教員が日の丸・君が代に反対する背景には何がある?
自分が通っていた学校や、自分が親になってから行った子供の入学式、卒業式などで、君が代斉唱のときに、「全員起立」という号令がかかっているのに起立しなかったり、国歌斉唱(国歌をみんなでいっしょに歌うこと)を拒否したりする先生をみかけたことはありますか?
また、以前に『原爆慰霊祭を邪魔するデモ、なんで止められないの?』という記事で書きましたが、広島や長崎の平和式典で、教職員組合の旗を立ててスピーカーを使って大音量で過激なデモを行う人たちを報道や現地で見た人はいますか?
単純に、子供に物事を教える立場の人がなぜこういう言動をおこなうのか不思議に思ったり不愉快な思いをしたことはないでしょうか。
今回は、なぜ子供たちに物事を教える立場の先生が、ルールを守らない言動や活動をするのか、ということについて考えていきます。
日本教職員組合(日教組)とはどんな組織?
日本教職員組合(日教組)は、教職員の働く環境を良くすることを目指して活動する労働組合です。教職員の労働条件の改善や賃金の引き上げを求めたり、教育のあり方について政府に意見を述べたりする活動を行っています。
この組織が、なぜ日本の国旗である「日の丸」や国歌の「君が代」に反対するのか、その背景には日本の歴史が深く関係しています。第二次世界大戦中、日本は天皇陛下を絶対的な存在とし、国民を国家のために動員しました。
日教組は「日の丸」と「君が代」は、この時代の軍国主義や国家主義の象徴と見なしていて、こうした思想を二度と繰り返さないために、教育の現場から「日の丸」や「君が代」を排除すべきだと主張してきました。
教職員組合と政党の協力関係
日教組を含む教職員組合は、教員の代表として、教育現場で働く人々の声を政治に届ける重要な役割を担っています。しかし、その政治的な考え方は、日本の教育のあり方をめぐる大きな議論につながっています。
主な教職員組合はどんな政党とつながっているの?
日本には、日教組の他にも様々な教職員組合が存在し、それぞれ考え方や規模が異なります。今回テーマとしている日教組は一番大きな組織で、立憲民主党や社民党と協力関係にあります。また、全教や公務労連は、共産党と深いつながりがあります。
日教組は最盛期の昭和35年(1960年)には教職員の86.8%にあたる約57万人が組合員でしたが、近年は組織率が大きく減り、令和5年(2023年)時点では約21%となっています。
この背景には、教員の考え方が多様化したことや、若い世代を中心に組合に加入しない人が増えていることなどがあります。
| 組合名 | 思想 | 支援政党 | 組合員数(令和5年) | 教職員全体に占める割合 |
| 日本教職員組合(日教組) | 革新、左派 | 立憲民主党、社会民主党など | 約190,000人 | 約21% |
| 全日本教職員組合(全教) | 革新、左派 | 日本共産党など | 約32,000人 | 約3% |
| 日本公務員労働組合連合会(公務労連) | 革新、左派 | 日本共産党など | 約18,000人 | 約2% |
| 全日本学校教職員組合(全日教連) | 保守、右派 | – | 約14,000人 | 約1.5% |
(出典:文部科学省「教職員の組合員数と組織率」)
※「支援政党」は、組合が自分たちの考え方に近い政党を支持し、協力関係を築いていることを示しています。
先生たちが日の丸・君が代に反対する言動の理由
教員が「君が代」斉唱時に起立しなかったり、国歌斉唱を拒否したりする行動、そして広島・長崎での平和式典での過激なデモ活動などは、世間の注目を集め、大きな議論となっています。
本来、子どもたちに物事を教え、日本の伝統や文化を伝えるべき立場の人が、なぜこのような言動を取るのでしょうか。
この背景には、教職員組合の一部が持つ、日本の過去を否定的に捉える「自虐史観」という考え方があると言われています。「自虐史観」とは、日本の歴史を振り返る際に、日本が過去に行った行為を一方的に否定し、悪い面ばかりを強調する考え方を指す言葉です。特に第二次世界大戦における日本の行動について、自国の歴史を過度に卑下し、謝罪や反省を強調する歴史観として使われることが多いです。
日教組などの教職員組合は、戦前の教育が「国民を戦争に駆り立てるための道具」として利用されたと考えています。その反省から、「君が代」を斉唱したり「日の丸」を掲げたりすることは、そうした戦前の教育を思い起こさせ、再び国が教育を通じて国民を統制しようとしているのではないかと考えているのです。
そもそも、教育者は政治活動をしてはいけないのではないか、と思う人もいるかもしれません。
公立学校の先生は、地方公務員です。法律によって、教育が政治的に中立でなければならないという考え方に基づき、特定の政党を支持したり、デモに参加したりする政治活動が厳しく制限されています。
それにもかかわらず、なぜデモなどを行う先生がいるのか、そこには「個人の自由」という問題が隠されています。日教組は、国が定めた教育のルール「学習指導要領」の中で「日の丸」と「君が代」を扱うよう義務付けられていることに反対しています。
多くの教員は、子どもたちに日本の文化や歴史を教えることには賛成していますが、「強制される」ことには反対しているのです。強制的な起立や斉唱は、子どもたちの心の中に、国に逆らってはいけないという「同調圧力(どうちょうあつりょく)」を生み出し、自分で考える力を奪ってしまうのではないかと心配しているのです。
日教組は、このような考えから、日の丸・君が代の取り扱いを「強制」ではなく「任意」にすべきだと主張しています。
でも、よく考えてみてください。先生が「個人の自由」「思想の自由」を主張してルールに従わないということは、その先生に教えられる生徒たちも「個人の自由だから授業を受けなくてもいい」とか、「僕は授業中にずっとゲームをしていいっていう思想です」とかも、その先生は認めなきゃいけないですよね?
