ホテルの浴槽や路上に大便?なぜそんなことが起きてしまうの?
新型コロナウイルスの流行が落ち着き、再び多くの人が日本を訪れるようになりました。特に中国からの旅行客は、日本の観光や経済にとって大切な存在です。
しかし、一部の中国からの旅行客が、世界中のホテルや公共の場所でマナーを守らないという問題が、以前からずっと議論されてきました。今回は、なぜこのような問題が起きるのか、そしてそれに対して日本社会や政治はどう考えているのかを見ていきましょう。
各国で報告された迷惑行為
中国からの旅行客によるマナーの問題は、特にSNSやインターネット上でたくさん報告されています。たとえば、ホテルの従業員からは、ホテルの浴槽やベッドの上に大便があったり、トイレットペーパーを丸ごと持ち帰ったりといった驚くべき事例が報告されました。こうした事例は日本だけでなく、世界中のホテルで話題になっています。
スウェーデン発祥の家具量販店であるイケアの店舗で、床に排便が放置されていることが社会問題になりました。この問題に対して、店員さんが清掃に追われる様子がメディアで取り上げられたりもしています。
もちろん、これらはすべての中国からの旅行客に当てはまるわけではありませんが、一部の人たちの行動が原因で、多くの人が困ってしまう結果になってしまいました。では、世界の主要国でどのような事例があったのか、詳しく見ていきましょう。
スウェーデンの事例
スウェーデンでは、中国人観光客向けに下のような番組を作り、国営テレビで放送しました。よほど困っているようです。
誇り高き中国人のみなさま、ようこそ。文化の差による衝突を避けるコツをお伝えします。
・例えば、歴史的建造物の外ではうんこをしません。
・もし誤って手にうんこがついてしまった場合、スウェーデンでは手を洗う習慣があります。
・もし犬を連れて歩いている人がいたら、それはランチ用に購入したわけではありません。
・スウェーデンではナイフとフォークを使って食事します。
・私たちはテーブルに座りながらうんこをしません。
アメリカでの事例
アメリカでは、中国からの旅行客がヨーロッパを旅行中に、公共の場で大声を出したり、痰を吐いたりといったマナー違反を繰り返しました。その記録が残っていたため、10年間有効だったアメリカのビザが無効にされ、入国を拒否された事例が報告されています。
また、イエローストーン国立公園では、中国人客がトイレの使い方を知らず、排泄物をそのまま放置するといった問題が頻繁に起こり、現地のメディアでも取り上げられました。さらに、公園のルールを無視して、野生のバイソンに近づいて自撮りをするなど、危険な行動をとる観光客も問題になりました。
イタリアでの事例
観光大国イタリアでは、中国人客のマナーの悪さに困惑する声がたびたび上がっています。観光客を乗せたゴンドラの上で、中国人客のグループが立ち上がって自撮りをしようとした結果、バランスを崩してゴンドラが転覆してしまうという出来事がありました。
また、ローマの有名な観光名所であるスペイン広場では、座ることや飲食が禁止されているにもかかわらず、中国人客がごみを散らかす、大声で話すなどの行為を繰り返しました。これらの問題が原因で、観光公害(観光客の増加が原因で、環境や地元の人々の生活が悪化すること)対策として、座ること自体に罰金が科される厳しい条例が作られるきっかけの一つにもなっています。
オーストラリアでの事例
オーストラリアでも、中国本土からの旅行客によるマナーの問題は以前からたびたび話題になっています。特にSNSなどでは、公共の場での大声や痰吐き、ポイ捨て、列に割り込むといったマナー違反が報告されています。
これに対して、2013年には中国政府の副首相が、自国の旅行客に向けて「マナーの悪い行為は国家のイメージを損なう」と異例の注意喚起を行うほどでした。
韓国での事例
韓国の観光地でも、中国人客による迷惑行為が問題になっています。済州島(チェジュとう)にあるコンビニエンスストアでは、中国人客が会計後に小銭を店員に投げつけたことが原因でトラブルになり、一時期「中国人出入り禁止」の張り紙がされたこともありました。また、ソウルの飲食店では、店内で喫煙する中国人女性観光客を店員が注意しても無視したことが問題となり、現地のメディアで大きく報じられました。
