合、どのようなことが起きるでしょうか。
承認した場合と、しなかった場合
承認した場合 中東の国々や国際社会からは歓迎され、日本の中東における信頼感は高まります。 しかし、イスラエルやアメリカとの関係が悪化する可能性もあり、日本の外交は難しいかじ取りを迫られることになります。
承認しなかった場合 これまでどおりアメリカなどと足並みをそろえることができますが、最近の国際的な流れからは少し遅れをとることになります。 中東諸国やパレスチナの人々からは、日本の態度が消極的だと見られるかもしれません。
保留を続けた場合 これまでの日本の外交方針を継続することになります。 アメリカや他の主要先進国との協調を保つことができますが、一方で、パレスチナや中東諸国からは、日本の態度が消極的だと見られ、国際社会の流れからも取り残された印象を与えます。
日本は、どの選択肢をとっても、メリットとデメリットがある難しい状況に立たされています。
各政党が考えるパレスチナ問題
各政党のホームページや党首の発言、公約などから、パレスチナ問題に関する考え方を見ていきましょう。
自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向) 政府の方針を基本的に支持しています。パレスチナの人々への人道支援(じんどうしえん)を続けつつ、パレスチナ国家の承認については、和平交渉の進展(しんてん)を見守りながら慎重に判断すべきだという立場です。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル) イスラエルとパレスチナの共存を可能にする「二国家解決」を支持しています。ガザ地区の人道危機には、国際的な協調(きょうちょう)のもとで日本の役割を拡大し、積極的な外交で和平交渉を後押しすべきだと主張しています。
日本維新の会(保守、右派、リベラル) 具体的な政策は明記されていませんが、党として日本の国益(こくえき)を最優先する姿勢から、政府のこれまでの慎重な判断を支持する可能性があります。
公明党(中道、保守) パレスチナ問題の解決に向けて、和平交渉の再開を強く求めています。長年にわたるパレスチナへの支援を続けており、国際的なルールに基づいた平和的な解決を重視しています。
国民民主党(中道、保守、リベラル) 具体的な政策は明記されていませんが、現実的な外交を重視する立場から、政府方針に近い考え方をとると考えられます。
日本共産党(革新、左派) パレスチナの独立国家承認に賛成しており、日本もただちに承認すべきだと主張しています。イスラエルを強く批判し、国連決議に基づいた公正な和平解決を求めています。
参政党(保守、右派) 具体的な政策は明記されていませんが、自国の安全保障や国益を最優先する姿勢から、パレスチナ問題をめぐる国際的な動きを慎重に見極める立場をとると考えられます。
れいわ新選組(革新、左派) パレスチナの人々の人権(じんけん)を守るべきだと強く訴えています。イスラエルへの軍事的な支援をやめるよう求め、日本もパレスチナの人々への支援を強化すべきだと主張しています。
日本保守党(保守、右派) 具体的な政策は明記されていませんが、日本の国益を重視する立場から、パレスチナ問題における日本の役割について、慎重な検討を求める可能性があります。
まとめ
パレスチナ国家の承認は、国際社会が抱える大きな課題の一つです。 承認を進める国が増える中、日本はどちらの道を選ぶべきか、難しい決断を迫られています。
この問題は、中東の安定だけでなく、日本の将来の外交にも大きな影響を与える可能性があります。 みなさんは、日本がパレスチナ国家を承認すべきだと思いますか、それとも慎重になるべきだと思いますか。


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