クルド人とPKKってどんな関係? なぜ日本でも問題になっているの?

外国人の問題
PKKの創設者 アブドゥッラー・オジャラン氏 クルド人の「生ける英雄」とされています。

トルコと日本で見方が違う? 埼玉のクルド人コミュニティに潜む影

前回の『日本に住むクルド人を応援する人たち』、前々回の『クルド人問題ってなに?』で、クルド人問題について取り上げてきました。今回は、トルコ政府だけでなくアメリカや欧州連合(EU)からもテロ組織に指定されているPKKとクルド人の問題について見ていきます。

日本に暮らすクルド人の多くは「難民」として日本に住み続けることを希望していますが、その背景には、トルコで彼らが抱える問題があると言われています。その問題の中心にあるのが「PKK」と呼ばれる組織です。

PKKとはどんな組織で、なぜ日本にいるクルド人との関係が問題になっているのでしょうか。ここでは、その複雑な関係や、日本で起きている出来事について見ていきましょう。

そもそもPKKってなに? なぜテロ組織と言われるの?

PKKとは、「クルド労働者党」の略称です。昭和53年(1978年)に、アブドゥッラー・オジャランという人物によって設立されました。彼らは当初、トルコ政府から分離し、クルド人だけの国をつくることを目指して、武力闘争を始めました。

しかし、長年にわたる激しい戦闘や、指導者が逮捕されたことなどから、その目的は「独立」ではなく、トルコ国内でのクルド人の文化的・政治的な権利を守ることや、自治を求めることに変わっていきました。

PKKは、トルコ政府から非合法の「テロ組織」と指定され、長年にわたって武力闘争を続けてきました。この対立によって、これまでに数万人の死者が出たとされています。また、トルコだけでなく、アメリカや欧州連合(EU)もPKKをテロ組織として指定しています。

出典:法務省公安調査庁「国際テロリズム要覧」 https://www.moj.go.jp/psia/ITH/situation/ME_N-africa/Turkey.html

PKKの創設者アブドゥッラー・オジャランとは?

PKKをつくったアブドゥッラー・オジャラン氏は、昭和23年(1948年)にトルコ南東部の小さな村で生まれました。アンカラ大学で政治学を学び、大学時代からクルド人の権利を守るための活動に熱心でした。

彼は当初、マルクス・レーニン主義という、資本主義社会を革命で変えようとする考え方を持っていました。武力によってトルコ政府と戦い、クルド人の独立した国をつくることを目指していたのです。

しかし、平成11年(1999年)にトルコ当局によって逮捕され、終身刑の判決を受けて、現在も刑務所に収容されています。刑務所の中で、彼の思想は大きく変わりました。彼はもはや独立国家を目指すのではなく、トルコという国の中で、クルド人をはじめとするさまざまな民族が、お互いに自治権を持って平和に暮らす「民主的連合主義」という新しい考え方を提唱しました。

彼は今でも、クルド人の間で「アポおじさん」という愛称で呼ばれ、多くの支持を集めるカリスマ的な存在です。

マルクス・レーニン主義ってなに?

この考え方を一番簡単に言うと、**「お金持ちも貧しい人もいない、みんなが平等な社会を、革命を起こしてつくりあげよう」**というものです。

ドイツのマルクスが「不平等な社会の仕組み」を分析し、ロシアのレーニンが「どうやって革命を起こして、その社会を実現するか」という方法を考えました。

この2人の考え方を組み合わせたものが、マルクス・レーニン主義です。PKKの創設者も、この考え方に影響を受けて、武力で自分たちの社会を築こうとしました。

クルド人は難民申請の理由に「私はPKK構成員です」などとは言わない。

日本を含む多くの国はPKKをテロ組織と指定しています。難民申請の理由を「自分はPKKの構成員で、帰国すると迫害される」などを申請理由とすると、日本の安全や社会秩序を脅かす可能性があると見なされ、難民として認められる可能性が低くなります。

そのため、難民申請をするクルド人は、PKK構成員という主張よりも、「クルド人という民族的背景ゆえの迫害」や「トルコの政治状況による身の危険」といった、広い意味での人道的な理由をあげる場合がほとんどです。

安全上の理由: トルコ軍とPKKの武力衝突が続く地域に住んでいて、日常生活で命の危険にさらされるため、と主張する人々。

政治的な理由: クルド民族の権利を主張する政治活動やデモに参加したために、トルコ当局から監視されたり、拘束されたりする恐れがある、と主張する人々。

民族的理由: PKKとの関係がなくても、クルド人というだけでトルコ政府から差別的な扱いを受けたり、迫害されたりする可能性があると主張する人々。

クルド人にとってPKKとは?

クルド人の社会はとても複雑です。PKKを支持する人々がいる一方で、彼らの活動を批判したり、反対したりするクルド人も多くいます。PKKはクルド民族全体の代表ではなく、あくまで一つの政治・武装組織です。

トルコ政府は、PKKをテロ組織として厳しく取り締まっており、PKKとつながりがある人や、PKKの活動を支持する人をクルド民族全体から区別していません。そのため、PKKと関係のないクルド人まで、トルコでは迫害を受けることがあるとされています。

日本にいるクルド人は安全? 埼玉で何が起きているのか

クルド人は、祖国での迫害を逃れて世界中に散らばって生活しています。日本にいるクルド人のほとんどは平和に暮らしていますが、一部にはPKKとのつながりが指摘される人たちがいるため、日本でも問題になっています。

日本の公安当局は、日本にいるクルド人の中に、PKKの活動に関わる人がいると見ています。PKKは、資金集めやメンバーの勧誘など、さまざまな活動を海外でも行っていると言われています。

埼玉のクルド人の祭りでPKKの旗やテロを賛美する歌も?

