日本が暑いのは、黒潮大蛇行が原因だった

環境の問題
黒潮大蛇行終息。魚は戻ってくるか?東日本の酷暑は?

7年9ヶ月にわたる黒潮の大蛇行が終わった。日本の気候はどうなる?

最近、日本列島の南側を流れる大きな海流「黒潮」が、大きく蛇行しながら流れる状態が続いていました。これを「黒潮大蛇行」と呼びます。気象庁の発表によると、この大蛇行は平成29年(2017年)8月に始まり、令和7年(2025年)4月に終息しました。これは、観測史上最長の7年9か月にわたる非常に長い期間でした。

気象庁 令和7年(2025年)8月29日 報道発表資料
東海沖における黒潮流路の月ごとの最南緯度を示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間を表しています。東海沖(東経 136 度~140 度)で黒潮が北緯 32 度より南まで南下した状態で安定していることが黒潮大蛇行を判定する目安になり、2025 年4月以降は北上の傾向が確認できます。

黒潮大蛇行は、日本の気候に大きな影響を与えていました。東北大学の研究(令和6年12月23日発表)によると、黒潮大蛇行が東海地方に猛暑をもたらしたことがわかっています。また、台風の進路にも影響を与え、ゲリラ豪雨などの異常気象が増加する一因にもなっていました。

これは、海流の変動という自然の要因によるもので、よく耳にする地球温暖化(CO2)と気候変動はそれほど関係はないのではないかとう疑問も湧いてきます。 (出典:気象庁 令和7年8月29日報道発表資料、東北大学プレスリリース「東海地方に豪雨と猛暑をもたらしたのは「黒潮の大蛇行」の影響と解明」)

魚がとれなくなったのも、黒潮の大蛇行が原因だった?

黒潮大蛇行は、漁業にも影響を与えていました。通常、黒潮は本州の南岸を流れますが、大蛇行が起こると、黒潮が大きく沖へ離れてしまうため、沿岸で獲れる魚の種類や量が変化することがあります。例えば、八丈島周辺で獲れるキンメダイの漁獲量が減少し、代わりにアオダイの水揚げが増えた事例が報告されています。

これは、暖流である黒潮の流れが変わることで、海の温度や栄養分が変わるためです。こうした漁場の変動もまた、地球温暖化が原因ではない、海流による自然な変動なのです。 (出典:東京都島しょ農林水産総合センター「13年ぶり、黒潮の大蛇行と伊豆諸島海域の漁獲変動」

イワシの超豊漁について

2025年現在、日本各地でイワシの記録的な豊漁が続いています。特に千葉県の銚子港では、去年(2024年)の同じ時期と比較して水揚げ量が約1,890倍にもなるなど、非常に好調です。

専門家や報道機関の見解

  • 東海テレビの報道では、三重大学大学院の倉島彰教授が、大蛇行終息によって「水温が高いとか栄養が低いとかは解決するので、少なくともこの数年間の状態よりは、海の生き物・海藻なんかにとっては良くなる」と述べています。これは、海の環境が改善され、漁獲量にも良い影響が出る可能性を示唆する意見です。
  • 日刊ゲンダイの記事では、銚子漁港のイワシ大漁を伝える中で、「黒潮大蛇行」の終息が豊漁の一因である可能性を指摘しています。これは、直接的な因果関係を断定しているわけではありませんが、現象を関連付けて論じています。

これらの意見を総合すると、多くの専門家や報道は、黒潮大蛇行の終息が海の環境(水温や栄養分)に変化をもたらし、それが漁獲量の変化に影響を与える可能性を指摘しています。

ただし、「イワシの豊漁」と「黒潮大蛇行の終息」の間に明確な因果関係を断定している見解は現時点では少ないです。多くの専門家は、黒潮の動きが漁場や水産資源に影響を与えるという大枠での関連性を指摘しつつ、今後の動向を注視する必要があるとしています。

サンマは戻ってくるのか

かつては「庶民の魚」といわれた日本のサンマ漁獲量は、2015年以降に大きく減少して「高くて買えない」「高級魚」と言われるようになってしまいました。

サンマの日本国内漁獲量と黒潮大蛇行の関係を見てみよう

水産庁などの公表データに基づくと、日本国内のサンマ漁獲量は、平成27年(2015年)を境に激減しています。2010年代前半までは年間10万トンから20万トン前後を推移していましたが、その後は急激に減少し、近年はわずか数万トンとなっています。

