日本に住むクルド人を応援する人たち

外国人の問題
6回目の難民申請中を行い、約20年にわたり実質的に解体工事会社を経営していたユージェル・マヒルジャン氏。2025年7月に強制送還された。

どうして日本にいるクルド人は『難民』になりたがるの? 人権問題と何が関係あるの?

前回は、「クルド人問題ってなに?」というテーマで、全体的な問題を取り上げましたが、今回は、日本で暮らすクルド人たちや、難民申請をサポートしている人たちの話を取り上げます。

遠い国から日本にやってきて、不安な生活を送るクルド人という人々がいます。彼らの多くは「難民」として日本に住み続けることを希望していますが、なかなかその許可が下りません。そんな彼らを、日本の弁護士や支援団体、一部の政治家などが助けています。なぜ彼らはクルド人を支援するのでしょうか。ここでは、その理由や、難民申請をめぐる日本社会での議論について見ていきましょう。

クルド人の難民申請をサポートする人たちは、どんな人?

クルド人の難民申請を支えているのは、主に弁護士や人権問題に取り組む支援団体、そして一部の政治家です。彼らの多くが共通して持っているのは「人道主義」という考え方です。これは、人種や国籍に関係なく、困っている人を助けるべきだという考え方です。

彼らは、国際法や日本の法律に基づいて、クルド人がトルコなどで迫害を受けている現状を訴え、彼らの難民申請が正当なものであると主張します。トルコでは、クルド人の民族的アイデンティティを尊重しない政策が続いており、中には迫害や差別を受けている人々がいると言われています。支援者たちは、こうした人々の人権を守るために活動しているのです。

特に、入管法に詳しい弁護士たちは、クルド人の難民申請手続きを手伝ったり、難民として認められるための理由をまとめたりしています。また、支援団体は、生活のサポートや医療、教育の機会を提供するなど、日本での生活を助けています。

クルド人支援団体と政治家はどんなことを言って、どんなことをしてるの?

クルド人を支援する団体や政治家は多数います。その中でも、特に活発な活動を行っている例をいくつかご紹介します。

在日クルド人と共に

  • 団体代表者:非公開
  • クルド人の子どもの教育支援や、行政手続きのサポート、医療機関への付き添いなど、生活全般にわたる支援を行っています。日本の生活に慣れていないクルド人が孤立しないよう、コミュニティづくりも支援しています。

クルド文化協会

  • 代表者:ワッカス・チョーラク氏。トルコ南東部出身で、トルコ政府による差別や迫害を理由に1990年代に日本に渡りました。その後、日本でクルド人の人権擁護や文化交流のために活動を始め、クルド文化協会を設立しました。滞在資格に関しては公的資料はありませんが、クルド人難民が認定されたのは過去1名だけなので、おそらく難民申請中(仮放免)だと思われます。
  • この協会は、クルド人の文化や歴史を日本に紹介し、日本の人々にクルド人への理解を深めてもらうための活動を行っています。文化交流イベントや講演会などを開催し、相互理解を促すことで、クルド人が日本社会で生きやすくなることを目指しています。また、日本語教室を開くなど、日本社会への適応を支援する活動も行っています。

立憲民主党 石川大我(いしかわたいが)議員

  • 昭和48年(1973年)、東京都生まれ。NPO法人「ゲイ・エイド」の代表などを務め、LGBTQなどの人権問題に長年取り組んできました。平成25年(2013年)に参議院議員となり、国会ではクルド人難民の問題について何度も質問を行い、強制送還のリスクを抱える彼らの状況を訴え、人道的な解決を求めています。

日本共産党 仁比聡平(にひそうへい)議員

  • 昭和38年(1963年)、福岡県生まれ。九州大学法学部を卒業し、弁護士として活動してきました。平成15年(2003年)に参議院議員となり、以前から外国人の人権問題に深く関わっています。難民申請中のクルド人に対する入国管理局の対応を厳しく批判し、難民申請者を収容施設に長期間収容することや、仮放免制度の問題点などを指摘して、国会でその是正を求めています。