補足:同調圧力(どうちょうあつりょく)って?
「同調圧力」とは、周りの多くの人が同じ考えや行動をしているときに、「自分もそうしなければならない」と感じる、心の中のプレッシャーのことです。たとえ本当は違う意見を持っていても、「みんなと違うことをするのは嫌だな」とか、「浮いてしまうかな」という気持ちから、周りに合わせてしまうような、目に見えない力のことです。
たとえば、クラスのみんながテスト勉強を頑張っているから、本当は遊びたいけれど、自分も頑張らなくちゃと感じるような場合です。反対に、みんなが授業中にふざけている時、本当は真面目に授業を受けたいけれど、一人だけまじめにしていると浮いてしまう気がして、ふざけてしまうような場合もあります。
このように、同調圧力は良い方向に働くこともあれば、自分の本当の気持ちを抑え込んでしまう原因にもなるのです。
各国の国旗・国歌の考え方と学校でのルール
国旗や国歌への考え方は、それぞれの国の歴史や文化によって大きく異なります。それぞれの国の考え方や学校でのルールも合わせて見ていきましょう。
アメリカ
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「星条旗」は自由と民主主義の象徴であり、国民の誇りです。愛国心を育む上で非常に重要だと考えられています。
- 学校でのルール: ほとんどの公立学校で、毎朝の授業開始前に国旗に敬意を表す「忠誠の誓い(Pledge of Allegiance)」を唱えます。ただし、個人の信仰や良心の自由から、これを強制することは禁止されています。
イギリス
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「ユニオンジャック」と国歌「国王陛下万歳」は、王室や国家の伝統、歴史、統一を象徴します。強制というよりも、歴史と文化への敬意が重視されます。
- 学校でのルール: 国旗や国歌を義務付ける全国的なルールはありません。ただし、学校によっては愛国心や伝統教育の一環として、特別な行事で国歌斉唱を行うことがあります。
フランス
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「トリコロール」と国歌「ラ・マルセイエーズ」は、フランス革命の精神である「自由、平等、友愛」を象徴します。国民の統合と共和国の価値観を表現するものです。
- 学校でのルール: 法律で国旗掲揚と国歌斉唱が義務付けられています。特に、国歌斉唱は小学校の音楽教育として教えられています。
ドイツ
- 国旗・国歌の考え方: 国旗は民主主義の象徴であり、国歌「ドイツの歌」は再統一後の国民の誇りを表します。ただし、過去の歴史から、過度な愛国心の表現には慎重です。
- 学校でのルール: 国旗や国歌を義務付ける全国的な法律はありません。愛国心を強制する教育は避ける傾向にあります。特別な式典などで国歌が歌われることはありますが、強制ではありません。
イタリア
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「トリコローレ」と国歌「マメーリの賛歌」は、イタリア統一運動の歴史を象徴します。国民の結束と独立の誇りを表すものと考えられています。
- 学校でのルール: 国旗や国歌の義務付けはありません。学校によって対応は異なりますが、強制はされていません。
カナダ
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「メープルリーフ旗」と国歌「オー・カナダ」は、多文化主義と平和主義を象徴します。多様な民族が共生する国のアイデンティティを尊重することが重視されます。
- 学校でのルール: 全国的な義務はありませんが、多くの州では、国歌斉唱や国旗掲揚を行います。ただし、これも強制ではなく、多文化社会への配慮が重要とされています。
ロシア
- 国旗・国歌の考え方: 国旗(三色旗)と国歌は、ソ連崩壊後の国家の独立と強さ、そして愛国心を象徴します。近年、愛国心教育の重要性が高まっています。
- 学校でのルール: 2022年9月から、毎週月曜日の朝にすべての学校で国旗掲揚と国歌斉唱が義務付けられました。これは、愛国心を育むための重要な取り組みとされています。
中国
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「五星紅旗」と国歌「義勇軍進行曲」は、共産党による国家の統一と、国民の愛国心を象徴します。国民は国旗と国歌を尊重することが義務付けられています。
- 学校でのルール: 法律で学校での国旗掲揚と国歌斉唱が厳格に義務付けられています。生徒は国旗掲揚式に参加し、国歌を斉唱することが求められます。
韓国
- 国旗・国歌の考え方: 国旗「太極旗」と国歌「愛国歌」は、国民の愛国心を象徴します。国家の統一と発展への強い思いが込められています。
- 学校でのルール: 学校での国旗掲揚と国歌斉唱は、法律で義務付けられています。生徒はこれらを尊重し、愛国心を育むことが重要だと考えられています。
各政党は「日の丸・君が代」についてどう考えている?
