平和の祈りの場を汚す迷惑なデモの現状
毎年8月6日に広島、8月9日に長崎で行われる原爆慰霊祭は、亡くなった方々を悼み、世界平和を祈る大切な式典です。しかし、この神聖な場所で、毎年決まったように大音量を響かせるデモ隊が現れ、問題になっています。
「なんで平和を願う日にわざわざ邪魔をするんだろう?」と、不思議に思うかもしれません。このデモは一体何が目的なのでしょうか。そして、なぜ警察は厳しく取り締まることができないのでしょうか。今回は、このデモの背景と、私たちが知っておくべきことについて考えてみましょう。
毎年繰り返される迷惑デモ
原爆慰霊祭の妨害デモは、長年にわたり行われています。広島では、式典が始まる前から大音量のスピーカーを使い、特定の政治的主張を叫ぶため、静かに祈りたい遺族や参列者は、その騒音に悩まされています。デモ隊は早朝5時にはもう騒ぎ始めており、夜が明ける前から安らかに眠ることができない住民もいるほどです。
デモに参加している人々の多くは、特定の政治的な思想を持つ団体や個人です。彼らが掲げる主張は多岐にわたりますが、主に以下のようなものがあります。
- 反戦・反核を訴えるグループ:
- 一部の過激な反戦・反核団体は、平和記念式典のあり方を批判したり、政府の政策に反対したりするためにデモを行います。彼らは、式典が「形だけのイベントになっている」と批判しています。本当は、もっと強い力で戦争や核兵器に反対するべきなのに、それができていないと訴えているのです。そのため、式典とは別に、より直接的な形で抗議の意思を示そうとします。
- 教師が中心の労働組合である日教組の旗が見られることもあります。彼らの主張の根幹には、「教え子を再び戦場に送るな」という強い思いがあります。これは、日教組が結成された当初から掲げてきたスローガンで、戦争の悲惨さを知る世代が、二度と同じ過ちを繰り返さないために教育の現場から平和を訴えていこう、という決意が込められています。彼らは、式典を「形だけのもの」にせず、もっと具体的な平和への行動を政府に求めるためにデモを行うと主張しています。
- 特定の政治家や政府への批判:
- このデモに参加している一部の人々は、特定の政治家や政府の政策に強く反対していて、その気持ちをデモで訴えようとします。原爆慰霊祭のような多くの人が集まる場所は、彼らにとって、自分たちの主張をより多くの人に聞いてもらうチャンスだと考えているようです。
- たとえば、過去には安倍晋三元首相が殺害されたとき、彼の外交政策や憲法改正の考え方に反対するデモ隊が、「安倍は殺されて当然」といった非常に過激な言葉を叫んだことがありました。
- また、日本の軍事的な力の強化を目指す政府の動きを批判し、「平和主義に反する」と訴えるデモもあります。彼らは、原爆の悲劇を繰り返さないためには、政府の今のやり方を変える必要があると信じていて、そのために強い言葉を使って抗議しているのです。
- 歴史認識に関する主張:
- 彼らは、原爆投下を「戦争を早く終わらせるためのやむを得ない手段」だったと考えています。これは、日本の無条件降伏を促すことで、長引く戦争によってさらに多くの犠牲者が出るのを防いだという見方に基づいています。
- 彼らは、ただ原爆の悲劇を悼むだけでなく、「原爆投下の正当性」や「戦争の責任」についても議論すべきだと主張しています。そのため、「平和を訴えるだけの式典」では、この重要な議論が欠けていると感じ、デモという形で自分たちの主張を訴えようとするのです。
これらのデモは、その主張がどれほど正当なものであっても、多くの人々が静かに祈りたいと願う場所で、それを妨害する行為として批判されています。
周辺住民の悲痛な声
デモが起こる平和公園周辺に住む人々は、毎年この時期になると、デモによる騒音に苦しめられています。ある住民は「毎年この時期が来るのが本当に憂鬱です」と話しています。彼らにとっては、原爆投下の記憶は決して忘れてはならない悲しい出来事であり、静かに故人を偲びたいという思いが強いのです。しかし、デモ隊の大音量のせいで、その思いが踏みにじられてしまう現状があります。
警察はなぜ取り締まれないのか
「なぜ警察はもっと厳しく取り締まらないの?」という疑問は当然湧いてくるでしょう。しかし、日本国憲法には「表現の自由」が保障されています。デモや集会は、この「表現の自由」を具体的に実現する大切な権利として認められています。
警察は、デモが公道で行われる場合、交通の妨害などがない限り、安易に強制排除することはできません。大音量で騒音を出す行為も、「騒音規制法」などがありますが、ただちにデモを中止させるほどの強制力は持ちにくいのが現状です。デモ参加者が明確な法律違反を犯さない限り、警察は「表現の自由」を尊重し、デモを妨害する側とデモを行う側の間の衝突を防ぐための「警備」に徹することになります。
しかし、近年では広島市が「広島市平和記念式典の妨害行為等の規制に関する条例」を制定するなど、地方自治体が独自の条例で対応しようとする動きも出てきており、今年、警察は市の要請に基づいて警告に従わなかった30人以上を威力業務妨害の疑いで強制的に会場の外へ排除、警備員に暴行を加えたとして、集会に参加していた中核派の活動家など男2人を現行犯逮捕しています。
政治家たちはどう考えているの?