埼玉県知事 大野元裕(おおのもとひろ)氏

  • 昭和38年(1963年)、埼玉県生まれ。東京大学法学部を卒業後、外務省に入省しました。平成19年(2007年)に参議院議員となり、令和元年(2019年)に埼玉県知事に就任しました。知事選では、立憲民主党、国民民主党、社民党などから支援を受けました。
  • 多文化共生推進 埼玉県は、「多文化共生」を掲げ、外国人住民への支援を強化しています。この政策には、日本語学習の機会提供や生活相談窓口の設置などが含まれており、クルド人も含めた全ての外国人が対象となります。
  • 子どもの学習支援 大野知事は、外国にルーツを持つ子どもたちが日本の学校でスムーズに学べるよう、教育支援に力を入れています。日本語指導が必要な子どもたちへのサポート体制を強化しており、これはクルド人の子どもたちも利用できるものです。
  • クルド人コミュニティとの対話 大野知事自身が、県内のクルド人コミュニティと直接対話する機会を設けています。これは、彼らが抱える生活の課題や、文化的な背景を理解し、支援のあり方を検討するためのものです。特定の優遇措置ではなく、お互いの理解を深めるための取り組みとして行われています。

埼玉県議会議員 柳下礼子(やぎしたれいこ)氏

  • 昭和45年(1970年)、東京都生まれ。立教大学社会学部を卒業後、議員活動を始めました。
  • 日本共産党に所属しており、クルド人が多く暮らす川口市・蕨市を選挙区とし、長年にわたり外国人の人権問題に取り組んでいます。埼玉県議会では、クルド人の子どもたちの教育環境や、難民申請中の人々の生活状況について、繰り返し質問を行っています。

入国管理局は「クルド人は難民ではなく出稼ぎだ」と断定。でも日弁連が・・

日本の難民認定制度を考える上で、一つの大きな論点となっているのが、今から約20年前の平成16年(2004年)に法務省入国管理局(現在の出入国在留管理庁)が作成した「トルコ出張調査報告書」をめぐる問題です。実際の資料(PDF) 資料1 資料2 資料3 資料4 資料5 資料6 資料7

この報告書は、クルド人が多く住むトルコ南部を日本の入国管理官が現地調査し、彼らの難民申請が迫害ではなく「出稼ぎ」を目的とした経済的な理由によるものだと結論づけています。

しかし、この報告書は、クルド人の人権擁護を強く主張していた日本弁護士連合会(日弁連)の要請により、公表されないままになっていました。その後、法務省から日弁連に渡された報告書は、20年近くも隠されたままだったと産経新聞は報じています。

なぜ日弁連は公表しなかったのでしょうか。 この報告書を公開すると、クルド人が難民として認められるべきだという主張が揺らぎかねないため、日弁連は報告書の公表を阻止したのではないかと批判されています。この一件は、難民擁護の主張と、事実に基づいた客観的な判断をどう両立させるかという、難しい問題を私たちに投げかけています。

出典:産経新聞「日弁連が「クルド人出稼ぎ」報告書を隠蔽? 法務省のトルコ現地調査を巡る疑惑」 https://www.sankei.com/article/20241124-HDYXVM4BBRM3TMHREBP6PXC2ZM/

2025年に入管法が新しくなりました! どんなところが変わったの?

日本のルールとして、外国から来た人が日本で暮らすための「在留資格」というものがあります。この在留資格がない人や、ルールを守らない人は、原則として国に帰ってもらうことになります。このルールを決めているのが「入管法(出入国管理及び難民認定法)」です。

2025年に、この入管法が大きく変わりました。なぜかというと、「困っている人をしっかり助けながら、ルールを守らない人にはきちんと対応しよう」という考え方が強くなったからです。

それでは、具体的にどんなところが新しくなったのか、一緒に見ていきましょう。

1. 何回も難民申請する人への対応が変わりました

  • これまでのルール 難民として認めてほしいと申請すれば、たとえ何度目であっても、国に強制的に帰らされることはありませんでした。このルールを悪用して、難民ではないのに、日本に長く滞在し続けようとする人がいることが問題になっていました。
  • 新しいルール 難民申請が3回目になった人(既に超えている人も含む)は、原則として国に帰ってもらうことになりました。 ただし、「本当に命の危険があることを示す新しい証拠」を提出した場合は、国に帰らされるのを一時的に止めることができます。これにより、本当に助けが必要な人を守りつつ、ルールを悪用させないようにしています。

2. 「新しい助け方」のルールができました

  • 新しいルール これまでは、難民条約に定められた「難民」と認められないと、助けてもらうのが難しい状況でした。 新しいルールでは、難民にはあたらないけれど、戦争や紛争、迫害などから逃げてきた人を「補完的保護対象者」として助けることができるようになりました。これにより、これまで救われなかった人々にも、日本で安心して暮らすための道が開かれました。

「補完的保護対象者」ってなに?