日本の各政党は、国歌『君が代』や国旗『日の丸』について、どんな考え方を持っているのでしょうか、また、教職員の思想や言動に対してどういうふうに思っているのでしょうか。
各政党の考え方を見て、自分の考え方に合う政党はどこかを選んでみましょう。
自由民主党(保守、中道右派、左傾傾向)
- 「日の丸」と「君が代」は日本の国旗・国歌であり、国民として大切にすべきものだと考えています。
- 学校の卒業式や入学式では、慣習として「日の丸」を掲げ、「君が代」を斉唱すべきだと主張しています。
- 教職員組合の活動に対しては、教育の政治的中立性を保つべきであり、特定の思想を生徒に教え込むべきではないと批判しています。
立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)日教組を支持
- 日本の国旗・国歌を尊重する立場です。
- ただし、学校での「日の丸」掲揚や「君が代」斉唱は、個人の内心の自由を尊重し、強制すべきではないと主張しています。
- 卒業式などで起立しない教員に対し、懲戒処分などを行う政府の対応には、行き過ぎた措置であり、教育現場の萎縮につながると批判しています。
日本維新の会(保守、右派、リベラル)
- 国旗・国歌は国家の象徴であり、当然尊重すべきものだと考えています。
- 教育の場で「日の丸」や「君が代」を教え、日本の伝統や文化を伝えていくことは重要だと主張しています。
- 「君が代」斉唱時の起立を拒否するような行為は、公務員としてふさわしくなく、処分もやむを得ないと主張しています。
公明党(中道、保守)
- 「日の丸」と「君が代」は、国旗・国歌として尊重すべきものだと考えています。
- 卒業式などでの取り扱いについては、強制ではなく、子どもたちが自発的に尊重する気持ちを育むような教育を行うことが重要だと主張しています。
- 強い強制や対立を招くような対応は避け、教育現場の平和を重視する立場です。
国民民主党(中道、保守、リベラル)
- 「日の丸」や「君が代」を尊重する立場です。
- 教育の場においては、子どもたちに国旗・国歌の意義を正しく教えるべきだと考えています。
- ただし、そのやり方は、教育現場の判断を尊重し、政府が一方的に強制すべきではないと主張しています。
日本共産党(革新、左派)
- 「日の丸」と「君が代」は、戦前の侵略戦争に使われた象徴であるとして、反対しています。
- 「君が代」斉唱時に起立を強制することは、憲法が保障する思想・良心の自由に反すると主張しています。
- 学校での国旗・国歌の取り扱いについて、国が強制することには強く反対し、あくまでも学校や教職員の自主性を尊重すべきだと主張しています。
社会民主党(革新、左派)
- 反対
- 「日の丸」と「君が代」は、過去の戦争の歴史と結びついており、これらを強制することは憲法に反するとして、強く反対しています。
- 思想・良心の自由や表現の自由を大切にし、教育現場での強制をなくすべきだと主張しています。
参政党(保守、右派)
- 「日の丸」と「君が代」は、日本の歴史と文化の象徴であり、子どもたちに誇りとして教え伝えるべきものだと考えています。
- これらを尊重する教育を徹底し、日本の伝統や精神を取り戻すことを主張しています。
- 学校での国旗・国歌の尊重を妨げる行為には反対する立場です。
れいわ新選組(革新、左派)
- 過去の歴史において「日の丸」と「君が代」が、軍国主義や侵略戦争と結びついていたことを問題視しています。
- 学校での強制的な「君が代」斉唱には反対し、個人の思想や信条を尊重すべきだと主張しています。
- 国民一人ひとりが、自ら考え、判断する力を育む教育を目指しています。
日本保守党(保守、右派)
- 「日の丸」と「君が代」は、日本の歴史と文化を象徴する大切なものであると強く主張しています。
- これらを尊重することは、国民としての誇りを持つことにつながるとして、教育現場でも国旗・国歌を大切に扱うべきだと考えています。
- 「君が代」斉唱時の起立拒否などには、毅然とした対応が必要だと主張しています。
先生たちが日の丸・君が代に反対する行動から何を学ぶべきでしょうか?
日教組が「日の丸」や「君が代」に反対する背景には、過去の悲しい歴史と、二度と過ちを繰り返さないという強い思いがあることがわかりました。
一方で、国や多くの政党は、これらを日本の伝統や文化として大切にすべきだと考えています。
このような対立は、どちらかが絶対に正しいと決められるものではありません。
しかし、なぜ先生たちがそのような行動をとるのか、その理由を深く知ることで、単に「反対している」という表面的な情報だけでは見えてこなかった、日本の教育の複雑さや、歴史が現代に与える影響について考えるきっかけになります。


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