このデモ問題は、表現の自由、平和、そして地域の安全に関わる複雑な問題です。各政党がどのような考えを持っているのか見ていきましょう。
自由民主党(自民党:保守、中道右派 左傾傾向)
平和記念式典の尊厳を守ることは重要であるとの立場です。デモの表現の自由は尊重しつつも、式典の妨害行為については、参加者の感情や地域の平穏を著しく害する行為として、厳正に対処すべきと考えています。具体的な対策としては、地方自治体が策定する条例を支援し、実効性のある対応を模索するべきだと主張しています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
「表現の自由」は民主主義の根幹をなす大切な権利であり、これを安易に制限すべきではないという立場です。しかし、原爆慰霊祭のような特別な場所や時間において、他者の平和への祈りを妨害する行為は慎重に考えるべきだとしています。デモを行う側と地域の住民や参列者との間で、適切な対話の機会を設けることの重要性を強調しています。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
日本維新の会は、国民の安全や社会の平穏を最優先に考える立場です。デモによる騒音や妨害行為が、地域の住民や参列者の生活を脅かしているのであれば、それは許されることではないとしています。表現の自由を盾にした迷惑行為には厳しく対処すべきであり、法律や条例を改正してでも、平和記念式典の環境を守るべきだと主張しています。
公明党(中道、保守)
公明党は、平和を大切にする政党として、平和記念式典が静謐な環境で行われるべきだと考えています。デモによる妨害行為は、多くの人々の平和への思いを踏みにじるものであり、到底容認できるものではありません。デモを行う団体に対し、自粛を促すとともに、地域住民の安全と平穏な生活を守るための具体的な対策を求めています。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
国民民主党は、健全な社会を築くために、デモによる社会的な混乱は避けるべきだという考えです。原爆慰霊祭のような国民にとって特別な意味を持つ場での妨害行為は、社会の秩序を乱す行為として問題視しています。デモ参加者には、他者への配慮を求めるとともに、警察や行政が連携して適切な対応をとるべきだと主張しています。
日本共産党(革新、左派)
日本共産党は、戦後日本の平和主義を堅持する立場から、原爆慰霊祭の意義を深く尊重しています。デモによって式典が妨害されることは、平和への誓いを揺るがす行為として批判的な姿勢です。表現の自由は大切ですが、他者の人権や感情を侵害するような行為は許されないとし、平和な環境で式典が行われるよう求めています。
参政党(保守、右派)
参政党は、日本の伝統や文化、国益を守ることを最優先に考えています。原爆慰霊祭の妨害デモは、日本の歴史や文化を軽んじる行為であり、断固として反対の立場です。平和記念式典は、日本人にとって重要な儀式であり、これを邪魔する行為は厳しく取り締まるべきだと主張しています。
れいわ新選組(革新、左派)
れいわ新選組は、デモや抗議活動を社会を変えるための大切な手段と捉えています。しかし、原爆慰霊祭のような特別な場で、多くの人々が故人を悼む思いを踏みにじるような行為は、デモの本来の目的とは異なると考えています。デモ参加者には、その行動が持つ意味を再考し、他者への配慮を強く求めます。
日本保守党(保守、右派)
日本保守党は、日本の国益を第一に考え、伝統や文化を守ることを強く主張しています。原爆慰霊祭のような重要な式典を妨害する行為は、日本の尊厳を傷つけるものであり、到底受け入れることはできません。デモの自由は認めつつも、他者の権利を侵害するような行為には、法律や条例に基づいて厳格に対処すべきだという立場です。
まとめ:見たような人たちの見たような妨害デモだよね
