もうメルトダウンは起きない? 新しい原子力発電の可能性

環境の問題
SMR(小型原子炉)は、コンパクトな設計で原子炉とタービンを一つの建屋に収納する。原子炉を入れる建屋は鋼鉄製の船殻構造で免震ゴム技術を採用することで活断層などの立地条件に左右されず、船にも搭載可能。量産化で建設費も抑えることができるという。

原子力発電の未来を考える

原子力発電は、電気をたくさん作れて、地球温暖化の原因になる二酸化炭素も出さない、良いところがあるエネルギーです。でも、もし事故が起きたらどうなるのか、とても心配ですよね。とくに、2011年に起きた福島第一原発の事故は、その心配を現実にしてしまいました。

そこで、いま世界では「メルトダウンを起こさない」ことを一番大事にして、安全で新しいタイプの原子炉(次世代型原子炉)が開発されています。

福島第一原発で何が起こったの?

2011年(平成23年)3月11日、大きな地震と津波が日本を襲いました(東日本大震災)。福島第一原発は地震の揺れで自動的に止まりましたが、マグニチュード9.0の地震とそれに伴う大津波で電気を送る設備や非常用の発電機が全部壊れ、電気が使えなくなってしまいました。

原子炉は止まった後も、ウランという燃料が熱を出し続けます。その熱を冷やすための装置が電気を失って動かなくなり、原子炉の中の温度がどんどん上がってしまったのです。

本当に怖いのは、メルトダウンそのものじゃない

原子炉の中にあるウラン燃料は、とても熱くなるとドロドロに溶けてしまいます。これを「メルトダウン」と呼びます。福島第一原発では、このメルトダウンが実際に起こりました。

原発事故で本当に怖いのは、メルトダウンそのものではなく、溶けた燃料から出る放射能が、建物の外に漏れ出して、環境や人々の体に悪い影響を与えることです。過去に起きた事故を見ると、この違いがよくわかります。

  • スリーマイル島原発事故(1979年)
    • アメリカで起きたこの事故では、原子炉の燃料が一部溶けましたが、周りを覆う頑丈な「格納容器」が放射能をしっかり閉じ込めてくれました。そのため、外に漏れた放射能はごくわずかで済みました。
  • チェルノブイリ原発事故(1986年)
    • 旧ソ連(今のウクライナ)で起きたこの事故では、設計上の欠陥と運転員のミスが重なり、メルトダウンに加えて大規模な爆発が起き、原子炉建屋が破壊されました。
    • その結果、大量の放射能が直接大気に放出され、周辺地域に甚大な被害をもたらしました。その後、この事故を起こした原子炉は、放射能を閉じ込めるために巨大なコンクリート製の「石棺」で覆われ、老朽化を防ぐため、近年になってその上から巨大な新しいシェルターが建設されました。
    • 放射線量の高い周辺地域は「千年の荒野」になると言われていましたが、人間がいなくなったことで野生動物の数が大きく増え、現在では一見すると動物楽園のように見えています。しかし、動物たちには放射能の影響で遺伝子の変異(放射能に耐性を持つオオカミ)や、奇形、健康被害が見られることも報告されています。チェルノブイリは、放射線の脅威と、自然の力強い回復が同時に起きている、複雑な場所だと言えます。
チェルノブイリ原発 隠されていた事実 1/2 1997年
チェルノブイリ原発 隠されていた事実 2/2 1997年
2022年5月6日公開 映画『チェルノブイリ』予告編

福島第一原発でも、メルトダウンに加えて、水素爆発で建物が壊れ、放射能が外に漏れてしまいました。この経験から、メルトダウンを完全に防ぐこと、そしてもしメルトダウンが起きても絶対に放射能を外に出さないようにする技術が、とても大切だと考えられるようになりました。

ちょっと寄り道 映画「チャイナ・シンドローム」と現実の衝撃

SF映画「チャイナ・シンドローム」(1979年3月16日公開)は、アメリカの原発事故でメルトダウンが起こり、溶けた燃料が地球を貫通して真裏の中国(チャイナ)にまで達するという恐ろしい話が描かれました。この映画の公開からたった12日後にアメリカペンシルベニア州のスリーマイル島事故が起き、その7年後の1986年に人類史上最悪といわれたチェルノブイリ事故が起きたことで、人々は原子力発電の怖さを強く感じるようになりました。

日本の大衆もまた、不安を感じていました。当時、日本では巨大地震で国土が崩壊する『日本沈没』(1973年)や、ウイルスで人類が滅びる『復活の日』(1980年)といった映画が話題になっていて、「この文明は大丈夫だろうか?」という人々の不安を映し出していました。そのため、現実の原子力事故のニュースが流れると、映画で見た衝撃的な光景が重なり、より大きな恐怖を感じたのです。