クルド人が多く住む埼玉県川口市や蕨市では、毎年クルドのお祭りが開催されます。しかし、このお祭りの中で、PKKの指導者であるアブドゥッラー・オジャランの肖像画が描かれた旗が掲げられたり、PKKをたたえる歌が歌われたりすることが問題視されています。

こうした行動は、トルコ政府から見れば、テロ組織の活動を日本国内で公然と行っていると受け取られてしまいます。令和6年(2024年)1月23日には、埼玉県警の機動隊が警戒にあたる中で、PKKを象徴する旗が掲げられたと産経新聞は報じています。

出典:産経新聞「埼玉クルド人祭りで「テロ組織」シンボル旗…トルコ政府が懸念表明「活動放置すれば日本の安全保障脅かす」」
https://www.sankei.com/article/20240123-6PGZKAKA7BO4RJYDSQ6MOKBY2M/

トルコ政府は日本のクルド人コミュニティをどう見ているのか

トルコ政府は、日本のクルド人コミュニティを「PKKの活動拠点」と見なしていることがあり、日本政府に対して、PKKの活動を放置すれば日本の安全も脅かされると懸念を表明しています。

日本政府は、トルコやアメリカなどとテロ対策で協力し、PKK関連の情報収集を行っているとされています。この問題は、単に在日クルド人の問題ではなく、日本の安全保障や国際関係にも関わる複雑なテーマなのです。

PKKをめぐる各政党の考え方

PKKをめぐる問題は、日本の安全保障や外国人管理の問題とも深く関わっています。各政党のホームページや党首の発言などを元にした、PKKに対する考え方をご紹介します。

各政党の考え方を見て、自分に合った政党はどこかを選んでみましょう。

  • 自由民主党(自民党:保守、中道右派、左傾傾向)
    • 主張:PKKをテロ組織と指定している国際社会の見解を尊重し、日本の安全保障を最優先に考えます。日本国内でPKKの構成員が活動している可能性については、情報収集と監視を強化し、テロ活動や治安の悪化を防ぐべきだと考えています。
  • 立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)
    • 主張:PKKのテロ行為は非難しつつも、PKK関係者と、迫害から逃れてきた一般のクルド人とは区別して考えるべきだと主張しています。在日クルド人のコミュニティ全体を危険視することは人権侵害につながるとして、丁寧な調査と対応を求めています。
  • 日本維新の会(保守、右派、リベラル)
    • 主張:日本の国益と国民の安全を守ることを最重要視しています。在日クルド人の中にPKK構成員が含まれている可能性については、徹底した情報収集と取り締まりを行うべきだと訴えています。
  • 公明党(中道、保守)
    • 主張:人道と安全保障の両方を重視する立場です。PKKのようなテロ組織の活動は看過できませんが、同時に、トルコでの迫害を逃れてきたクルド人全体を十把一絡げに扱うべきではないと考えています。個別のケースを丁寧に判断する姿勢を示しています。
  • 国民民主党(中道、保守、リベラル)
    • 主張:PKKの活動には厳格に対応しつつ、法とルールに基づいた公正な外国人管理を行うべきだと考えています。日本国内にPKK構成員がいる可能性については、国の安全を守る観点から厳格に対応する姿勢です。
  • 日本共産党(革新、左派)
    • 主張:PKKがテロ組織と位置づけられている事実は認めつつ、トルコ政府によるクルド人への弾圧があることを指摘しています。在日クルド人の人権を尊重する立場から、PKKとクルド人を同一視すべきではないと主張し、日本の入管行政の見直しを求めています。
  • 参政党(保守、右派)
    • 主張:日本の安全を最優先に考えています。PKKの関係者が日本国内で活動することは、治安の悪化や日本の安全を脅かすリスクがあるとして、難民認定や在留資格の審査に極めて慎重な対応を求め、厳格な入国管理をすべきだと考えています。
  • れいわ新選組(革新、左派)
    • 主張:PKK問題は、まずクルド人に対するトルコ政府の弾圧という根本的な問題から考えるべきだとしています。人道的な観点から、クルド人全体をPKKと同一視することに強く反対し、命の危険がある人々を保護すべきだと訴えています。
  • 日本保守党(保守、右派)
    • 主張:PKKのようなテロ組織の関係者が日本国内で活動することは、絶対に許してはならないと考えています。徹底的な情報収集と厳格な対応を求めています。

クルド人とPKKをめぐる問題、私たちはどう向き合う?

この問題は、とても複雑で、簡単に答えを出すことはできません。クルド人の中には、PKKとは全く関係のない、純粋に平和な生活を求めている人がたくさんいます。しかし、PKKという組織が、日本のルールや国際社会のルールをどう考えているのか、そして日本国内での活動が、私たちの安全にどう関わってくるのか、ということも無視できません。

日本の安全や秩序を守ることも大事ですし、困っている人々を助けるという人道的な心も大切です。この二つの考え方をどうバランスさせるかは、日本の社会全体で考えていく必要がある、非常に大事なテーマだと思います。

あなたは、在日クルド人とどう向き合うべきだと思いますか?

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