この言葉を簡単に言うと、「難民ではないけれど、国に帰ったら命や身体が危なくなる人」を助けるための新しい呼び名です。

これまでは、世界で決められた「難民条約(なんみんじょうやく)」というルールにぴったり合わないと、「難民」として認められず、日本にいることができませんでした。

たとえば、次のような人たちは、難民条約のルールでは「難民」と認めてもらえないことが多かったのです。

  • 戦争や内戦から逃げてきた人
  • 無差別な暴力に巻き込まれる恐れがある人
  • 国や組織から、特定のグループの一員だというだけで命を狙われている人

しかし、こういった人々も、国に帰れば命の危険があることに変わりはありません。そこで、2025年に改正された入管法では、このような人々を新たに「補完的保護対象者」として認め、日本で安心して暮らせるようにしました。

「難民」と「補完的保護対象者」はどう違うの?

この二つの違いは、助けを求める理由が、「個人的な迫害」なのか、それとも「国全体や地域での大きな危険」なのか、という点にあります。

  • 難民:
    • 理由: 政治的な意見や宗教、人種、特定の社会グループの一員であることなどを理由に、個人的に迫害を受けている人。
    • : 政治活動をしたことで、政府から命を狙われている人。
  • 補完的保護対象者:
    • 理由: 難民には当てはまらないけれど、戦争や内戦など、国全体に及ぶ大きな危険から逃げてきた人。
    • : 紛争が起きている地域で、無差別な攻撃に巻き込まれる恐れがあるため、やむなく国を離れた人。

この新しい制度ができたことで、これまで「難民ではないから」という理由で助けられなかった人々も、これからは日本で保護される道が開かれました。これは、国際社会のルールに合わせて、より多くの困っている人々を救おうとする日本の新しい取り組みです。

3. 施設に長く収容されることが少なくなります

  • これまでのルール 在留資格をなくした外国人は、原則として「収容施設」という場所にずっといることになっていました。長い間、施設に閉じ込められてしまうことが、人権の問題ではないかと指摘されていました。そのため、「仮放免」という措置がとられて、申請が却下されてはまた申請を繰り返して長い間(20年でも30年でも)日本に滞在することができていました。
  • 新しいルール監理措置(かんりそち)制度」という新しい仕組みができました。 これは、入管庁が認めた支援者や家族などの「監理人」がその外国人をしっかり見守ることを条件に、収容施設に入らなくても生活できるようにするものです。これにより、必要のない長期収容を減らすことが目指されています。

今まであった仮放免と管理措置はどう違うの?

「仮放免」は、緊急の場合の特別な措置
  • これまでの中心的な制度だったのが「仮放免(かりほうめん)」です。これは、人道的な理由や健康上の理由など、緊急かつ特別な事情がある場合に、一時的に収容を解くための制度でした。
  • たとえば、病気で施設での生活が難しい人や、家族の介護が必要な人など、本当にやむを得ない理由があるときに認められるもので、とてもハードルが高いものでした。
  • あくまで「仮に」という名前の通り、収容を一時的に中断するもので、外出や行動に厳しい制限がつけられ、働くことも原則としてできませんでした。
「監理措置」は、より幅広い目的を持った新しい仕組み

2025年の入管法改正で新しくできたのが「監理措置(かんりそち)」です。この制度は、不必要な長期収容をなくすことを目的としています。仮放免が「特別な理由」がないと認められなかったのに対し、監理措置は、次のような条件を満たせば利用できます。

  • 監理人がいること: 家族や支援者など、その外国人の生活をきちんと見守ってくれる「監理人」がいること。
  • 逃亡の心配が少ないこと: 逃げ出す可能性が低いと判断されること。
    • 監理措置では、監理人の指導のもとで生活を送ることになりますが、働くこと(就労)が認められる場合もあります。これは、生活を安定させ、社会の中で自立を促すためです。
監理措置と仮放免の使い分け