日本で報告されている中国人観光客のマナー問題
日本でも、中国からの観光客によるマナーの問題がたびたび報告されています。以下に、特にSNSやニュースなどで話題になった具体的な事例を紹介します。
1. トイレの利用に関する問題
ホテルや公共施設で、便座に土足で上がってしゃがむ、トイレットペーパーを大量に持ち帰る、使用済みのものをそのまま放置するなどの行為が報告されています。また、前述のようにホテルの浴槽やベッドの上、路上で排泄するなどもあり、これは中国の農村部などで見られる習慣が原因とされています。
2. 公共の場での迷惑行為
- 「横入り」: 以前に、家電量販店やドラッグストアで商品を大量に購入する「爆買い」がブームになりましたが、その際にもレジの列に並ばず横入りしたり、大声で話したりする姿が報道などで問題視されました。現在でも飲食店や店舗などで多数報告され問題となっています。
- 騒音問題: 飲食店やホテルで大声で会話したり、夜中に廊下で騒いだりといった騒音問題が報告されています。これは、中国では家族や親しい友人との会話が大声になる傾向があるため、文化的背景からくるものとされています。
- ごみのポイ捨て: 公共の場で、食べ物の容器やタバコの吸い殻を平然とポイ捨てする行為も問題になっています。
3. 観光地でのルール違反
- 自然公園での立ち入り禁止区域への侵入: 富士山などの自然公園で、景観保護のために設けられた立ち入り禁止区域に無断で侵入し、注意されても無視する観光客が問題になりました。
- 桜の木を揺らす行為: お花見の時期に、桜の花を落とすために木を揺らす観光客がSNSで拡散され、大きな批判を浴びました。
これらの事例は、日本と中国の文化や習慣の違いからくるものが多く、受け入れ側としてはどう対応すべきか、社会全体で考えるきっかけとなっています。
アパホテルが中国人の排除に成功?

アパホテルというホテルチェーンが、中国人の宿泊を断っているなどの報道がありましたが、これば事実ではありません。しかし、中国人が宿泊しないホテルになっていることは事実です。なぜこんなことになったのでしょうか、また、世間の評価はどうなのでしょうか。
この問題は、2017年、アパホテルの客室に置かれていた、ホテル経営者が書いた本が原因でした。この本には、過去の歴史に関する特定の主張、具体的には「南京大虐殺はなかった」という立場が書かれており、それは中国政府の立場と対立するものでした。アパホテルに宿泊した中国人旅行客が激しく怒り、SNSで拡散されたこの本の情報は7700万再生という大きな炎上へと発展したのです。
中国政府もこの問題に反応し、中国からの旅行客に対してアパホテルを利用しないようにと呼びかけ、SNS等でもアパホテルに謝罪と本の撤去を求める発言が相次ぎました」。その結果、多くの中国人客が予約をキャンセルする事態になりました。
この騒動を受けてアパホテルは記者会見を開きました。誰もが謝罪すると思っていた会見で、ホテル経営者は「本の内容は撤回しない」と発言し、部屋に置き続けることを明言。一切の謝罪も拒否しました。
しかし、この騒動は意外な結末を迎えます。中国人客が激減したことで、ホテル側は客室の清掃などにかかる施設維持費用が30%も減り、また、ホテルを利用する海外客や国内客も「静かに落ち着いて過ごせるようになった」と好評で、リピート率(一度宿泊した客が次回の旅行でも利用する率)も上がったため、利益は少なくなるどころか、2017年の決算は1,161億円、経常利益350億円と過去最高となりました

その後のコロナ禍では率先して療養施設として部屋を提供するなど社会貢献を行い、また、大浴場の前には「戸籍が女性でも身体的特徴が男性の方は女湯に入れません」という看板を出したことも称賛を集め、信念を貫く企業という印象を与えました。2024年には売上高2,260億円、経常利益796億円を計上し、2期連続で過去最高の業績を更新しています。
この出来事は、中国人客に頼りすぎる日本の観光業界の課題を浮き彫りにしたともに、現代の企業経営の新しい可能性を示す事例となりました。
日本の政治家たちはどう考えているの?