サンマは、冷たい親潮と暖かい黒潮がぶつかる海域を主な漁場としています。これまでの黒潮大蛇行の期間中、冷たい海域が黒潮に飲まれるかたちで小さくなり、さらに黒潮が南下したところではサンマの群れが日本の排他的経済水域(EEZ)内に入りにくくなっていました。

この大蛇行が終息したことで、今後、暖かい海水が日本の沿岸から離れ、冷たい海水域が広がり、サンマの回遊ルートが日本の沿岸に戻ってくる可能性が期待されています。実際に、一部の漁業情報サービスセンターや研究機関からは、海水温の低下によってサンマの漁獲量回復に期待できるという見解も出ています。

関西テレビの報道では、黒潮大蛇行終息がサンマの豊漁をもたらす可能性がある一方で、カツオ漁にはマイナスの影響が出ていることを伝えています。これは、大蛇行が終息することで、魚種によって漁獲量がプラスにもマイナスにも影響する可能性を示唆しています。

ウナギはどうなる? 黒潮大蛇行と関係あるのか

イワシの豊漁とは異なり、ニホンウナギの資源回復については楽観的な見方は少ないのが現状です。多くの専門家は、黒潮大蛇行の終息を含めた海洋環境の変化が、うなぎの生態に複雑な影響を与える可能性を指摘しています。

  • 長期的減少傾向: ニホンウナギは、1970年代以降、天然成魚の漁獲量と稚魚であるシラスウナギの採捕量が長期的に減少しています。2014年には国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定されました。
  • 回遊ルートと海流: ウナギの稚魚は、マリアナ沖の産卵場で生まれ、北赤道海流や黒潮に乗って日本沿岸にたどり着きます。このため、海流の変化はウナギの来遊量に大きな影響を与えると考えられています。
  • 黒潮大蛇行の影響: これまでの研究では、黒潮大蛇行がシラスウナギの不漁(来遊の遅れ)に関係している可能性が示唆されています。しかし、不漁の最大の原因は、大蛇行よりも、産卵場付近の北赤道海流の南下にあるという意見もあります。今回の黒潮大蛇行の終息が、今後のシラスウナギの来遊にどのような影響を与えるかは、まだ結論が出ていません。

うなぎの回復に向けた課題

ウナギの資源減少の要因は、海流の変化だけでなく、以下の複合的な要因が指摘されています。

  • 乱獲: 稚魚であるシラスウナギの過剰な捕獲。
  • 生息環境の悪化: 河川や沿岸域の開発、ダムや堰の建設によるウナギの遡上阻害。
  • 気候変動: 海水温の上昇や海洋環境の変化が、回遊ルートや産卵環境に影響を及ぼす懸念があります。

総じて、黒潮大蛇行の終息が、短期的にウナギの漁獲量を大幅に改善する決定的な要因であると断定する見解は少ないようです。ウナギの資源回復には、国際的な漁獲管理や生息環境の改善など、より広範囲にわたる取り組みが必要だと考えられています。

黒潮大蛇行終息で増える魚、減る魚

漁獲量が増加すると予測される魚たち

  • キンメダイ、サバ、ソウダガツオ: 大蛇行が原因で沿岸から漁場が遠ざかっていたこれらの魚種は、黒潮が本来の流路に戻ることで漁獲量が回復する可能性があるとされています。高知県水産試験場の調査では、大蛇行期間中に漁獲量が約41%減少したキンメダイが、今後は回復に向かうと見られています。
  • サンマ、シラス、イセエビ: 複数の報道や専門家の見解として、大蛇行の終息によって漁獲量が増える可能性のある魚種として挙げられています。特にサンマは記録的な不漁が続いていたため、今後の動向が注目されています。

漁獲量が減少すると予測される魚たち

  • カツオ、キハダマグロ: 大蛇行期間中、暖かい海水が沿岸近くまで入り込んだことで、暖海を好むカツオやキハダマグロの漁獲量は増加していました。大蛇行が終息し、黒潮が沿岸から離れることで、これらの魚の漁獲量が減少する可能性が指摘されています。実際、一部の漁港ではすでにカツオの漁獲量が減少する事例が報告されています。

これらの予測は、過去の事例やデータの分析に基づくものであり、海の状況は常に変動するため、今後の正確な動向は引き続き注視していく必要があります。

そもそも気候が変わるのはなぜ?黒潮の大蛇行と地球温暖化以外の要因

地球の気候は、とてもたくさんの要因が複雑に絡み合って変動しています。黒潮大蛇行のような海流の変化もそのひとつです。その他にも、有名な現象として「エルニーニョ・ラニーニャ現象」があります。

エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、太平洋の赤道付近の海面水温が、数年にわたっていつもより高くなったり低くなったりする現象です。これらの現象は、地球全体の大気の流れに影響を与え、日本を含む世界各地の天候を左右することがわかっています。気象庁は、これらの現象を一連のものとして「エルニーニョ南方振動(ENSO)」と呼んでいます。 (出典:気象庁「太平洋の海面水温に見られる年~数年規模の変動」)

しかし、気候変動の原因はこれだけではありません。近年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)をはじめとする多くの研究機関が、人間の活動によって排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、地球の気温を上昇させている主な原因であると指摘しています。このように、気候変動は自然の変動と、人間活動による変動の両方によって引き起こされる、非常に複雑な問題なのです。

各政党はこういう自然現象についてどう思ってる?

日本の主要な政党が、黒潮大蛇行という特定の海洋現象そのものについて、具体的な見解や政策を公約などで明確に示している例は、現時点では見受けられません。

これは、黒潮大蛇行が気象庁などの専門機関が発表する海洋学や気象学の分野に属する自然現象であり、政党が直接的に言及する対象として扱われることが少ないためです。政党の政策は、より広い範囲の環境問題、特に地球温暖化対策や再生可能エネルギー、漁業支援といったテーマに焦点が当てられています。

そのため、直接的な言及はないものの、各政党が掲げるより広いテーマの政策から、黒潮大蛇行のような自然現象にどう向き合うかという姿勢を読み解くことができます。

自由民主党(自民党:保守、中道右派)

自民党は、科学技術の発展を重視しており、人工衛星や観測船を活用した海洋観測データの収集を推進しています。このため、黒潮大蛇行のような海洋現象についても、科学的な分析を通じてそのメカニズムの解明や、漁業への影響を予測することに関心があると考えられます。

立憲民主党(革新、中道左派、リベラル)

立憲民主党は、科学技術の進展を国民生活の向上に活かすことを目指しています。黒潮大蛇行が漁業や沿岸地域の気候に与える影響を、科学的知見に基づいて分析し、漁業者や地域住民への支援につなげることが、政策の方向性として考えられます。

日本維新の会(保守、右派、リベラル)

日本維新の会は、規制改革によって新しい技術や知見を社会に活かすことを目指しています。AIやビッグデータを活用した海洋予測モデルを開発し、黒潮大蛇行などの自然現象をより正確に予測・把握することで、経済活動への影響を最小限に抑えることを重視すると考えられます。

公明党(中道、保守)

公明党は、「人間中心」の社会を掲げており、気候変動や海洋環境の変化によって影響を受ける地域住民や漁業者の生活を守ることを重視しています。そのため、黒潮大蛇行がもたらす漁獲量の変動や異常気象に対して、国や自治体による手厚い支援を推進する姿勢がうかがえます。

国民民主党(中道、保守、リベラル)

国民民主党は、科学技術による生産性向上を重視しています。黒潮大蛇行のような自然現象についても、観測データを活用して漁業や物流の効率を上げるための技術開発を支援したり、漁業従事者の所得を安定させるための政策を検討する可能性があります。

日本共産党(革新、左派)

日本共産党は、自然災害や気候変動による社会的な格差拡大に警鐘を鳴らしています。黒潮大蛇行によって影響を受ける零細漁業者や小規模事業者に対して、国が補償や支援を行うべきだと主張する可能性があります。

参政党(保守、右派)

参政党は、食料自給率の向上と日本の伝統的な暮らしを守ることを重視しています。黒潮大蛇行が漁業資源に与える影響を、日本の食料安全保障の問題として捉え、自国の水産業を保護・育成する政策を掲げることが考えられます。

れいわ新選組(革新、左派)

れいわ新選組は、気候変動や自然災害によって生活基盤を失う人々への支援を重視しています。黒潮大蛇行による漁業への影響も、国の経済政策や社会保障の観点から捉え、影響を受けた人々へのセーフティネットの充実を求める可能性があります。

日本保守党(保守、右派)

日本保守党は、日本の国益を守ることを最優先に掲げています。黒潮大蛇行のような自然現象が日本の漁業や海洋資源に与える影響を、国家戦略の一部として捉え、国民の食と安全保障を確保するための政策を重視すると考えられます。

映像で見る 黒潮大蛇行と気候や魚たちの関係

この数年、日本が暑かった原因は『温暖化』じゃなく『黒潮大蛇行』だった??異常気象が正常! (竹田恒泰チャンネル)

2025年1月1日から8月18日の黒潮

黄色部分が黒潮で、特に東海地方の寒流が南に閉じ込められていく様子がよくわかります。

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