新しい入管法では、この2つの制度がうまく使い分けられるようになります。

  • 監理措置: 逃亡の心配がなく、監理してくれる人がいる場合に、収容しないまま手続きを進めるための、原則的な選択肢となります。
  • 仮放免: 監理人が見つからない場合や、病気など人道上特別な理由がある場合に、最後の手段として使われることになります。

つまり、監理措置は、これまで仮放免が担っていた役割の一部を引き継ぎ、より多くの外国人が長期収容を避けられるようにするための、新しい「逃げ道」を作ったと言えます。

4. ルール違反をすると罰が重くなりました

  • 新しいルール 国から「帰りなさい」と言われたのに、それに従わず、強制的に帰らされることを拒む人に対して、罰金や懲役などの刑事罰が与えられるようになりました。 また、不法に働く外国人を雇う会社の罰則も厳しくなりました。これは、日本の社会のルールをきちんと守ることを大切にするためのものです。

これらの変更は、日本に住む外国人の生活に大きく関わってきます。新しい入管法は、これからも様々な議論の中心になっていくでしょう。

新しい入管法に各政党は賛成? 反対?

新しい入管法について、各政党も様々な立場から意見を述べています。賛成理由、反対理由などを見比べて、自分に合った考え方の政党を探してください。

  • 自由民主党(自民党:保守、中道右派、左傾傾向)
    • 賛成: 2025年に施行された改正入管法は、難民認定申請中の外国人が増加し、長期化する問題に対し、難民申請を悪用する人々を強制送還し、真の難民を迅速に保護するための重要な一歩だと評価しています。
  • 立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
    • 反対: 2025年の改正入管法には反対しました。命の危険にさらされている人々を強制送還することは、国際的な人権基準に反するとして、人道的な観点から法律の再検討を求めています。
  • 日本維新の会(保守、右派、リベラル)
    • 賛成: 改正入管法は、難民認定制度の迅速化と厳格化を進めるものとして賛成しました。真に人道的な支援が必要な人々を保護しつつ、不法滞在者や難民申請を繰り返す人々には、厳格に対応すべきだと考えています。
  • 公明党(中道、保守)
    • 賛成: 難民認定制度の適切な運用と人道的な配慮の両方を重視し、改正入管法に賛成しました。日本の安全や社会秩序を守りながら、真の難民の保護を進めるためのバランスの取れた政策だと評価しています。
  • 国民民主党(中道、保守、リベラル)
    • 賛成: 日本の国益と人道主義を両立させるべきだという立場から、改正入管法に賛成しました。不法滞在者への対応を厳格化しつつ、真の難民は保護されるべきだと考えています。
  • 日本共産党(革新、左派)
    • 反対: 改正入管法には一貫して反対しました。難民条約に基づき、命の危険がある人々を例外なく受け入れるべきだと主張しています。人権の観点から、難民申請者を強制送還する法律は許されないとしています。
  • 参政党(保守、右派)
    • 賛成: 日本の安全と社会秩序を最優先すべきだという立場から、改正入管法に賛成しました。安易な難民受け入れは治安の悪化や日本の文化を損なうリスクがあるとして、難民認定には慎重な立場です。
  • れいわ新選組(革新、左派)
    • 反対: 命の危険がある人々を見殺しにすることは許されないという立場から、改正入管法に反対しました。人道的な観点から難民受け入れを積極的に進めるべきだと考えています。
  • 日本保守党(保守、右派)
    • 賛成: 改正入管法は、日本の国境管理を強化し、不法滞在者には厳格に対応すべきだという自分たちの主張に沿うものとして賛成しています。難民認定の厳格な審査を求め、日本の安全と国民の利益を最優先する政策を掲げています。

困っている外国人への「助け」と、「地域のルールや安全」は、どちらが大切?

クルド人の難民申請をめぐる議論は、単に法律や制度の問題だけでなく、「困っている人を助けるべきか」という人道的な観点や、「国の安全や社会秩序をどう守るか」という観点も複雑に絡み合っています。

クルド人を擁護する人々は、人道主義と国際的なルールを大切にしています。一方で、難民認定制度の厳格化を求める人々は、国の安全や社会秩序を重視しています。

どちらの考え方も、それぞれの「正義」があると言えるでしょう。この問題は、日本がこれからどんな国になっていくのかを考える上で、めっちゃ大事なテーマだと思います。

あなたにとって、困っている外国人への「助け」と、国や地域のルールや安全は、どちらが大切だと思いますか。

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