今回のテーマについて、日本の各政党がどのような考えを持っているのか見ていきましょう。各政党の方針については、各政党の公式ホームページや発言をもとに作成しています。なお、この問題に関する直接的な法案は提出されていませんが、各党の一般的な立場をまとめました。
自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向) インバウンド(訪日外国人旅行)は日本の経済を元気にするために大切だと考えています。その一方で、外国人観光客と地元の人たちが、気持ちよく共存できる環境づくりを重視しています。マナーの問題については、公共の場でのルールを明確にし、多言語で啓発活動を行うことで、双方の理解を深めることを目指しています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル) 外国人観光客のマナー問題や、日本の文化や習慣との違いから生じるトラブルには、対話と理解が大切だと考えています。マナーを一方的に押し付けるのではなく、なぜそのルールが必要なのかを丁寧に説明することや、外国人向けの公共施設の整備を訴えています。
日本維新の会(保守、右派、リベラル) 海外からの観光客を受け入れるにあたって、日本の文化や社会が混乱しないように、法整備やルール作りを柔軟に進めるべきだと考えています。マナーを守らない人たちへの罰則も検討しつつ、観光客が安心して日本を楽しめる環境作りも大切だと主張しています。
公明党(中道、保守) 外国人観光客と地域住民が友好的に交流できる社会を目指しています。マナーの問題については、多文化共生(たぶんかきょうせい)の視点から、お互いの文化を尊重し合うことが大切だと考えています。トラブルが起きないように、通訳サービスや案内標識を充実させることも重要だと訴えています。
国民民主党(中道、保守、リベラル) 訪日観光客が増加する中で、マナーの問題も起こっていると認識しています。この問題の解決には、データの収集と分析が必要だと考えており、その結果に基づいて効果的な対策を立てることを目指しています。観光客の満足度向上と、地域社会の負担軽減を両立させる政策を進めるべきだと主張しています。
日本共産党(革新、左派) 外国人観光客との共存には、文化の違いを乗り越える努力が必要だと考えています。マナーの問題が一部で起こっていることは事実ですが、一部の行動で全体を判断することは避けるべきだとしています。すべての人々が安心して暮らせる社会を目指すためには、適切な情報提供と理解を深めることが大切だと主張しています。
参政党(保守、右派) 日本の文化や伝統を守ることを最優先に考えています。外国人観光客が増える中で、日本の社会の秩序が乱れることについては懸念を示しており、マナーを守らない旅行客に対しては、より厳しい対応を求めるべきだと考えています。
れいわ新選組(革新、左派) 外国人観光客のマナー問題は、受け入れ側の体制が不十分であることも原因の一つだと考えています。例えば、ゴミ箱が少なかったり、トイレの場所がわかりにくかったりといった、日本側の課題を解決することが重要だと訴えています。
日本保守党(保守、右派) 日本の主権と文化を守ることを第一に考えています。外国人観光客によるマナーの問題や公共の場での迷惑行為は、日本の社会を軽んじていることにつながると見ており、厳格な法執行や、入国審査の見直しを求めるべきだと主張しています。
まとめ:みんなで考える旅行とマナー
中国からの旅行客によるマナーの問題は、社会で様々な議論を巻き起こしました。しかし、これらの問題は中国からの旅行客だけに限ったことではありません。世界中のどの国の人たちにも、旅行先でのマナーが求められます。
日本の政党も、それぞれ異なる視点からこの問題を見ています。社会のルールを厳しくするべきだという考え方もあれば、文化の理解やインフラの整備を進めるべきだという考え方もあります。
観光客と地元の人たちが、お互いに気持ちよく過ごせる未来を作るために、私たちはどうすればいいのでしょうか。


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