メルトダウンを起こさない新しい原子炉

さて、ようやく本題です。今、世界で開発されている新型原子炉は、もしトラブルが起きても、電気や人の操作なしに、自然の力で安全に止まるように作られています。

実稼働が見えてきた新しい原子炉について見ていきましょう。

1. 高温ガス炉(HTGR)

この原子炉は、日本が世界で一番進んでいる技術です。

  • メルトダウンを起こさない理由
    • 高温ガス炉は、特殊な燃料を使うので、たとえ2000℃という超高温になっても燃料が溶けません。また、冷やすのに水ではなく「ヘリウムガス」を使うので、水蒸気爆発の心配もありません。
  • 費用・出力・耐用年数
    • 建設費用は既存の原子炉よりも安価な数千億円程度と見込まれており、出力規模は数万〜数十万kW級で、一般的な家庭数万世帯分の電力を供給できます。耐用年数は60年が目標とされています。
  • 実用化の時期:
    • 日本原子力研究開発機構(JAEA)の高温工学試験研究炉(HTTR)がすでに運転されていますが、商用炉の建設は2030年代後半からを目標としています。

2. 小型モジュール炉(SMR)

「小さな原子力発電所」と考えるとわかりやすいかもしれません。

  • メルトダウンを起こさない理由
    • 原子炉が小さいので、もし冷却装置が止まっても、空気や水の自然な動きだけで十分に冷やすことができます。人の手がいらない「自動停止機能」も備えています。
  • 費用・出力・耐用年数
    • 建設費用は一基あたり数百億〜数千億円程度と、既存の大型炉より大幅に安価です。出力規模は30万kW以下で、一般的な家庭数十万世帯分の電力を供給できます。耐用年数は60年〜80年を目指しています。
  • 実用化の時期:
    • 開発競争が激しく、アメリカやカナダを中心に、2020年代後半からの商用炉の運転が始まる見込みです。一部のプロジェクトでは計画の変更もありましたが、開発は着実に進んでおり、カナダでは初のSMR建設が承認されるなど、期待が高まっています。

3. 核融合炉(FFR)

核融合は、太陽がエネルギーを生み出す仕組みと同じです。究極のクリーンエネルギーと言われています。

  • メルトダウンを起こさない理由
    • 核融合を起こすには、1億℃以上の超高温が必要です。もし少しでも異常が起きると、この超高温を保てなくなり、反応はすぐに止まります。核分裂のように、どんどん反応が進むこともありません。
  • 費用・出力・耐用年数
    • 実用化されていないため、建設費用や耐用年数は未知数です。国際実験炉ITERの建設費だけで数兆円規模にのぼり、商用炉も非常に高価になると見られています。発電に成功した場合、一つの核融合炉で大型原発に匹敵する、数十万〜数百万kWの電力を生み出すことが期待されています。
  • 実用化の時期:
    • 国際共同研究の国際熱核融合実験炉(ITER)がフランスで建設中ですが、商用炉の完成は2050年ごろが目標です。

まとめ 新しい原子力発電は、本当に私たちの未来を照らす?

メルトダウンの危険をなくす技術は、どんどん進んでいます。でも、新しい原子炉が本当に安全なのか、そして「核のゴミ(放射性廃棄物)」の問題はどうなるのか、といった疑問はまだ残っています。

電気を安定して作ること、地球の環境を守ること、そしてみんなの安全。これらの難しい問題を解決できる道は、果たして見つかるのでしょうか。

おまけ 発電方法別の費用と安定性

発電施設を建ててから、動かしたりメンテナンスしたり、そして最後に取り壊すまでの、すべての費用を合計したものを「生涯コスト(LCOE)」と呼びます。で、この生涯コストを生涯で発電できる発電料で割って、電気1kWhあたり発電するためにいくらかかるかで発電費用を比較してみます。

新型原子炉はまだ実験段階のため、この中には入っていませんが、太陽光は「太陽が出ているときだけ」風力は「風が吹いているときだけ」しか発電できないので、結局効率悪いんじゃね?と思うんですよね。

特に海上風力なんかだと、火力や原子力の倍以上のコストがかかるんですよ。これで日本がカーボンニュートラルを達成してもCO2削減や地球の温度に何の影響もないって・・・。もっと他に税金使ってよって思いませんか?

発電方法1kWhあたりのコスト (LCOE)発電の特徴と安定性
太陽光発電約8.2~11.8円太陽が出ている昼間しか発電できません。天気に左右されるため、発電量は不安定です。
陸上風力発電約9.9~17.2円風が吹いている時だけ発電します。風の強さで発電量が変わり、不安定です。
海上風力発電約17.6~29.3円陸上より安定して強い風が吹くため、発電量は安定し、多くなります。ただし、建設やメンテナンスに費用がかかります。
原子力発電約11.7円燃料があれば、ほとんど止まることなく安定して電力を大量に作れます。
LNG火力発電約10.7~14.3円燃料があれば、必要な時に必要なだけ発電できます。安定していますが、二酸化炭素を排出します。

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