今回のデモ問題は、「表現の自由」と「他者を思いやる気持ち」がぶつかり合っている、難しい問題です。デモを行う人たちにも、何かを訴えたいという思いがあるのかもしれません。しかし、その主張のために、亡くなった人々を悼む静かな時間や、平和を願う気持ちが邪魔されてしまうのは、とても悲しいことですよね。
私たち一人ひとりが、自分の権利を主張するだけでなく、他者の気持ちを尊重することができれば、このような問題も少しずつ解決に向かっていくのかもしれません。
また、つい最近見た参政党への妨害デモ、石破辞めるなデモ、そして原爆慰霊妨害デモ。全部同じ人がやってるんじゃね?と思ったのは私だけなんでしょうか。
おまけ1:「中核派(ちゅうかくは)」とは
今回2人が逮捕されて、その人たちは「中核派」だったとニュースで報じられました。「中核派」とは、「革命的共産主義者同盟全国委員会」を正式名称とする団体で、警察庁からは「極左暴力集団」と位置づけられています。彼らは、暴力による革命で今の社会を壊し、共産主義社会をつくることを目指しています。
彼らの主な特徴は以下の通りです。
- 暴力革命の肯定: 中核派は、社会を変えるためには暴力もやむを得ないと考えています。過去には、テロやゲリラ事件を起こし、多くの犠牲者を出したこともあります。
- 活動内容: 労働運動や反戦運動、反基地運動、反原発運動など、さまざまな社会問題に積極的に関わって、自分たちの主張を訴えています。また、学生や若者を組織に勧誘する活動も続けていると言われています。
- 主張の核: 「反帝国主義、反スターリン主義のプロレタリア世界革命」というスローガンを掲げています。これは、資本主義や、過去のソビエト連邦のような国による支配に反対し、労働者階級が中心となる社会を世界中で実現しよう、という考え方です。
- 日本の共産党とは無関係: 日本共産党とはまったく別の組織であり、むしろ対立しています。元々は同じ組織から分かれてできた団体ですが、暴力の是非などをめぐって決別しました。
彼らが原爆慰霊祭でデモを行うのは、平和を願う気持ちを共有しつつも、現在の政府や社会のあり方に対する強い不満や、暴力革命によってしか社会を変えられないという信念があるためだと考えられます。しかし、その過激な主張や行動は、平和を願う多くの人々の反発を招くことになります。
おまけ2:「革マル派」(かくまるは)ってのもあったな。
革マル派も中核派と並んで、警察庁が「極左暴力集団」と位置づけている団体です。正式名称は「日本革命的共産主義者同盟革命的マルス主義派」といいます。
中核派と同じく、暴力による革命で今の社会を変えようと主張していますが、活動の方法や考え方に大きな違いがあります。
革マル派と中核派との主な違い
- 「内ゲバ」と呼ばれる抗争: 革マル派と中核派は、もともと同じ組織から分裂してできたため、互いを「敵」と見なしており、過去には「内ゲバ」と呼ばれる激しい抗争を繰り返してきました。この抗争では、相手のメンバーを襲撃したり、殺害したりする事件も起きています。
- 活動の隠密性: 中核派が街頭でのデモや抗議活動を積極的に行う一方、革マル派は「党派色を隠して」活動することが多いのが特徴です。彼らは、一般の市民団体や労働組合の中にこっそりと入り込み、組織を拡大しようとします。
- 労働組合への浸透: 革マル派は、JR総連(東日本旅客鉄道労働組合)などの主要な労働組合に深く入り込んでいるとされています。組合の活動を通じて、自分たちの思想を広めたり、影響力を強めたりしようとしていると考えられています。
このように、革マル派も中核派も「暴力革命」を目指す点で共通していますが、革マル派はより組織の内部に入り込む「浸透」を重視しているのが特徴です。彼らが原爆慰霊祭でデモを行う場合も、単なる抗議だけでなく、自分たちの主張を広めるための機会として利用している可能性があります。


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